【技術】

新しいブラウザー間通信テクノロジーの萌芽~オランダのQ42社が開発

■URL
http://www.q42.nl/demos/
http://chat.q42.net/index.html?url=http://www.cnn.com

 オランダの民間インターネット研究所のQ42が9月の終わりに発表した新しいブラウザー間通信テクノロジーが注目を集め始めている。これは「ICC Framework(Inter-Client-Communication Framework)」と呼ばれるもので、異なるブラウザー間の通信を透過的に行なえるようにしたものだ。現在「Quek」というチャットアプリケーションでこのテクノロジーを実証している。

 Quekの面白いところは、同じWebサイトの上に重なるようにして最大15人までがアニメーションを使いながら好きなようにチャットできることだ。一例としてQ42ではCNN.comの真上でチャットできるデモページを用意している。

 これまで同じページを見ながら通信するためには複雑な仕組みを用意する必要があり、これまで例えば「Gooey」(現在はサービス終了)のようなチャットアプリケーションをインストールして利用したり、「ThirdVoice」(現在はサービス終了)といったプラグインアプリケーションをインストールしてページにメモを貼り付ける、といった方法が提案され話題を集めてきた。ところがQ42のQuekでは、Internet Explorer 5.5以上を使っていさえすれば、ブラウザーの側に一切のアプリケーションをインストールする必要がないだけでなく、JavaアプレットやFlashさえも使わずにこれらの機能を実現できてしまう。すべての通信はサーバーで実行されるアプリケーションとブラウザーで実行されるJavaScript、XML、DHTMLで実行されるのだ。


CNN上でのデモ。3名が入室中

 Quekは実はICC Frameworkの最も簡単なデモンストレーションでしかない。Q42が開発したICC Frameworkは「異なるブラウザーの間の通信は透過的であるべきだ」という思想のもとに開発された。現在ブラウザーとサーバーの間は自由に通信ができても、ブラウザー同士の間は自由に通信することができない。もし開発者やデザイナーがこれを気にすることなく自由にブラウザーの間を通信してアプリケーションが構築できるなら、さまざまなアプリケーションやサービスを開発することができるとQ42は考えた。こうしてでき上がった仕組みがICC Frameworkで、これを利用した最も簡単なアプリケーションがこのチャットアプリケーション「Quek」だったわけだ。現在ICC Frameworkを利用したアプリケーションとしてはほかに「ThirdVoice」に似た、メモ帳をWebページに貼り付けられる「MemoChat」を用意している。これもXMLを利用してサーバーに情報を蓄える仕組みを透過的に行なえるようにしたアプリケーションだ。

 Quekは単なるデモンストレーションなので、現在15人までしかチャットルームに入ることができない。Q42ではさらに性能を向上させたICCエンジンを開発し、拡張性の向上やセキュリティー面の配慮などを進める予定だ。現在のQuek(背後で動作するICC)はWindows2000 Serverで動作するJavaScriptとXMLのコードで書かれているだけだが、次世代のICCエンジンではJavaが使われる予定だ。クライアントの側にはXMLを使う関係で制約があり、ICCを使うためにはIE5.0以上、Quekを走らせるためにはDHTMLを使う関係でIE5.5以上が必要となる。Netscape6.1やMozilla向けの開発はまだ行なわれていないが、将来的には行なわれる予定だ。

 Q42は、新しいインターネット技術を研究したり、さまざまな企業のWebサイトのデザインや開発を進めるコンサルティングなどを行なっている。今回開発したICCフレームワークに関しては、製品化するためのパートナーやスポンサーを探すことを検討している。

(2001/10/16)

[Reported by taiga@scientist.com]


INTERNET Watchホームページ

INTERNET Watchグループinternet-watch-info@impress.co.jp