【インタビュー】

Lモードは第2のiモードとなるか?~NTT東日本担当者に聞く

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http://www.ntt-east.co.jp/ (NTT東日本)
http://www.ntt-east.co.jp/Lmode/ (Lモード)

 6月29日午前2時、いよいよNTT東西が提供する固定電話を使ったインターネットサービス「Lモード」が開始される。「Lモード」は、対応端末でネットに接続し、液晶ディスプレイでテキストや画像の情報を閲覧したり、メール送受信を行なえるほか、「FAX to」機能といった固定電話ならではの機能も盛り込まれているサービスだ。初期設定は不要で、対応機器を接続し、機器の「Lボタン」を押すだけで自動的に設定が行なわれる。

 NTTの思惑通り、「家庭の電話でインターネット」というライフスタイルはiモードのように根付くのか―NTT東日本 ネットワークサービス部門の中村雄二郎担当課長に話を伺った。

 

●ターゲットは「家庭」、特徴は「大きな字」「テンキー操作」

編集部(以下編):Lモード開発経緯について教えてください。

Lモード端末

中村雄二郎担当課長(以下中村氏):発想の大元は、ナンバーディスプレイが出た時点です。電話機に電話番号を表示するためのディスプレイがついたので「ディスプレイで電話番号表示以外に何かできないか」と考えたのが始まりです。その後、NTT再編成の時期を迎えたため、なかなか一歩踏み出せず、エンドユーザー向けのサービス開発が停滞した時期に入りました。
 その後、2年ぐらい前の5~6月に、PHSのキャラトークが女子高生などにはやり、固定電話を使ってメールができないかという話をより具体的に検討し始めました。その矢先、iモードの加入者が予想外に急増したため、「地域会社はどうにかしなくてはいけない。メールだけでなく、iモードのスキームは地域会社でも、特に家庭の中の固定電話でやっていけるのではないか」という話が起こり、本格的に検討し始めました。でも本格的に検討を開始してからがまた大変でした(笑)。iモードと同じモノを作るかという話も当然ありましたが、固定電話は、外に持っていくというものではないし、ゲームで時間つぶしをするという使い方をするものでもない、つまり“全く違うもの”なので、家の中ではどうやって使っていくのかというところから構想を再出発させました。

編:「Lモード」のターゲットはどこに置いていますか?

中村氏:家庭の中の特に主婦にターゲットは置いています。ただ、何を想定しているかというと家庭の中の電話機を想定しています。今の固定電話は人目のつかないところ、例えば、棚の上や玄関先に置かれているので、よっぽどのことがない限りそこまで行って情報検索しないんですよね。そこで利用してもらうために特徴を出さなくてはいけないと考えました。

編:Lモードの特徴をあげてください。

中村氏:特徴の1つは、字が大きいことです。iモードは見る人は見るが字が小さいですよね。最近大きな文字で見られるものも出てきていますが、それよりもさらに字が大きく見えます。そして最大の特徴は「やっぱり電話だ」という点。つまり、電話でありFAXであり、そこで、キー操作、上下・左右、テンキーだけでインターネットやメールが使えることです。人によっては「テンキーでアイウエオを打つのは大変なんじゃないか」という見方もされますが、場合によってはテンキーしか覚えなくていいということになりますよね。そのうえ、基本的には人差し指一本で操作できます。また、技術的には、回線交換で繋がっているので、1回繋がってしまえばその後のデータ転送速度が安定している点があげられます。また、パケット通信ではないので電波の状態に左右されることなく、非常に速い形で画面が切り替わります。唯一欠点があるとすれば、モデムで繋ぐので、モデムの接続時間が20秒かかります。パソコンのモデムだと30秒ぐらいかかることに比べれば、早いのですが、ユーザーの目からみると「もっと早くして欲しい」という要望は出るでしょうね。今後の検討課題の1つです。

 

●メールの主流は「帰るコールならぬ“帰るメール”」


編:iモードはメールが主体だと思うのですが、Lモードでもメールの利用が主流になりそうですね。

中村氏:そうですね。ただ、iモードとLモードのメールの使い方は違うと思います。iモードだと、外に出ていて「今どこにいる?」というメールが飛ぶといった形で、メールそのものが、本人に到着した方が良い特徴があります。一方で、家庭の電話機の場合、ずっと家にその人がいるかどうかというとそうではないですよね。むしろ“留守番電話”的な位置付けのメールシステムが望まれていると考えていて、メールがきたらすぐ電話機に落とすのではなくて、メールがきたら、メールがあることだけをランプ表示させ、まだメールはメールサーバーに置く方法をLモードでは取ります。例えば、奥さんが家に帰ってきて「メールが着ているな」と思ったら、初めてそこでLモードのボタンを押して受信します。5通とか10通とか溜まっていても、それを1回の受信で受け取れるので、料金もかさばりません。
 メールの利用で、一番頻度が多いのは「今帰るよ」つまり“帰るメール”だと思っています。その次に多いのが、学校から届く「何月何日運動会についてのおしらせ」というお知らせメールといった地域コミュニケーション。内容と実施日時、場所、メンバーとというような内容のメールで、返信するほうは「了解」だけを送る。画像を添付して、HTMLメールというのはパソコンにまずはおまかせします。

編:迷惑メールが社会問題化していますが、その対応は?

中村氏:迷惑メールお断りは30件まで登録できます。正直、迷惑メールがここまで犯罪に発展し、具体的な事例としてあがってくるとは想定していませんでした。件数については十分だと思っていますが、迷惑メール防止策としてどういう形がユーザーにとって最適なのか、今後も継続的に考えていきます。電話番号を英数字に変更する、つまりランダムでやれば解決でするかというとそうではないですよね。英数字の組み合わせでランダムに生成すると迷惑メールの確率は確かに低くなって、今の段階では、非常に有効な手段であることは間違いありません。メールアドレスを電話番号にするというのはユーザーが「使う」という観点からすると非常に便利です。電話番号を使いながら迷惑メールをブロックする方法が何か考えられるだろうし、一番使いやすい形というのを模索していきたいですね。

 

●検索エンジン・Java搭載は今後対応


Lトップメニュー

編:情報検索の際、検索エンジンを搭載していませんね。

中村氏:複数の検索手段を提供するのは初期の段階では必要ないと考えたため、あえて検索エンジンを入れませんでした。“何でもできればいい”というのはまさにインターネット的発想ですよね。一方で、できることが限られている中で、それをできるだけ使いやすくしようというのが「Lモード」です。だから、家庭の中で本当に必要とする情報は何かを考えて、「Lメニューリスト」を構成しています。そのため、一番初めにみえるコンテンツは気象情報と電話番号案内になっています。情報を得るために階層を深く追っていく必要があるという批判は耳にしますが、最大限階層は減らせる方向で進めていき、トータルの階層は携帯電話と同じでも携帯電話より早く欲しい情報にたどり着くことができるような形で提供していきたいと考えています。今後メニューのボリュームが徐々に増えるので、その際、検索エンジンの導入を再度検討することになるでしょう。

編:Java対応についてはいかがですか?

中村氏:「Javaに対応してLモードの端末で何をやりたいのですか?」とまず聞きたいです。Javaは技術的な方法の1つであって、Javaに対応するからいいということではありません。ですから、今のところは採用を止めています。ただ、iモードにひっぱられてJavaを搭載したコンテンツは増えてくる傾向は否定できません。そうなると、Lモードに提供するためにコンテンツプロバイダーはJavaをやめなくてはいけなくなり、それはコンテンツプロバイダーにとって負担となります。コンテンツプロバイダー側の市場を広げるためにJava搭載をしていくという考え方はあります。また、エンドユーザー向けに何をアプリケーションとして提供するかということを近々に考えて採用の方向をきめていきたいと考えています。まあ、Javaを採用はすることになるでしょうね。

 

●普及目標は100~200万を目指す


編:「Lモード」の普及目標を教えてください。

中村氏:NTT東日本で1年で100~200万、東西あわせてで300万ぐらいいけばと思っています。固定電話の買い替え需要が年間700万台あり、そのうち3台に1台がLモード端末になってくれればいいと考えています。現時点でLモード機能がないものとの差は約5,000円で、大手量販店では対応端末が5万9,800円、インターネットの通販系で4万円台で売られています。5万円を切ると普及には十分な価格設定かなと感じています。欲をいうと3万円台になってほしいのですが。ただ今のFAXはハイエンドな機能がついていますから、半年から1年ぐらいたって、白黒のFAXで機能を制限してという形で対応端末が3万円台で世に出回ることはあるでしょうね。

編:日本テレコムが同様のサービス「J-Web」を発表しましたが、他社の動きはどうとらえていますか?

中村氏: NTTがやるよと発表した後にJ-Webがでてきているので差別化はJ-Web側が考えていると思います。現時点で、敵だから価格競争にもちこんでつぶしてやろうなんていう気持ちはまったくありません。とにかく“固定電話でインターネット”という市場自体を協力して構築していきたいです。ですから、5年10年たったときに家庭の電話機が「Lモード」あるいは「J-Web」であったらいいと思っています。

 

●第2のiモードにはならない~「家庭の文化」としてのLモードが理想


編:果たしてLモードはiモードのように爆発的なヒット、社会の主流になるのでしょうか?

中村氏:iモードのように爆発的にユーザーが増えることはありません。電話機の買い替えに引きずられると思っていますから。Lモードを開始したからといって電話機が年間700万が1,000万になるかというとそれは絶対にならないと思います。電話機は結局のところ耐久消費財の位置付けですから。もし、買い替え需要があがったとしてもせいぜい800万ですよ。直線的に毎年買い換えてくれて5年10年経ったときに家にあるのは、「普通の黒電話ではなくて、インターネットのメールと情報検索ができる、しかもパソコンみたいに難しいものではなくて誰でも使える電話」というような、家庭の文化に「Lモード」がなってくれればいいなと思っています。

編:ブロードバンド時代の到来が叫ばれていますが、その流れに「Lモード」は逆行しているのではないですか?

中村氏:果たして逆行なのでしょうか。ブロードバンドの側から見ればそうですが、エンドユーザー側からみたときに、黒電話で十分という人はたくさんいます。「Lモード」は逆行ではなくて留まっている、つまりあえてユーザーに合わせるためにとどめているというのが正確な表現だと思います。確かに世の中の流れはブロードバンド、光、ADSLとなっています。こういった高速通信を本当に欲しいという人が世の中の8割になったらLモードはいらないと思っています。それが5割を超えないかぎりLモードはありつづけますよ。

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(2001/6/27)

[Reported by moriyama@impress.co.jp]


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