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21日、オフィス・事務・ビジネス関連の総合展示会「ビジネスシヨウ 2002 TOKYO」が東京ビックサイトにて開幕した。主催は社団法人日本経営協会と東京商工会議所。テーマは「ブロードバンド時代に飛躍するビジネスと社会」。開催期間は24日までで、一般公開は23日からとなる。
21日に行なわれたキーノートスピーチでは、「日本経済の現状と国際化への課題」と題として、元大蔵省国際金融局長、現慶応義塾大学教授の榊原 英資氏が登場した。榊原氏は大蔵省時代“ミスター¥”と呼ばれ、その発言が円相場に大きく影響した人物だ。
榊原氏はまず、現在のIT革命を「第三次産業革命に匹敵する」とし、「この100年に一回の構造転換についていくためには、日本はさまざまな抜本的構造改革が必要である」と断言した。また、IT革命を1900年代初頭の革命と比較し、どちらも「世界を変えるほどのグローバリゼーションが起こり、情報化を促進した。しかし、IT革命の方が格段に進歩が早い」と分析しており、一刻も早い抜本的改革の必要性を示唆している。
また、この革命の中の主役として中国とインドを挙げており、「両国は、21世紀中には間違いなく経済の主役に名乗り出てくるであろう。日本は、両国を恐れる必要はないが、決して軽視はできない」とし、その要因として、中国とインドの猛烈な構造改革や華僑、印僑の存在をあげている。同氏は「両国とも現在、学生・企業共に猛烈な競争社会に突入している。学生は、どんどんアメリカ等に輸出され、質を高めて戻ってきている。また、華僑、印僑の存在により両国は既に世界中にネットワークを持っている。この点でも、グローバリゼーションでは有利だ。このような猛烈な競争の中、日本は今のような古いままの構造では、確実に追い抜かれるだろう」と語った。
榊原氏は具体的にITエンジニアのコスト問題について触れ、「今年の4月にインドを訪れた際、インドのIT関連企業は中国のSEコストに対して脅威を感じていた。ちなみに、インドのSEの平均月収は5~6万円程度で日本の10分の1程度だ。そのような日本の10倍コスト競争力のあるインドが、更にコスト力のある中国に脅威を感じているのが、世界の現状なのだ」という。この説明の中で同氏は、中国のSEの月給を1~2万円程度だとしている。このような、圧倒的にコストが安く、しかもレベルの高いエンジニアを擁している両国に対抗するためには、日本も「誰かさんが言ったように、本当に痛みのある構造改革と競争が必要」と、日本のコスト意識革命の必要性を強く訴えている。
その構造改革の具体的な内容として、「日本は、あまりにも平均的に豊か過ぎる。私は、この現状を“民主社会主義”と呼んでいる」と指摘し、日本の規制の強さや、護送団方式の行政に対する改革の必要性を語った。その例として、「医療系などは、ITを導入すれば、格段に良くなるはずだ。その為には、規制緩和とコスト意識を持つことが必要」だとしている。
また、「自民党内の各委員会制度が現在最も改革が必要だろう。この委員会によって族議員が発生し、この二重の政府構造が構造改革を妨げている」と断言し、「政府も企業も、本気でこの委員会制度の改革を進めなければ、40~50年後の日本は農耕革命に乗り切れなかったアルゼンチンと同じ末路を辿るだろう」と警告した。
最後に榊原氏は、「日本人は元来頭のいい国民だから、悲観はしていない。4~5年後には、このような構造改革もできているだろう。しかし、これには痛みが伴う。構造的に、日本の“全員が平等に豊か”という状態は限界が来ている」と結んだ。
(2002/5/21)
[Reported by otsu-j@impress.co.jp]