【団体】

今度は「認証」で米Sunと米Microsoftが対立色を鮮明に

米Sunなど33社、シングルサインオン認証の業界団体を設立

■URL
http://www.projectliberty.org/release.html

 米Sun Microsystemsを代表とする33社は26日、インターネットにつながっているどのようなデバイスからでもシングルサインオンできるWebサービス用の認証システムを共同開発するための業界団体「Liberty Alliance Project」を発足させたことを発表した。参加企業は、Sunのほか、Cisco Systems、RealNetworks、Verisign、ソニー、NTTドコモ、Bank of America、GM、United Airlinesなど各分野の企業33社となっている。

 シングルサインオン認証システムとしては、Microsoftが同社の「.NET」計画や「HailStorm」を実現するための最も重要な核として「Passport」を推進している。しかし、一つの会社があまりにも多くのプライバシー情報を管理することへの危惧からプライバシー団体や競合企業から激しい反発にあっており、最近になってPassportを開放してさまざまな企業や団体が利用できるようにすることを発表したばかりだった。なお、同様のシングルサインオンを実現する認証システムをAOL Time Warnerも開発していることが伝えられているが、MicrosoftもAOL Time Warnerも今回のLiberty Alliance Projectには参加していない。

 Liberty Alliance Projectは3つの目標を掲げて開発を行なっていく。1つ目は、一般消費者や企業が個人情報を安全に保管できるようにすることであり、住所氏名やクレジットカード番号などが分散環境の元であっても安全に保管されるようなシステム開発を目指す。2番目は、シングルサインオン認証システムのための普遍的でオープンな標準規格を策定することである。「シングルサインオン」とは、全く異なった企業やサービスを利用するときにでも、あらかじめ住所氏名やクレジットカード番号その他の個人情報を入力しておけば、プライバシーなどの設定に応じて自動的に別々のサービスにログオンできる機能のこと。いくつものパスワードを覚えずにすむという単純なメリットだけでなく、有機的に連結されたWebサービスの世界では実質的に必要不可欠な機能だと考えられている。これらをオープンスタンダードで実現することは、サービスプロバイダーにとっても利用者にとっても利点になると思われる。3番目にインターネットにおける身分証明書に関するオープンな標準規格を策定することである。この規格は中立で、オープンで、インターネットにつながったどのようなデバイスからでも利用できるようでなければならない。Liberty Alliance Projectではおもにこれら3つの要素を開発していくことにしている。

 Webサイトに掲示された情報によれば、Liberty Alliance Projectの参加会員はこれがからどのようにLiberty Alliance Projectを組織していくか、そして具体的にどのようにして共同開発を行なっていくかなどの議題を60日以内に話し合い、決定することにしており、ここ数カ月である程度の目処がつく予定だ。

 Liberty Alliance Projectにも参加しているO'Reilly & Associatesの創業者・CEOのTim O'Reilly氏は「最近になってユーザーの身分証明と認証を行なうためのソフトウェアが、来たるべき“インターネットオペレーティングシステム”の鍵となる部品であるということが明らかになってきつつある」とコメントし、Webサービスによってさまざまな機能が組み合わさって利用者に提供される、いわば「インターネットオペレーティングシステム」上では認証こそが重要だということを指摘した。彼はまた「これはあまりにも基盤となることなので、このテクノロジーは一人のプレイヤーによって所有されるべきでもコントロールされるべきでもないという幅広いコンセンサスが得られるようになった。その代わり我々にはさまざまなテクノロジープロバイダーによって実装されるオープンで分散環境のシステム、そして人々の信頼の網によって運用される団体によって発行された身分証明書といったものがぜひとも必要だ。Liberty Alliance Projectはこの方向に向かう重要な第一歩となる」と暗にMicrosoftやAOL Time Warnerの動きを批判した。

 またビジョナリーとして著名で、投資家としても活躍しているEsther Dyson氏は「セキュリティーと身分証明は今日のデジタル世界においてどんな重要な問題にも顔を出してくる重要課題となっている」とコメントし、これが関わる分野としてプライバシー、匿名性、データの信憑性、資産の保護、言論の自由、法律、信頼、ブランド戦略、マーケティングにおける透明性などといった具体的な問題を挙げた。

 このLiberty Alliance ProjectのライバルとなるMicrosoftは、現実に動くシステムであるPassportをすでに運用しているが、Liberty Alliance Projectはまだプロジェクトが立ち上がったばかりで技術的な実装は何一つなされていない。プライバシー団体がMicrosoftの方向性を批判している中、このLiberty Alliance Projectがどれだけ人々の関心を引きつけられるだけの現実の製品を提示してこれるかどうかが今後の注目課題といえそうだ。

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(2001/9/27)

[Reported by taiga@scientist.com]


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