【業界動向】

米MIT、10年をかけてすべての授業をインターネットで無料公開

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 米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)は4日、今後10年間かけてほとんどすべての授業をインターネットで無料公開するプロジェクト「MIT OpenCourseWare」を明らかにした。公開されるものの中には講義録、参考文献、宿題や試験問題などが含まれる。また、現在一部の授業の動画が公開されていることから、こうしたものが含まれる可能性もある。MITでは建築、工学、科学、人文科学、芸術、社会科学、ビジネスなどの分野で2,000以上の講義が行なわれており、これらがすべて無料で公開されることになる。

 MITの総長Charles M.Vest氏は「OpenCourseWareは、ウェブの高等教育での利用方法を変化させるものだ。すべての人が利用できるこのコンテンツは、それぞれの人が自分の必要を満たすために利用できる無料の資源である。われわれはこれを世界中の教育を支援し、教授プロセスや学習プロセスそのものを革新するための鍵となる教材であると考えている」とコメントした。

 また、MIT教授会の座長を務めるSteven Lerman教授は、このプロジェクトが熱狂的な賛同を得ると同時に、講義内容を有料で提供することから得られる富を放棄する必要はないという考え方との間で議論が分かれたことを告白した。しかしながら「われわれはMITとアメリカの高等教育の伝統、つまり、教育内容をオープンに公開することと、教育方法の革新を行なう、といった物の考え方の上に立った上で、インターネットのすさまじいまでの力を生かさなければならないと考えた」この決断の背景にある考え方を説明した。

 プロジェクトはまず2年間にわたるパイロットプログラムを持って始まる。この期間に大規模なプロジェクトを成功させるために必要なソフトウェアとサービスの研究を進めると同時に、MITの教授や学生がどのようにこの教育資源を利用するのかをモニターする。このパイロットプログラムが終了する2年の後には約500以上の講義内容が公開されるものと予測される。

 OpenCourseWareが世界に及ぼすさまざまなメリットの中には、高等教育を充実させようと考えている発展途上国のカリキュラム開発に役立つといったことのほかに、独学で学ぼうとしている人々の助けになることや、このプロジェクトの過程で開発されるインフラが他のを教育機関に与える影響もあると考えられる。

 MITではこのプロジェクトが1960年代に行なわれたカリキュラム改革を想起させるとしている。当時MITの工学部の教授たちは、工学部のカリキュラムの内容に科学、数学、コンピュータを導入し数々の新しい教科書を書いた。彼らの学生たちが成長し国中の大学の教授となったとき、彼らはMITで学んだ講義録を持ち出し、この新しい試みを工学教育に生かし始めたのだ。MITのOpenCourseWareプロジェクトは、この1960年代の革命をインターネット時代に持ちこもうとしているのだ。

 カリフォルニア大学やスタンフォード大学など講義内容や教材を有料で提供している大学は数多くある。また慶応大学の「SOI」のように一部の授業を無料で公開しているところも数多くあるが、無料ですべての講義内容を公開するという試みを行なうのは世界でもMITが初めてである。このプロジェクトの発想は、OpenCourseWareの名前の付け方からも分かるようにプログラミングの世界で一般的なオープンソースの考え方と似通っており、オープンソースの発展に多大な貢献をしてきたMITの伝統がここに生かされているといえるのかもしれない。

(2001/4/5)

[Reported by taiga@scientist.com]


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