【規格】

Microsoft.NETのオープンソース版「Mono」・「DotGNU」計画が発表される

■URL
http://ximian.com/newsitems/mono_announce.php3
http://www.gnu.org/press/2001-07-09-DotGNU-Mono.html

 Linuxのオープンソースデスクトップ環境「GNOME」を開発する企業米Ximianは9日、Microsoftの「.NET」ソフトウェア開発環境のLinux向けオープンソースバージョン「Mono」の開発を正式に発表した。また、Free Software Foundationも9日にMicrosoft.NETと同等の機能を提供することを目標にする「DotGNU」計画を発表した。

 Microsoftの.NET計画は、GUIアプリケーションやWebサービスのための共通の開発環境を提供すると同時に、コードネーム「HailStorm」に代表されるような、個人・企業向けの認証課金システムを提供することにある。.NET開発環境の中には、MicrosoftがJavaに対抗して開発したといわれる新しい言語「C#」に加え、CやC++、COBOL、Pascalなどといったさまざまな言語で書かれたプログラムを実行可能にするランタイムエンジン「Common Language Infrastructure(CLI)」などが含まれている。MicrosoftとCorelは、すでにこの開発環境をFreeBSD環境に移植し、Microsoft独自のライセンス「Shared Source License」のもとで利用できるようにすることを発表している。つまり、CLI向けに開発されたソフトウェアは一度開発されたらMicrosoftのWindows環境だけでなく、FreeBSD上でも動作できることになる。

 Ximianが今回開発を表明したのは、この.NET開発環境のLinux版。Common LanguageランタイムやJITコンパイラーなどが含まれており、これによりWindowsで開発した.NETソフトウェアをLinuxで動作させることができるほか、Linuxで開発したソフトウェアをWindowsで動かすことなど、開発環境の幅が大幅に広がる。このMonoプロジェクトではLinux上のGNOMEコンポーネントを利用したサーバアプリケーションやWebサービスを開発できるようにし、ソースコードはすべてGPLかLGPLのもとで配布される。

 XimianがMicrosoftの開発した技術をもとにオープンソース版を開発できるのは、Microsoftが新言語C#やCLIなどといった技術を標準化団体ECMAやW3Cなどに送付し、仕様が明らかにされているからだ。しかし、RedHat社のCTOであるMichael Tiemann氏は「.NETの整合性を確かめる最善の方法は、仕様に基づいて高品質の代替実装を作り上げることが可能かどうかを確かめることだ」とコメントし、Monoプロジェクトに期待を表すると同時に、これまでのさまざまな事件の経緯から、Microsoftの商慣行に対して懸念を表明してもいる。

 また別の発表においてFree Software Foundationは、このMonoプロジェクトをサポートすることを明らかにすると同時に、「DotGNU」と呼ばれる.NETに対抗するためのサービス配信環境を開発する計画を明らかにしている。これはかねてから懸念が表明されているように、Microsoftが.NET環境のサービスすべてを中央集権化することにより、利用者の個人情報や課金サービスなどすべての情報をMicrosoftが集中的におさえることに対抗するものだ。DotGNUを使うと誰でもサービスプロバイダーとなってサービスを提供したり課金できるようになる。これにより利用者の自由とプライバシーが守られるだけでなく、競争により企業がプライバシーを保護しなければならないという圧力を受けることになることが期待されている。

 Ximianの創設者はGNOMEプロジェクトの創設者でもある著名なMiguel de lcaza氏で、同氏は今月末にサンディエゴで開かれるイベント「O'Reilly Open Source Convention」 においてこのMonoプロジェクトを発表する予定だ。

(2001/7/10)

[Reported by taiga@scientist.com]


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