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「普及までにはまだまだ時間がかかる」と言われていたFTTHの常識を覆すようにいち早くサービスを開始した有線ブロードネットワークスが5日、5月末日現在におけるサービスの提供状況を明らかにした。サービスインしている渋谷区の一部、世田谷区の一部など5つのエリアで、回線が開通したのは507件に止まっている。
もちろんこれは、需要が少ないためではない。同社の公開した資料によると、5つのエリアで対象となる世帯は合計9万9,183件。同じく5月末時点で、このうち3,079件の契約を獲得しているという。すなわち、2,500件以上の世帯では、契約は完了したものの、何らかの理由で開通工事にたどり着けない状況にあるわけだ。
同社では昨年秋、実証実験の開始にあたり、有線放送事業で構築してきた同軸ケーブルのネットワークに併設することで光ファイバーを比較的容易に敷設できるとして、FTTHサービスの早期拡大に自信を見せていた。しかし、この数字を見る限り、そうすんなりといっているとは言いがたい。
理由は大きく2つ挙げられるが、それに触れる前に、契約から工事に至るまでの同社の業務フローについて説明しておく。
同社では加入契約を獲得した後、本人確認や決済手段の確認といった申込審査を経て、1週間で現地調査を行ない回線経路を確認。契約者宅まで回線が引けるかどうかの“判定”を出す。判定はAからEの5段階で下記のようになっており、これによってその後の進行スケジュールが大きく変わってくる。
A:即時取付可能
B:電柱申請+官地承諾で可能
C:電柱申請+民地承諾で可能
D:電柱建替等が必要
E:埋設工事が必要
例えば判定がAと出た場合、3日間で芯線やポート、IPの割当が完了。さらに契約者と工事日を調整し、最短で3日後、長くても2週間以内には工事が行なわれる。すなわち、何も問題がなければ、契約から2週間ほどで工事にたどり着けるわけだ。
一方、BやCでは1~2カ月必要となり、さらにDやEでは3~6カ月もの時間が必要となる。契約者との工事日調整はそれらが完了してからになるため、最悪の場合、契約から半年以上も待たされることになる。電柱の使用申請で済めばまだいいが、中には光ファイバーを追加すると重みに耐えられない電柱もあるという。そうなれば電柱を建て替えなければならないし、オフィス街など無柱化地域で光ファイバーを敷設するには埋設工事で対応しなければならないエリアも出てくる。
なお、有線ブロードでは現在、契約から工事まで長い期間待たせてしまわないよう、B~Eに該当するような地域については契約を行なわない方針に切り替えている。当初は、ユーザーを収容するノード施設を設置した時点で、そのネットワーク下になる約2平方キロメートル(1.4キロメートル四方)のエリアで加入契約を募っていた。これに対して今後は、ノードが設置されただけでなく、光ファイバー網が敷設され、「即時取付可能」になった時点で初めて契約を募るとしている。
なお、契約者数の3,079件は5月末時点の数字だが、上記のような理由で、実際に契約を受け付けていたのは3月の1カ月だけだという。4月~5月は契約を一時ストップしていたが、6月7日より再開する予定だ。
このように、サービス開始から3カ月経っても開通世帯が約500件に止まっている理由として、まずは、光ファイバー網の敷設に手間どっていることが挙げられる。
とはいえ、判定がB~Eとなる世帯は思ったほど多いわけではない。同社がまとめたデータによると、B~Eを合計しても比率は30%であり、残り70%は「即時取付可能」であるAの判定が出されている。
実はそれ以上に開通のネックとなっているのが“集合住宅問題”だ。(以下後編)
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[Reported by nagasawa@impress.co.jp]