【調査結果】

「光ファイバーの通信限界は1秒間100テラビット」と米Bell Labs

■URL
http://www.lucent.com/press/0601/010628.bla.html
http://www.bell-labs.com/

 米Lucent Technologiesの研究所Bell Labsの科学者たちが科学誌「Nature」に発表した研究結果によると「光ファイバーが送信できる情報量の限界は1秒間に100テラビット」であることがわかったという。

 100テラビットとはだいたい1秒間に20億通のメールを送ることのできる情報量に相当するとのこと。現在商業用に使われている光通信システムでは1秒当たり2テラビットの速度が限界であり、実験室レベルでは10テラビットが限界であるので、現在我々は光ファイバーの性能のほんの2%しか利用していない計算になる。この結果からBell Labsの科学者たちは、今後ビデオオンデマンドのような帯域幅を大幅に使うアプリケーションの利用が増加したとしても、光ファイバーはその需要に十分応えられると考えている。

 これまで光ファイバーを通して理論的にどれくらいの情報量を送ることができるのかを確かめるのは光の性質による問題から難しかった。例えば光ファイバーの中を通る光の速度は真空の場合と違って定数ではなく、光ファイバーの性質に依存するといういわゆる「非線形性」を示す。この非線形性効果により光ファイバーの中を送られる信号がノイズに変化してしまうこともある。こうしたことから光ファイバーを通して送ることのできる情報量を算定することは非常に難しい問題とされていた。

 この問題をBell Labsの科学者たちは量子力学からのアナロジーと情報理論のアイディアを使って克服した。彼らはまずWDMを使ってトランスミッターからレシーバーまでどれだけの情報量を送信することができるのか検討した。その結果、信号を送る強さが小さすぎると、信号はシステムの中のノイズにかき消されてしまう。その一方で信号を送る強さが強すぎると、他の信号要素を邪魔してしまう。この検討の結果、通信ネットワークで一般的に使われている波長や数値を考慮に入れると、理論的に光ファイバーを通して送ることのできる情報量が1秒間に100テラビットであるとの結果に達した。

 この結果についてLucentの光ネットワーキンググループのCTOであるAlastair Glass氏は「これは、我々の現在の商業用システムが根元的な限界からはるか遠く離れており、光通信システムが理論的な限界に達することができるのがいつなのかはまだわからないということだ」とコメントした。

(2001/6/29)

[Reported by taiga@scientist.com]


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