【新サービス】

岩波書店、晶文社など、共同でオン・デマンド出版サービスを開始

■URL
http://www.honco.net/richiesta/
http://www.transart.co.jp/richiesta/(販売サイト)


リキエスタ刊行本。ちなみに「リキエスタ」とはイタリア語で「リクエスト」の意味

 岩波書店、晶文社、筑摩書房、白水社、平凡社、みすず書房の6社と「本とコンピュータ」編集室、大日本印刷株式会社は共同でオン・デマンド出版サービス「リキエスタ」を4月10日より開始する。これは、1999年11月より「本とコンピュータ」編集室と大日本印刷が手がけてきた実験的なオン・デマンド出版プロジェクト「HONCO on demand」の経験を活かしたもので、人文書の出版に強い6社の編集者との共同作業により進められる。

 作品は、アウグスト・ストリンドベリ「死の舞踏」(白水社)、木村毅「明治文学余話」(筑摩書房)、大西廣「一休をめぐって何が起こったかー肖像画における『破格』の問題」(平凡社)など、幅広い分野の人文書を各出版社が3点づつ計18冊を刊行する。A5判、並製で54〜128ページ、本体価格は1,000〜1,300(税別)円。装丁は平野甲賀、イラストは森英二郎が手がける。ネット購入の決済方法はカード決済、代引き、郵便振込みの3種類より選択する。カードはJCB、UC、VISA、マスターの4種類に対応。また、ネット販売のほかにも「リキエスタ」サービスを広く読者に認知してもらうことを目的とし、リブロ池袋館、神保町岩波ブックセンターなど都内の主要な書店で「リキエスタ」刊行書物を店頭販売する。

 「本とコンピュータ」編集室の龍沢武氏は「オンデマンド出版の仕組みを編集者が本当に作りたい本を読者に届ける武器にすること」、「複数の出版社の編集者が共同で新しい読者を開拓すること」、「新しい人文書のスタイルを工夫して共同で作ること」など「リキエスタ」を立ち上げた目的について語った。

 今回のサービス展開は「HONCO on demand」の実験プロジェクトから一歩進み、商業ベースのサービスといえるものの、現状の出版界での人文学に対する軽視への問題点や大量に売れる本だけでなく、できるだけ多くの種類の本を世に出したいとの考えが根底にあるため、利潤より「何ができるか」を優先させた形だ。 


「本とコンピュータ」編集長 津野海太郎氏

 競合他社である編集者の共同プロジェクトということで、編集会議では各社の作品を並べ、読者に選んでもらって1冊の本として計り売りしてはどうかといったアイデアも出たという。また、「『リキエスタ』でPDF等の電子書籍の形態でのサービスを試みなかったのはなぜか?」という問いに対して「本とコンピュータ」編集長の津野海太郎氏は「オンラインにはオンラインにふさわしい読み物や仕組みがあるのではないか。それを考えずに電子出版の形をとっても従来の電子化プロジェクトの失敗の徹を踏むだけなのではないか」と語った。何が電子出版に向いているのかそうでないのか。また、オンデマンド出版を含めて電子出版が読者の本離れや書店の本の単一化にどれぐらい対応できるのか。出版危機があちこちで叫ばれる昨今、「リキエスタ」のような試みが出版界の現状に新風を吹き込んでくれることを期待したい。

(2001/4/9)

[Reported by tanimoto@impress.co.jp]


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