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■URL
http://www.pref.fukuoka.jp/gigabit/
向かって左から2人目が麻生渡福岡県知事 |
福岡県は、県内の7市を結ぶ高速IPバックボーン「ふくおかギガビットハイウェイ(FGH)」を構築し、9日にサービスを開始した。県内の企業やISP、大学、自治体などに無料で広く開放する。
福岡市、北九州市、直方市、飯塚市、田川市、久留米市、大牟田市が2.4Gbpsの光ファイバー網で結ばれ、それぞれ市内にAPが開設された。FGHを利用するには、NTT西日本や九州通信ネットワークが提供する既存の専用線サービスなどを利用して最寄りのAPに接続するかたちとなる。APまでの通信コストは各企業の負担となるが、FGH区間については無料だ。
FGH内はMPLS(Multi Protocol Label Switching)方式によるVPNでセキュリティが確保されており、例えば県内各市にオフィスを持つ企業であれば、FGHを利用して本支店を結ぶイントラネットが構築できる。ISPが利用すれば、コストを抑えながら県内のバックボーンを調達可能だ。大学や研究機関を結ぶ情報ネットワークとしても利用されるだろう。
さらにFGHで結ばれるのは、福岡県内に止まらない。FGHと東京や大阪などの主要都市を接続するVPN回線も用意し、この部分については福岡県の誘致企業に限定して無料で開放する。いわば、これらの都市にもFGHの仮想APが設置されるということであり、東京や大阪から福岡までのバックボーンコストが不要になるわけだ。さらにインターネット接続サービスも用意し、県が定めるベンチャー企業やマルチメディアコンテンツ企業に無料で開放する。
9日、福岡市内で行なわれたFGHのオープニングセレモニーで、挨拶に立った麻生渡福岡県知事は「福岡県の企業も今後、B2Bに参加しなければならなくなる」流れの中、第一級のIT環境を企業に提供することが「県の義務」と強調した。さらに2002年5月以降は韓国の釜山やソウル、中国の上海との接続も開始する予定だとし、「福岡がアジアのインターネットのハブの役割を担う」という将来像も披露した。
福岡県がFGHの構築にあたって割り当てた予算は約30億円。さらに運用には年間約3億円が必要となるという。5年後に一度計画を見直すとしているが、最長で今後10年間にわたってサービスを継続する考えだ。ネットワークの構築・運用には九州電力グループが全面的に協力。福岡県のIT化に貢献するというスタンスから、同グループのダークファイバーが格安で提供されたという。
さて、ISPのFGH利用が進むことで期待される効果として、福岡県内におけるブロードバンドサービスのエリア拡大が挙げられるだろう。実際、無線常時接続サービスを展開するワイヤレスインターネットサービス(WIS)が、FGHを活用して福岡市、北九州市、飯塚市、久留米市、大牟田市に進出することを発表している。また、セレモニーの会場では、ニューセンチュリーグローバルネットのFWAアクセス「Sky Fiber」がFGHをバックボーンに利用して提供されることも紹介された。このほか、大牟田市でも、FGHをバックボーンに利用してISP事業を計画している企業も現われているという。
そうなると当然、他のエリアへのFGH構築およびAP開設が望まれるわけだが、 FGHのカバーエリアが逐次拡大していくわけではなさそうだ。FGHの大きな目的が、ITによるビジネスの創出という点に重点を置いている印象が強いというのが、その理由である。実際、FGHのAPは“伸びる要素がある”エリアに戦略的に開設されたものであり、地域の通信環境の格差解消を目的としたものではない。
麻生知事が「FGHが、福岡に進出する企業へのインセンティブになる」と述べ、来賓者のあいさつでも「企業誘致」「雇用の活性化」といった言葉が繰り返された。FGHは、IT産業の東京一極集中は長く続かないと見る福岡県が、通信環境を整備することでIT企業を誘致する、もしくは通信環境の貧弱さが原因で東京などへ流出してしまう人材を引き止めるために打った施策と言える。
いずれにせよ、行政機関や公共施設のための高速バックボーンを行政主導で構築しようという動きは各地にあるようだが、これを民間企業に、しかも無料で開放した福岡県の事業は注目に値する。こういった革新的な決断を下した福岡県が今後、通信格差の解消が前提条件となる遠隔医療や行政サービス電子化の実現に向け、どのような手を打ってくるのか注目したい。
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(2001/11/9)
[Reported by nagasawa@impress.co.jp]