【イベントレポート】

イー・アクセス、ADSLの普及について「日本は来年追いつく」

 イー・アクセス取締役CTOの小畑至弘氏はIP.netで「ADSL本格普及でブロードバンド社会到来と今後の課題」と題した講演を行ない、ブロードバンド普及についてADSLを中心とした解説を行なった。

ブローバンド普及は2005年に1,000万回線


イー・アクセス取締役CTOの小畑至弘氏

 まず、ADSLの普及数のグラフを示し、昨年から順調な伸び2002年1月には179万回線に達したことを示した。また、加速的に普及している状況からブロードバンドの普及がしばらく続くと予測した。

 証券会社、シンクタンク、政府などが出したブロードバンドの普及見通し数値を比較し、今後の目標について「2005年あたりで1,000万回線の普及は現実的」と予測を述べ、根拠としてISDNだけでも1,100万回線あったことを挙げ達成可能な数値であると強調した。また、1,000万回線が普及したときには、家族も利用すると考えて3,000万人くらいが実際の利用者となると予測した。

 1,000万回線に至るまでは、2002年は300~500万回線、2003年は600~800万回線の普及が予想されることについても達成は難しくないとして、普及が順調に進む見通しであることを強調した。

 ブロードバンドの種類については直近で伸びていくのはADSLとして、電話回線という巨大なインフラがベースになることの有利さを示し、FTTHについては、ビジネスモデルの創出が伸びるかどうかのポイントになるとした。小畑氏は「ADSLとかCATVはこれをやればもうかるというビジネスモデルが見える」と述べ、ADSLビジネスに対する自信を示した。

 また、FTTHの回線速度については、「6Mを超えると普通の人には必要ない」として、ADSLの8Mタイプで十分であると意見を述べた。


韓国は市場が飽和、アメリカは利益追求にシフト


 現在、日本のADSLが伸びている理由として料金をあげた。3,000円台という料金が加入者数の伸びに貢献しているといい、韓国やアメリカよりも割安な状況になっていることを強調した。

 現在のアメリカのADSLは、CATVに加えて固定料金の一般電話とも競争しなければならないという。インターネットをあまり使わない層にとっては、固定料金の一般電話でも利用にあたっては特に問題がないというのだ。また、インターネットのヘビーユーザーでも、もともとCATVが普及しているアメリカでは、ADSLの導入に対する利点はなく、CATVと対等に戦わなければならない。さらにアメリカのDSL業者は投資を抑制して利益を追求しているため、料金も値上がり傾向が続いているとした。

 韓国については、所得を考えると日本よりずっとADSLの料金は高いと指摘。2001年後半で3万~4万ウォン(3,000~4,000円)の月額料金は日本よりもユーザーには大きな負担であるという。また、人口比を考えると普及は飽和の段階に達しているとした。

 両国の事情を考えると、2003年には日本の普及は追いつくだろうと予測を述べた。しかし、日本でもすでに値下げが市場に与える影響はなくなる時期に達しているという。

土日のトラフィックが増加

 現在のトラフィックについては、ブロードバンドが普及するにつれて、以前のような23時のピークはなくなり、夕方から徐々に増えていくという状況を示した。

 23時のピークはないものの、深夜になってもトラフィックが午前4時くらいまでは落ち込まない。このため、工事などをするときも、午前5時ごろにしなくはならないため、事業者としては辛い状況と述べた。また、最近の傾向としては、土日のトラフィックの落ち込みもないと説明する。

 また、日本の特徴として、ユーザーはルータなどを使って、常に回線をつなぎっぱなしにしていることが挙げられるとした。アメリカでは常時つないでいることはあまりなく、アメリカから来たベンダーに驚かれるという。

 速度については、理論値に近い数値が出ている人も多いとした。その半面、ISDNなどの影響を受けて最低値でリンクアップしている人も一部に存在する。おおむね局舎から1.5kmまでは理論値に近い状態で接続されている。現在はAMラジオのTBS(954KHz)や文化放送(1134KHz)の影響をなくすことが課題で、2001年末から取り組んでいるという。

ブロードバンド過疎地域が存在するが、一方で定着も進む

 ADSLの普及が進む中で、途中の回線が光化されてADSLが使えない地域が存在することについては「FTTHまで待ってほしい」といい、具体的な対策は示さなかった。

 光収容が多い地域としては、東京の大崎地区や北海道、特に札幌市などの具体的な地名を挙げた。札幌市は20%以上が光収容になっており“ブロードバンド過疎地域”と呼んでいるという。

 最後に、小畑氏はブロードバンドが普及している例として、Windows Messengerの普及をあげた。

 すでに、イー・アクセスの社内では電話よりもMessengerでやりとりしていることが多いという。目に見えないネットワークが広がっていることがブロードバンドの普及なのだし、2002年はブロードバンドが定着する1年と締めくくった。

(2002/2/28)

[Reported by 正田拓也]


INTERNET Watchホームページ

INTERNET Watchグループinternet-watch-info@impress.co.jp