【イベントレポート】

ブロードバンド時代の映像端末はPCではなくTV
~第12回情報通信月間特別講演会

■URL
http://www.fmmc.or.jp/

 財団法人マルチメディア振興センターは7日、「衛星放送はこれからどう進化するか」をテーマにした講演会を開催した。同講演会は、総務省の平成13年度情報通信月間参加行事の1つ。放送と通信の融合により新たな利用が期待されているデジタル衛星放送のインタラクティブ性と今後の展開について、行政担当者および事業者により講演が行なわれた。

総務省情報通信政策局衛星放送課の福岡徹課長

 行政サイドからは、総務省情報通信政策局衛星放送課の福岡徹課長が、「衛星放送行政の新たな展開」をテーマに、衛星放送行政の現下の課題や、通信と放送の融合への対応として国会に提出している「電気通信役務利用放送法案」について説明した。ブロードバンド時代の到来に伴う、放送全般を取り巻く新たな環境と将来展望についても言及、IP網による映像伝送サービスの現実化や、テレビコマースなど通信・放送融合型サービスの増大などにより「メディア横断的な『コンテンツ制作・流通産業』が進出してくるだろう」と予測した。また、コンテンツマルチユース時代の到来に伴い、「コンテンツ流通プラットフォームビジネスがメディアを問わず勃興してくる」と語った。

 事業者サイドとしては、2002年春に始まる東経110度CSデジタル衛星放送について、株式会社シー・ティー・ビー・エス(以下C-TBS)の白根英路取締役がその可能性を語り、株式会社イー・ポート・チャンネルの戸田長作取締役社長が「テレビコマース新時代を創る蓄積型衛星放送サービスの事業概要と今後の展開」をテーマに講演を行なった。

C-TBS・白根英路取締役

 白根氏は、まずC-TBSで提供するサービスについて説明した。C-TBSでは、映像サービス(有料・無料)5チャンネル、独立データ放送サービス1チャンネルを提供するが、その中でも、C-TBSの各番組を紹介する無料ポータルチャンネルには「新しい概念が組み込まれている」という。このポータルチャンネルは、入り口を作ることでいかにユーザーを多様な番組に導くかを考えた“しかけ”になっており、番組のアイコンを置いてリンクさせたり、BSデジタル放送「BS-i」ともリンクさせる。さらに、ボタンを押すとモデム経由でインターネットコンテンツをブラウジングできる「TV Web」ボタンも将来的に置く予定だという。つまりテレビがネット端末になるというわけだ。気になるデジタルテレビの記述言語BMLとWebの記述言語HTMLとの互換性については、「PCと同じものをテレビでやって便利なのだろうか」と疑問を呈し、家電であるテレビは操作性が大切で、BMLには「テレビに向いたメリットがある」と語った。また、今後のブロードバンド時代について、「インターネットはPCを使った形で進化していくが、テレビはブロードバンド映像受信端末となる」とした。さらにデジタル放送の特性である双方向性について、「BSデジタルではなかなかユーザーが電話線をつないでくれていない」と述べ、テレビと電話は家庭内では対角線にあるので線をつなぐのは大変だとし、無線LAN環境を整えることで双方向性も活かせ、TVがネット端末へと進化することが可能だと強調し、メーカーサイドに安価な無線環境の提供を要望した。

イー・ポート・チャンネル・戸田長作取締役社長

 イー・ポート・チャンネルの戸田氏は、BS/CS110デジタル放送受信機STB「eSTB」を核としたサービスプラットフォーム「eプラットフォーム」について説明した。ちなみに「eSTB」は40GB以上のHDD、56kbps以上のIP接続機能を内蔵。主なサービスとしては、テレビ放送の番組データの自動蓄積のほか、1,000店ほどの店舗をもつ「ショッピングモール」「予約・チケッティング」「eBANK」「eトレーディング」などのコンテンツを設け、双方向型のさまざまなサービスを展開する。これらサービスにより、従来のテレビによる「見るテレビ」、BSデジタル放送による「使うテレビ」から、暮らしに密着した「遊べるテレビ」が実現できるとし、「個人による個人のためのテレビが作り出される」と期待を示した。さらに、「放送」「HDD蓄積」「インターネット」という3つのメディアをシームレスにつなぐことで、「欲しい物、情報の窓としてのテレビへと変わり、新しいライフスタイルを想像する」とした。また、今後、ネット家電機器との連携でホームネットワークが広がるほか、100GBのHDDを積んだ次期「eSTB」へと展開していく中で、さらに3つのメディアの融合は進むとし、「サービスの可能性は無限大」と語った。

(2001/6/7)

[Reported by moriyama@impress.co.jp]


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