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フランスのICカード技術を日本へ ~フランス大使館などがセミナーを開催

■URL
http://www.dree.org/japon/

ジャン=ピエール・カムロ氏
 在日フランス大使館経済商務部と日本貿易振興会は、共同でセミナー「情報セキュリティと電子商取引に関するフランス技術」を開催した。現在日仏の両国で「フランス-ジャポン、エスプリ・パルトネール」(フランス-日本、協調の心)という経済面・産業面での協力キャンペーンが実施されており、特にIT分野での協力に力を入れている。セミナーは、このキャンペーンの一環として開催されたものだ。

 セミナーではまず駐日フランス大使のモリス・グルドー=モンターニュ氏が「あまり知られてはいないが、フランスは日本への第3の投資国であり、また日本の第3世代携帯電話で利用する予定のICチップカードは、ほとんどがフランス製となる。今回のセミナーがお互いをよく知り合う機会となればと願っている」と開催挨拶を述べ、日仏間の産業協力に意欲を示した。

 次いで、フランス政府経済社会審議会のIT担当顧問であるジャン=ピエール・カムロ氏が、「フランスにおける電子商取引」というテーマで基調講演を行なった。この講演によると、フランスは銀行が非常に発達しており、1984年に銀行カードCB協会を設立して以来、カードでの支払いを発達させるためにキャッシュカードのIC化を積極的に進めてきた。すでにすべてのカードが磁気ストライプとICチップを搭載した複合カードになっており、現在発行されている4,090万枚のカードのうち、約9割が現金引出しと決済機能の両方に対応したタイプだ。

Gemplus社のデモから、カードの変遷による機能向上のイメージ
 ICチップ導入は、当初はオフラインでのセキュリティ強化を狙ったもので、実際にICチップ導入以降、カード犯罪は急減した実績もある。また現在も対面販売で使われることがほとんどだという。フランスではミニテル(電話を使った情報サービスで、80年代に端末を無料配布し、広く使われるようになった。現在でも多くの人に使われている)を利用した電子商取引が普及しており、この場合通話料と合わせての支払いが可能なため、これまでセキュリティ面への対応はあまり行なわれていなかった。現在ではインターネットユーザーも1,200万人(フランスの人口は6,000万人)を超えており、今後はインターネット上の決済も広まるとして、ユーザー・商店の双方に向けてセキュリティを確保した技術の確立を課題としている。すでにいくつかの実験が行なわれており、ICカードリーダーをPCに接続したり、携帯電話用のICカードリーダーなどを利用する方法が有力という。また欧州連合による通貨統一やICカード規格決定などから、ユーロへの対応、およびEMV形式(VISA、Master、Europayの3社が決定した共同裁定したICカード規格)への変更も進めていく。

 こうしたフランスでの背景から、セミナーではICカードを利用したソリューションを提供する、またソリューション内での重要な役割を担う企業が多く登場した。電子認証関連のソリューションを提供するActivCard社は、Sun Microsystemsの社員証システムへの導入例などを紹介。Sunは世界共通のICカードを用いて個人認証を行なっているが、世界共通のポリシーや各国のポリシーの違いを共存させる事例を見せていた。またILOG社は、同社の組み込み型ソフトウェアコンポーネント群を利用した金融機関向けのパーソナライズサービスを披露。日本で凸版印刷との合弁企業・ティージーエス株式会社を設立したICカード関連の大手・Gemplus社は、「ICカード自体がいくつもの機能を持つサービスアプリケーションになる」(Gemplus チャン・イー・チェア氏)として、カード発行者にワンストップでカード上のサービスを提供する「CASSIS」などのソリューションを紹介していた。

(2001/5/22)

[Reported by aoki-m@impress.co.jp]


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