【業界動向】

総務省、デジタルコンテンツ流通に関する意見募集の結果を公表

■URL
http://www.soumu.go.jp/s-news/2002/020122_5.html

 総務省は、2001年12月4日より行なっていた「映像デジタルコンテンツのネットワーク流通の円滑化に向けた著作権等のクリアランスシステムのコンセプトについて」に関する意見募集の結果を公表した。

 このコンセプトは、総務省主導による、ブロードバンド環境を視野に入れた映像コンテンツの流通に関する実証実験を行なうというものだ。寄せられた意見は、日本テレビ放送網株式会社(日本テレビ)など企業9社、コンテンツIDフォーラム(cIDf)や社団法人日本レコード協会(RIAJ)など5団体、および個人2名だった。総務省の提案では、「取引ルール」「クリアランスシステム」「運用ルール」「コンテンツ認証基盤」の開発・実証について、検証されるべき項目が列挙された。

 まず、総務省主導による実証実験そのものについて、国際知的財産権同盟(IIPA)、および米国政府から「政府が介入する必要性が見出せない」との意見が出た。両者ともに、ノウハウを多く蓄積し、現場にいる民間企業が解決できる問題だとしている。また、著作権などのクリアランスシステムの議論よりも先に、「映像コンテンツがネットワークを通じて利用者の手元まで届く仕組みを実現させることが重要」(株式会社東芝)という意見も見られた。このため、コンテンツの違法コピーの防止方法や、「認証をかわそうとするURLの直たたきなどを如何に防ぐか」(株式会社ビーバット)を議論する必要性などが指摘された。

 総務省の提案した実験プランでは、2002年1月から研究会などの開催などを行なう「コンセプト実験」と、2002年秋以降に実際にシステムを運用する「インプリメント実験」の二段構えになっている。このうち、コンセプト実験の参加者に関しては、著作権者、著作隣接権者、著作権等管理事業者、および利用者(放送事業者等)となっており、通信事業者や情報通信関連ベンダーなどのインフラ面を担当する業者はインプリメント実験からの参加となっている。この点について、最初からネットワーク事業者が参加すべきとした意見(ビーバット)や、著作権団体を統括する文化庁との連携不足、著作権の専門家の不在などが指摘された。また、実験に参加しなかった著作権保有者が不利益を受けたり、実験において実際にネットワーク上を映像コンテンツが流通することで、既存の著作物などの取引ルールに影響を及ぼすことへの懸念が表明された(IIPAや日本テレビ)。

 取引ルールに関しては、一般的な契約条項のパターンとそれに付随する手続きのほか、コンテンツの最終価格(エンドユーザーが支払う値段)から、サービス費用(配信コスト)を差し引いた売上を関係者で分配する「レベニューシェア」の導入などが提案された。契約条項パターンに関しては、cIDfから「契約内容に制約を課すようなルールを規定」するのではないかと疑問が表明された。一方、レベニューシェアについては、多くの意見者が賛成を表明する中、RIAJが「到底受け入れることはできない」と反論した。この点に関してRIAJでは、「個々の利権者がそれぞれ利用者との自発的な協議・合意に基づいて利用料を決定し、一元的システムを通じて利用許諾を得られる『一元的利用許諾システム』を検証するための実証実験であることが参加の必要条件」としている。

 クリアランスシステムに関しては、「コンテンツID」を付与し、権利情報などを含めた管理情報を流通させるために、既存のID体系間のすり合わせなどが提案された。これに対して、株式会社フジテレビジョンでは、「コンテンツIDは、ブロードバンド流通に関するコンテンツのみ必要」で、「放送されたコンテンツ全てに、自動的にIDを付与」する仕組みは、「そのようなインフラが登場したところで、考えれば良い」と、放送業者として現状での必要性に疑問を呈した。また、米国政府からは「権利保有者がRMI(権利処理情報)を付す事を義務付ける事は、手続きを制定し、ベルヌ条約とWIPO著作権条約における日本の国際的な義務に反する」との意見があった。このほか、社団法人日本芸能実演家団体協議会からは、コンテンツの二次利用や副次利用を踏まえて「映像実演家の中には、過去の自己の実演が新たに別のメディア等で公開されることに対して心理的に強い抵抗をおぼえる者が少なくない」として、一元的なクリアランスシステム導入に対して懸念を表明した。

 NTT東日本からは、「配信の枠組に関する課題として、P-Pの可能性、仕組みを検討に含めた方が良い」との思い切った提案が出された。例として、正当に配信されたコンテンツを個人が、ほかの第三者に配信することを許容し、コンテンツの権利者だけでなく、配信元の個人にも「サーバー機能提供」の対価を支払うようなシステムを提案している。

 総務省では、これらの意見を踏まえて、放送番組等映像デジタルコンテンツのブロードバンド上での流通の促進を図るため、著作権等の処理をネットワーク上で行う際に必要となる著作権等のクリアランスシステムのコンセプトに関してさらに検討を進めるとしている。

(2002/1/24)

[Reported by okada-d@impress.co.jp]


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