MISの代表取締役副社長の矢野聡氏が「MIS方式の街角無線インターネット」と題した講演を行なった。すでに商用サービス開始時のサービス名を「Genuine(ジェニュイン)」と決定しているが、MIS方式のモバイル無線LANの優れている点などを語った。
●サービス開始当初のホットスポットは300~500カ所MIS代表取締役副社長 矢野聡氏 |
まず、矢野氏は4月のサービス開始当初のエリアについては、300~500カ所くらいではじめたいとした。
利用シーンについて、サービス開始にあたって総務省に相談に行ったとき、外でノートパソコンを使う人はいないと指摘されたという。しかし、これは当時の状況で、現在はCFサイズの無線LANカードが発売されて、パソコンだけが利用者だけではないとし、さらに先日は日立が802.11b内蔵のPDAを作った例もあげた。
矢野氏は、昔はノートパソコンもモデムが外付けだったという例をあげ、モデムが内蔵されていったように、802.11bの無線LANは2004年にはノートパソコンの半数に内蔵されるという予測を述べた。
また、料金については「いまのところ2,000円代の前半でいこうかと思っている」と、現在の見通しを述べた。この料金については、PHSとサービスにかかる費用が似ていると根拠も示した。また、MISが提供するサービスは「インターネットの接続サービスを無線でやるだけ」と強調し、コンテンツやアプリケーションは一切提供しないという姿勢を表わした。そこには、メールやホームページもないという。
その理由として、MISのユーザーはすでにインターネットを利用している人で、プロバイダーの契約がないことは考えにくいとした。また、初めてインターネットを使う人がMISに加入する場合は「フリーメールを紹介すればいい時代になった」と述べた。
現在のMISの回線品質については、実験ユーザーの行動を示して説明した。ハンドオーバーのテストをしストリーミング画像を見てスピードテストサイトで速度計測したユーザーからは「速い」という意見が多いという。現在のMISの場合、上流が光ファイバーの100Mbps接続の場合で4Mbpsは出ている。また、一部ではADSL回線を上流として使っているが、そこでは1~2Mbpsだという。
上流回線については光ファイバーに限定するわけではなく、場所とコストで決めていくとした。最初の実験が三軒茶屋で有線ブロードネットワークスの光ファイバーを使ったことについては、有線はMISの出資企業であり、ノードに余裕があるのが三軒茶屋だったという理由を述べ、光ファイバーにこだわる理由はないと強調した。
現在でも一部では8MタイプのADSLを使っており、実験の行なわれている韓国ではCATV回線を使っているという。
最近、無線LANがセキュリティに弱いと報道されたことについては、同じ基地局に同じ暗号の鍵があることが問題と指摘した。無線の電波を拾っていると、その鍵がわかってしまう。128ビットのWEPでも同様だという。
それに対し、MIS方式はその心配がないという。MIS方式ではユーザーごとに1個1個の鍵をもち、時間ごとにそれを変える技術でセキュリティを保っているからだと説明する。
また、矢野氏は通常の無線LANでは基地局を乗り換えるとIPアドレスが変わるため、通信が途絶えることもある。モバイルならばPHSのようにハンドオーバーできる必要があり、MIS方式はそれができるという。
ハンドオーバーができる理由としては、ホームエージェントと呼ばれるサーバーで個々のユーザーの管理することで、移動しても切れないのだと説明した。
こういった技術を実用化した例はなく、MISが世界で最初の例になると、技術的優位性を強調した。さらにハンドオーバーをスムーズにするため、ルートテクノロジは2つの電波を受信できる無線LANカードを試作したことも明らかにした。
矢野氏は、最近の電子メールの傾向として1~2MBのファイルを添付してしまうことや、かつてWebサイトのHTMLファイルにも大きさの基準のようなものがあったが、いつのまにかFlashを多用したページばかりであるとし、利用シーンにまでブロードバンド化が進んでいるとした。
そのような状況だからこそ、PHSの64kbpsよりも速いMISのサービスは評価されているのだと分析する。
今後はエリアを広げ、室内に設置するだけのアクセスポイントも設置していくとした。このタイプを思いついたきっかけは、普及しているADSLの線を使ってすぐにサービス提供したかったことだという。
また、現在のエリアが、サービス開始時の300~500カ所の予定に達していないことについては、さらに増やしていくとした上で、数日中に大学や各地でサービスエリア拡大のニュースを発表できるだろうとした。
また、矢野氏は、5月のワールドカップサッカーのときには、MISの会員が韓国で使えるようにしたいとし、その逆に韓国の会員が日本のMISのスポットで利用できるようにしたいとの希望も語った。
(2002/2/28)
[Reported by 正田拓也]