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【年末企画】

INTERNET Watchが選ぶ2000年の74大ニュース[その11]

流行語大賞には“ブロードバンド”
~常時アクセス回線の主役を占う6大ニュース~

第1位“ブロードバンド”の本命、ADSLが大躍進
第2位有線放送最大手がFTTH事業参入で光アクセスに期待膨らむ
第3位マンション向け常時接続サービスへの参入相次ぐ
第4位CATV事業で企業連合が加速
第5位「フレッツ・ISDN」本サービス移行でエリア拡大
第6位無線は苦戦、スピードネットがやっと試験サービス

 「“ブロードバンド”でなければ回線にあらず」と言ったら言い過ぎだが、そんな風潮が感じられた1年だった。CATVやADSL、無線などのアクセス回線サービスが注目を浴びたほか、ストリーミングによる映像や音楽の配信など、ブロードバンド接続を前提条件としたサービスも増えている。

 そのブロードバンドのアクセス回線として、今年もっとも成長を遂げたのがADSLだろう。郵政省のまとめによると、11月末時点の加入者数は5,347件。騒がれている割には少ない数字だが、試験期間だった今年1年間、東京めたりっく通信やイー・アクセスなどのDSL事業者が積極的にエリアを拡大。郵政省も支援策に乗り出すなど、着実に普及のための環境は整いつつある。来年のための助走期間として、大きな成果はあったと言えるだろう。

 特に、ADSL回線のホールセール(卸売り)を専門とするイー・アクセスは、@niftyやBIGLOBEなどの既存ISPに回線を提供。ADSL接続の普及に大きな役割を果たしている。ホールセール専門の事業者としては、NTTコミュニケーションズなどが出資するアッカ・ネットワークス(OCNへADSL回線を提供)や、三井物産や住友商事によるガーネットコネクションズ企画が設立されたほか、ホールセールではないが、NTT地域会社の「フレッツ・ADSL」も間もなく開始される。フレッツ・ADSLの発表後、イー・アクセスが自社サービスの最大速度をこれに追従してきた例もあり、来年は、これらDSL回線プロバイダーによる価格やスペック、そしてエリア競争が本格化するはずだ。

 一方、ADSLより早い段階で商用サービスが開始され、普及率では一歩先を行くCATV業界では、事業者間の連携が加速。他のブロードバンド勢力を向かえ撃つ、体制固めの段階に入っていると言えよう。9月には国内最大のCATV統括会社であるジュピターテレコムとネット接続サービスにも積極的なタイタス・コミュニケーションズが合併したほか、10月には富士通、東京電力などがCATV連合「ジャパンケーブルネット」を設立するなどの大きな動きがあった。

 もう一つのブロードバンド“無線”については、まさに“苦戦”と、思わずダジャレでまとめたくなる状況だ。昨年夏、鳴り物入りで登場したスピードネットは、当初予定の今年夏になってもサービス開始のめどが立たず、社長交代という事態に。8月に一部のエリアでやっと試験サービスにこぎつけたばかりだ。やはり、無線LANによる広域を対象とした通信サービスは無理があるのだろうか? 一方、同じ無線でも、FWA(加入者系無線アクセスシステム)によるものでは、ソニーが7月よりサービスを開始したが、ソニーの通信事業参入ということで期待されていたコンシューマー向けサービスは、まだ機器が高価だということで見送られている。

 しかし、すべての無線が苦戦というわけではない。むしろ、マンションなどの狭いエリアを対象としたサービスとしては有効のようで、三井不動産が無線通信サービス会社を設立したほか、NTT-MEやワイヤレスインターネットなどが無線による接続サービスを開始している。なお、このマンション向けサービスという分野は今年に入って参入ラッシュが起きている分野でもあり、無線のほかにもHomePNAによる接続や、生活情報配信も含めた事業が活発化しつつある。

 さて、最後にぜひ挙げておきたいのが、2位にランキングした、有線ブロードネットワークス(旧大阪有線放送社)によるFTTH事業への参入である。10月、同社と同社子会社であるユーズコミュニケーションズが、東京都内の一部で光ファイバーによる常時接続の試験サービスを開始した。来年4月には本サービスを開始する予定で、なんと月額5,000円程度で最大10Mbpsの通信が可能になるという。これは、NTT地域会社が開始するFTTH試験サービスの月額1万3,000円より半額以下ということになるが、料金面以上に期待できるのは、有線ブロードネットワークスのサービス展開力だ。あくまでもイメージとしてだが、同社には「朝申し込めば、夕方にはファイバー工事にやって来る」という勢いの“関西体育会系気質”が感じられる。実際、これまで有線放送事業で構築してきた全国規模のケーブル網に併設する形で、光ファイバーの敷設が比較的容易に行なえるほか、1日に100kmのファイバー網を敷設可能な技術スタッフも抱えているという。異業種からの参入プレーヤーに、ぜひとも期待したい。

(2000/12/27)

[Reported by nagasawa@impress.co.jp]


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