【インタビュー】

「Netscape 6.1」の開発者、Jennifer Mulcaster氏に聞く

■URL
http://home.netscape.com/ja/download/

 「Netscape 6.1」(以下6.1)の正式発表に合わせて、同製品の開発を担当した米Netscape Communicationsのインターナショナル・クライアント・プロダクト部門シニア・プロダクトマネージャーのJennifer Mulcaster氏が来日した。「効率性、強力さ、安全性が6.1の特徴」と語る彼女に、この製品の魅力を伺った。

■より安定して効率アップした6.1


Netscape 6.1の画面
Jennifer Mulcaster氏(以下Mulcaster氏):今回バージョンアップした「Netscape 6.1」では、2000年秋に発表した「Netscape 6」からのパフォーマンスや安定性の向上はもちろん、オンラインでのさまざまな行動を、より効率的に行なえるような工夫が加えられています。
 特に主要な点は3つあり、1つはより効率的に使えること、次にさまざまな使い方を可能にすること、そしてオンラインでのセキュリティ、すなわち安全性を向上させた点にあります。効率面では、まずアプリケーションの素早い起動があります。「簡易起動」をオンにすると、6.1の非常に素早い起動が可能です。次に「フォームマネージャ」。オンラインショッピングやサービス登録など、Web上で何かを記入することは多いですが、1つ1つ記入していくのは骨が折れますね。「フォームマネージャ」では、フォームに記入した情報を保存し、次にフォーム入力の必要が出てきた場合、ワンクリックですべてを記入することが可能です。また電子メールアドレスやURLのオートコンプリートといった機能も、時間の短縮に有効です。また「ダウンロードファイルファインダー」では、ファイルがどういう形式かを認識し、その形式に対応したアプリケーションを指定したり、ハードディスクのどこにダウンロードしたかを確認できます。「せっかく時間をかけてダウンロードしたのに、肝心のファイルが見当たらない」といった事態がなくなるわけです。
 効率アップには、Sidebarの「履歴」タブや、「ブックマーク」も役立つというMulcaster氏。この「履歴」や「ブックマーク」は、6.1の複数の場所から使えるのも特徴の1つだ。例えば「ブックマーク」の場合、メニューバー、ユーザー設定ツールバー、Sidebarの、3ヵ所からアクセスできる。こうした複数の入り口を持つことで、ユーザーごとの使い方の違いに対応できるという。

Mulcaster氏:ユーザーごとに製品の使い方は全く異なります。今回は使い勝手についての調査を何度も行ない、ユーザーの好きな使い勝手が選べるようにしました。たとえばSidebarは自分の好きなタブだけを選べ、また世界で何百というSidebarがWebページで提供されており、Webのボタンを1クリックするだけで新たなタブが追加できます。また複数の電子メールアカウントに対応しているほか、OSも自分の好きなものを選べます。WindowsでもMacintoshでもLinuxでも、6.1で同じオンライン経験を体験できるんです。ユーザーインターフェイスも、「テーマ」の変更で好きなものに変えられます。

 「Netscape 6」ではインスタントメッセージ(以下IM)との統合が大きく進んだが、6.1でもこの部分は強化されている。IMとコンテンツとの連係も可能になっているのだ。

Mulcaster氏:ナビゲーターのみならず、メールやアドレス帳にもIMのバディリストが組み込まれ、リスト上のメンバーはもちろん、アドレス帳に登録している人がオンラインかどうかも判るようになっています。オンラインの場合はそのままIM送信が可能です。ビジネスシーンでも、長いメールよりもIMの短いコミュニケーションが有効な場合はよく見られますし、自分でも使っていてそういうことは実感できますね。またWebページにIM用のURLタグを付けて、そこをクリックするだけでIMの送信もできます。この機能はオンラインショッピングの顧客サポートなどで非常に有効に使えますし、同じWebページを見ているユーザー同士でのチャットも可能になります。

 オンラインでの安全性についてのユーザーの関心は高まる一方だが、安全性への配慮も6.1の特徴だという。

Mulcaster氏:6.1の「Cookieマネージャー」は非常に意味のある機能といえます。サイトにあるCookieを閲覧して、受け入れるかブロックするかを決めらるんですが、過去に受け取ったCookieを一覧したり、その中から特定のものだけをブロック、またあるサイトのCookieはすべて受け入れるといった動作ができるのは6.1だけです。またパスワードを記憶する「パスワードマネージャー」では、複数の人とPCを共有している場合に、「マスターパスワード」を使ってユーザーの特定ができるようになり、安全性が上がっています。またパスワードを決める時、今考えているパスワード候補の言葉の安全性を図る「パスワードメーター」という機能もあり、他人にわかりにくいパスワードを作るための目安になりますね。

■初心者はNetscapeを忘れていないか?


Jennifer Mulcasterさん
 と、より多機能になった感のある6.1だが、Netscapeそのものは、昨今では特に初心者に忘れ去れているような印象もある。それについてはどうだろうか?

Mulcaster氏:製品自体は初心者向けに作っています。従来、我々の製品を使うユーザーは、インターネットでどこで何をしたらいいのかをすでに分かっている傾向にありました。今回の6.1では、より使いやすく、わかりやすいという要素と、上級者が使いたいと思う追加機能のコンビネーションがうまく取れています。まったく初心者のユーザーにとっても、非常にいい製品ですよ。確かに機能は増えていますが、たとえばメールだと、トップ画面は「メッセージを読む」「新しいメッセージを作成」と非常にシンプルです。製品の使い方の選択肢は非常に多いですが、何をしているかが分からなくなることはありません。

 では、Webブラウザーをビジネスと見た場合のNetscapeの成功とは?

Mulcaster氏:市場のシェアはもちろん重要ですが、こうしたビジネスにはいろいろな要素が組み合わせっているため、一概にはいえません。1つには、Netscapeの日本語版サイトが成功することも要素にあります。6.1ではWebブラウザーからオンラインのサービスに引き込む機能が非常に多く、Netscape Communicatorと比べた場合、ブラウザーの機能を利用してサイトへのトラフィックを2倍にすることが可能です。このトラフィックを引き込むことで、サイトの収益をあげる面はあるかと思います。<もちろん、Netscapeだけでなく、Time Warnerなどのパートナーのサイトに引き込むことも重要です。コンテンツがオンライン経験のなかで、Netscape製品と統合されることが大きな目標であり、メリットでもあります。Sidebarなどはその代表的な要素といえるでしょう。

 つまり「Netscape 6.1」はその使い勝手や機能を生かして、より効率よく頻度の高いWebアクセスとインターネットコミュニケーションを、サイトとユーザーの双方に提供する…それが狙いといえるだろう。
 最後に、先日「Communicator 4.78」が発表された理由を訊ねたところ、「『Communicator』は企業内で高い使用率を得ており、6.1では一部実装していない機能もあるため、エンタープライズ市場へのアピールとして『Communicator 4.78』をリリースしました。ただ今後は6.1に統合していく方向で、一般のユーザーの方にはもちろん6.1をお奨めします」(Mulcaster氏)ということだった。

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(2001/8/10)

[Reported by aoki-m@impress.co.jp]


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