【事業計画】

「儲からないものはやらない」

ポータルから“トレンドセッター”向けサイトへ~エキサイトが事業計画を発表

■URL
http://www.excite.co.jp/
http://www.itochu.co.jp/

左から伊藤忠・小林氏、エキサイト・山村氏、伊藤忠・井上裕雄情報産業ビジネス部長
 2月初旬に伊藤忠商事株式会社への買収・子会社化を発表し、動向が注目されていたエキサイト株式会社が、今後の事業方針についての説明会を開催した。広告獲得を踏まえたユーザー層の確立と有料事業の積極展開で、従来のポータル像からの脱却を図る。

 説明会では、まず米Excite@Homeからの株式取得の経緯を説明。昨年8月ごろから経営権譲渡の交渉を進めていたが、その途中でExcite@Homeが破産法の適用を申請したため時間がかかり、この2月にExcite@Home所有分の株式取得が完了したという。伊藤忠商事執行役員兼「ネットの番人」の小林栄三氏は、「米Exciteが失敗した轍を踏まないために、これまでもポータル一辺倒にならない展開を行なってきたが、そこに伊藤忠が140年の歴史で培ったノウハウも取り入れ、エキサイトが今後の伊藤忠のネットビジネスのコアの中のコアになるために注力していく」と、エキサイトの事業への期待を表した。
 伊藤忠はグループ内にCTC、IIJ、イーバンクなどインターネットインフラ・システムの企業を多数持ち、その上でコンシューマー向けの窓口としてエキサイトを位置付け、展開していくという。

 エキサイト本体の今後の事業方針は、エキサイト代表取締役ゼネラルマネージャーの山村幸広氏が説明した。エキサイトの現状についてまず触れ、昨年夏から米Exciteの状況の関係でサービスや技術の入れ替えのため経費が増大したが、今四半期(2002年1~3月)は黒字化の方向にあるという。現在エキサイトのページビューは1日2,450万、登録ユーザー数は568万人(いずれも1月末)。またワイヤレス(携帯電話からのアクセス)のページビューは1日836万で「日本でほぼ最大」(山村氏)、ワイヤレスでの有料会員数は36万人に達するという。

 山村氏は「2003~5年くらいにFTTHの上に全コンテンツが乗ってユーザーまで届く“総デジタルメディア時代”が来る。ITビジネスでも、現在はインフラ中心でキャリア企業がリーダーとなって引っ張っているが、次はコンテンツプロバイダーがリーダーになるだろう。そこでエキサイトはどこにつけるべきか」と述べ、今後の展開として“ユーザー層を絞っていく”ことを明らかにした。エキサイトを「都会に住むシティ派で感性の豊かな20~34歳の男女(=トレンドセッター)の生活を快適にするパートナー・ポータル・サイト」(山村氏)と位置付け、いいものにはどんどんお金を出し、広告ターゲットとしても有力なこの世代(「F1M1層」と呼ばれる)に向けた展開を図っていく。
 エキサイトは以前よりF1M1層の比率は高かったが、ここにさらに注力し、2003年には大都市圏のF1M1層約1,700万人のうち24%にあたる300万人のユーザー獲得を目指す。「これまでのポータルサイトは誰が利用しているか分からないものだった。雑誌の『ポパイ』や『ブルータス』といえば容易に読者像が浮かんでくるのと同様に、ユーザー層とパーコストを明確にしたインターネットメディアに、一番先に到達したい」(山村氏)という。またF1M1層に集中するため、「キッズもシニアもやらない」(山村氏)との姿勢も明確にした。

“シンジケーション・ビジネス”のモデル図
 コンテンツ面では「儲かるものをやる。お金の入らない、広告の取れないものはやらない」(山村氏)として、「エキサイト・エンターテインメントbyブロードバンド」、「エキサイト・モバイル」、「エキサイト・コミュニケーション」を中核に置いた事業展開を行なう。具体的には特にブロードバンド分野での有料コンテンツを充実させるほか、コミュニティ機能の他社提供などを行なっていく。ただ、コンテンツはすべて有料化するわけではなく、「現在無料で提供しているサービスは今後も基本的には無料で、現行より機能や付加価値のあるものを有料で提供していく方向」(山村氏)という。また現行コンテンツで“お金の入らない”ものについては「現在は未定だが、4月に新事業部体制に移行した際に、整理するものが出てくる可能性はある」(山村氏)としている。

 さらにエキサイトのビジネスモデルとして、従来の広告、モバイル課金、有料課金コンテンツ、EC&オークションに加え、新たにBtoBソリューションとアジア市場参入を追加する。BtoBではホスティングサービスと、エキサイトのサービスを他社に提供する“シンジケーションサービス”を展開していく。すでに「エキサイト・フレンズ」のBIGLOBE、ODN、DIONへの提供が決定しているほか、エンターテインメントやコミュニティ機能を中心に提供する。またアジア市場については、伊藤忠のノウハウを活かし、シンジケーションサービスや技術提供などを行なっていくという。さらに「伊藤忠の扱うブランドや商品は非常に幅広く強力で、これを生かしたECやオークション展開を行ない、他のECサイトとの差別化を図る」(山村氏)ことも視野に入れている。

 エキサイトでは今後2004年までの3ヵ年計画で事業展開を行ない、2004年度で66億円(2001年度は約30億円)の売上げを目標としている。

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(2002/3/7)

[Reported by aoki-m@impress.co.jp]


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