【イベント】

ケーブルインターネットはどこへ向かうのか?
@NetHome、CATV2001でパネルディスカッションを開催

■URL
http://www.jp.home.com/

 アットホームジャパン株式会社は、展示会「ケーブルテレビ2001」の最終日である22日に、特別パネルディスカッション「ケーブルインターネットがつくる地域情報インフラの将来像」を開催した。パネリストは、中村伊知哉マサチューセッツ工科大学メディアラボ客員教授、遠藤諭月刊アスキー編集長、廣瀬禎彦アットホームジャパン社長の3名。

 まずはじめに、廣瀬氏がCATVインターネットの現状をADSLと比較しながら説明した。廣瀬氏は、ADSLは電話局から2km以内にユーザーが100人しかいないところには普及せず、ユーザーが密集している都会からサービスが提供されるのに対して、CATVの小回りのよさを強調、「CATVは地域情報インフラを担うものだ」とした。続けて中村氏が、CATVのテレビでない側面=ローカルインフラとしてのコミュニティの重要性を指摘した。

 次に、廣瀬氏は三重県津市のCATV業者ZTVの事例を出しながら、地域情報インフラ構築をNTTがやる意味とCATV業者がやる意味の違いを強調した。ローカルコミュニティの構築が成功するためには、行政のイニシアティブと民間の距離が近くなくてはならず、運営母体がNTTのような全国組織ではどうしても温度差が生じるという。そのため地域密着のCATV業者の方が成功しやすい。例えばZTVでは、「三重県学校教育ネットワーク」というコミュニティを構築しており、既存の設備投資の上流に学校ネットワークを後付けで構築することで無駄をなくしている。さらに、学校や病院などは点在しており、基地局からの距離が重要になるADSLによるネットワーク化に向いていないという。学校インターネットに関して廣瀬氏は、文部科学省が児童・生徒が興味のあるものを図書館やインターネットなどで調べてまとめる総合学習法「調べ学習」の推進をしており、全国の学校にケーブルを引く需要があるという。

 ここで中村氏が米国の事例として、通信業界(電話会社)が必死に回線のブロードバンド化を進めているのに対して、放送業界(CATV業者)は「多チャンネルで食っていける」ので危機感を感じていないと報告した。また、CATVの生き残る道は、コンテンツ産業であると述べる。コンテンツ産業というと、人々はすぐに「エンターテインメント」をイメージするが、余暇が増えるわけではないので市場規模は大きくならないと予測、本当のコンテンツ産業とは銀行や医療現場のネットワーク化であると定義した。これを受けて、廣瀬氏が将来のインフラ像として、CATVと光アクセスと無線の共存を打ち出した。そして、インフラ構築の競争が終わった時点で、CATVはコンテンツセンターとして存在しているだろうと予測した。

 ここでディスカッションは一段落して、主題が常時接続と高速接続の話題に移った。まず、遠藤氏が韓国の“サイバーアパート”を事例として取り上げる。サイバーアパートとは、全戸にネットワークの入り口が準備され、インターネットに常時接続していることはもちろん、専用のサーバーを持ちオンデマンドで映画などのエンターテインメントコンテンツを楽しんだり、オンラインショッピングで外に出かけることなく買い物ができたりするマンションだ。このようなサイバーアパートが成功している理由は、日本のインターネットマンションように高速回線の存在ではなくて、むしろローカルよりも小さなコミュニティの成功だという。例えば、全ての世帯に、無線によるWindowsCEベースのネット端末が無料で配布され、それがいわゆる回覧版や掲示板に取って代わっているのだ。つまり、常時接続されることにより、「ローカルよりもローカルなコミュニティ」が構築されているからこそ、人々のインターネットへの親和性が高いのだという。中村氏も、「ネットワークは道路に例えられることが多いが、むしろ広場であるべきだ。日本人はコミュニティを必ずしも使いこなせていないが、ケータイでメールするような子供達が近い将来には使いこなすだろう」とコメントした。

 最後に、廣瀬氏が「信頼性の獲得こそCATVの次のステップだ」とコメントした。とある調査によれば、「人間のやる気はレスポンスタイムが0.7秒以下なら向上する」として、「止まらないインターネット」の実現が重要だという。そして、「多くのCATV局が乱立していることを今までデメリットとして捕らえられてきたが、各局が相互にコンテンツをバックアップすることで『止まらないインターネット』が提供できる」という展望の披露でディスカッションは終了した。

廣瀬禎彦氏 中村伊知哉氏 遠藤諭氏

(2001/6/22)

[Reported by okada-d@impress.co.jp]


INTERNET Watchホームページ

INTERNET Watchグループinternet-watch-info@impress.co.jp