【研究】

慶大と東大、ユビキタス環境実現に向け共同研究を開始

■URL
http://www.mlab.t.u-tokyo.ac.jp/
http://www.ht.sfc.keio.ac.jp/SSLab/

左から東大・青山教授、慶大・徳田教授
 慶應義塾大学環境情報学部 徳田研究室と、東京大学情報理工学系研究科 青山・森川研究室は、“近未来志向ユビキタス環境”実現に向けて、実験システムの相互接続と本格稼動を開始した。

 両研究室は、以前よりユビキタスコンピューティング環境の実現に向けた実験システムをそれぞれ独自に展開していた。今回、「STONE Room」(東大)、「Smart Space Lab.」(慶大)という両大学の実験環境をインターネットを介して相互接続することで、遠隔操作などを含め広範囲な研究開発が可能になるという。回線は大手町NOC(WIDE)を介して慶大側が学内ネットワーク、東大側が東京めたりっくのSDSLを利用している。各実験環境では室内に温度、光、位置情報などのセンサーを設置し、このセンサーや家電、PDAなどをネットワークにつなぐことで、さまざまな機能が実現可能となっている。

 すでに基礎的なアプリケーションの開発と実験は終了しており、13日に行なわれた発表では多様な研究テーマが発表された。まず、東大側で開発中の「STONE」。「Service Shynthesize on the Net」の略称で、オンラインサービスの新たな呼び出し方法“ネーミング技術”を用いて、ユーザーが何をやりたいかを入力すると、自動的にそのサービスを実現できるものだ。ネーミングシステムはXMLで作られ、たとえば映画を動画で見たい場合、現在は検索サイトで検索→動画ビューアーをダウンロード、インストールといった手順がかかるが、「STONE」を使えば「作品名+見る」といった命令を送るだけで、自動的に該当ファイルを検索、再生が可能になるという。デモでは、STONEを利用して東大側(東京・本郷)から慶大側(神奈川・藤沢)の実験室のライトを点滅させたり、超音波センサーと連動して、「近くにあるプリンターから印刷する」という命令を送り、自動的に命令者の付近にあるプリンターを判断して印刷するといった機能を見せていた。

PocketPC端末をコントローラーとして利用
 一方の慶大側は、各家電機器が持つ機能を機能単位で組み合わせ、仮想情報家電を構築するという趣旨で、「Virtual VTR」のデモを実施。仮想情報家電の構成を記述したJavaカードを用いて、東大側から慶大側のモニターでビデオ再生などを行なった。またユビキタス環境内で、画像とタッチパネルを組み合わせて直感的な操作ができる「Crossing Window」や、ユーザーがそのとき使用している機器や近くにある機器を判断し、その機器に最適化したサービスを利用可能にする「Wapplet/i-face」といったデモを披露した。なお慶大側の実験室内装は、「SSLab実験装置“Box-in-the-Box”」呼ばれる研究プロジェクトでもあり、配線を容易にする二重床や二重壁、部屋の用途に応じて移動できる「MMF」(モバイル・モダン・フスマ)などを装備している。

 実験について東大の青山友紀教授は、「IPv6でさまざまな機器やサービスをつなげることはできるが、現状は、例えばインターネットで映画を見る場合、機器の設定から始まりコンテンツの検索、ソフトのダウンロードなど、さまざまな手順を踏まなければならない。映画を見たいと思ったときにすぐ見られるような形にならないと、ユビキタス環境は普及しないだろう。必要なものはネットがすべて用意して自動的につないでくれる環境が目標」として、ネーミング技術とそれを基にしたサービス合成技術の確立を行なっていく。また慶大の徳田英幸教授は「モバイルには持ち歩くモバイルだけではなく、サービスや作業が継続できるモバイル、そこにある施設や機能を利用できるモバイルという考え方もある。現在のネットワークは扱う情報ごとに分かれていることが問題で、インターネットというタテのネットワークとP2Pの横のネットワークがすべてつながって、使う人のいる状況を認識してアプリケーションが機能し、コンテンツやサービスを提供する形が理想の状態、すなわち“Smart Space”になる」と述べた。

 共同実験では今後、より多彩なアプリケーションの開発や、ユビキタス環境でのセキュリティについて研究を進め、将来的にオフィスやデパート、アミューズメントパークなど、ある程度広い場所での利用を視野に入れた展開を図る。

室内の電灯へ…(→)
CDの音楽を送り、点滅させている状態
天井に並ぶセンサー類

(2002/3/13)

[Reported by aoki-m@impress.co.jp]


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