【集中連載】

パーソナルマッチングサービスのトレンドを追う

第一回:有料化で安全性を高める~老舗・エキサイトの場合

■URL
http://friends.excite.co.jp/

●なぜ“出会い系”が危険と言われるようになったのか


 自分の日常生活の行動範囲だけでは知り合うことのできない人とも、簡単に交流がもてるのがインターネットのメリット。周りに同じ趣味の人がいなくても、検索サイトでキーワードを打ち込めば、簡単に関連サイトが見つかるだろう。例え、マニアックな趣味でも、広い世界のどこかにはあなたと同じ趣味を持った仲間が、自分のコレクションをお披露目したり、同好の士との交流を目的として情報を公開しているはずだ。

 サイトの主宰者にメールを出したり、掲示板に質問などを書き込むうちに、見知らぬ仲間達と親しくなることもできる。筆者も、いわゆるパソコン通信時代から、かれこれ10年近くネットサービスを利用している。老若男女、職業も年齢も住んでいる所もさまざまな仲間達と知り合うことができたのも、ネットのおかげだと思っている。

 そして、もっと簡単に、積極的に、同じ趣味を持つ仲間を探せるサービスが「出会いサービス」だ。何も趣味の仲間でなくてもいい。パソコンを始めたが、メールを交換をする知人がいないという人や、同年代の友だちが欲しい人、育児の悩みを相談する相手が欲しい人などが、共通の話題で語り合える仲間を探すのに役立つ。

 ところが、インターネットでの“出会い”というと、“男女”の出会いに限定したイメージが流布してしまった。これは、世間を大きく騒がせた「出会い系サイト」利用者による事件に原因があるようだ。確かに、男女の出会いには、まじめに結婚相手や交際相手を探す目的もあれば、援助交際や、いわゆる「割り切ったオトナのおつきあい」ができる相手を探す目的までさまざまだ。

 だが、出会いサービスといっても大きく分けて次の三つの形態に分けられるだろう。

 (1) いわゆる結婚相談サービスに準じるもの
 (2) 友だち探し・仲間探しとして使われているもの
 (3) 性的な目的を持つもの(いわゆる「出会い系」と呼ばれるもの)

 多くの“出会い系”サイトを舞台にした犯罪が、この(3)のようなサイトで起きている。マスメディアがさかんに、出会いサービスの存在そのものが悪いかのように報じる中で、本来健全で有益な出会いを目的とした(1)や(2)のようなサービスまで、総じて悪いイメージがついてしまった。

 まるで「出会い」という言葉自体が、イケないことのようになってしまい、健全なものも下心満載なものも一緒くたに「近寄ってはいけないサービス」と色眼鏡で見られるはめになってしまったのだ。健全な目的で人と人との出会いを提供してきた、(1)や(2)のサービス運営者にしてみれば、たまったものではない。

●“出会いサービス”から“パーソナルマッチングサービスへ”


 このような風潮の中で、健全で安心して利用できる「友だち探し・仲間探し」サービスを提供するため、努力と工夫を続けているのがエキサイト株式会社が運営する「エキサイトフレンズ」だ。このサービスは、1999年12月にJ-PHONEの公式サービスとしてスタートし、翌年3月にはインターネットでのサービスも開始した。大手ポータルが提供するサービスとしては老舗と呼べるだろう。

 現在の登録者数は約205万人、一日に約18万人もの人が利用する人気ぶりからは、世間で言われている「出会い系サービス=危険で近寄ってはいけないところ」という印象は受けない。筆者自身も仕事上だけではなく個人的にも時々同サービスを利用しているが、ごく普通の人が仲間やメールフレンドを求めて気軽に利用していると感じる。

 サービス開始当初、同サービスは「エキサイト出会い」という名称だったのをご記憶の方も多いのではないだろうか?エキサイトが、サービスの名称を「エキサイト“出会い”」から現在の「エキサイト“フレンズ”」に変更したのは、2000年の12月。ちょうど、「出会い系サイト」での事件が多発し、大きくマスメディアで報道されていた頃だ。

 同社広報担当の今田順子氏は、「事件が起きるたびに、マスコミからの『おたくのサービスの利用者なのでは?』という問い合わせが殺到してました。弊社の利用者ではないことと、こういうサービスにも色んなサービスがあることを一から説明する業務に追われていましたね」と、苦笑いする。エキサイトは、サービス名称を「出会い」から「フレンズ」に変更することで、「男女の出会い」だけではなく、友だち作りができるサービスとしての方向性を強く打ち出し、「出会い」という言葉に付いてしまったマイナスイメージの払拭を狙ったわけだ。

 しかも、名称変更と同時に、それまで募集カテゴリとして設けられていた「恋人を探す」も廃止する徹底ぶりだ。インターネットの出会いサービスで恋人を探すこと自体は悪いことではないと思うが、「男女の出会い」ばかりが取り沙汰される風潮の中、悪いイメージを拭い去り、健全なサービスであることを打ち出すためには、「恋人探し」のカテゴリを廃止したほうがベターとの判断であろう。

 「出会い」という言葉自体についてしまった、どことなく淫靡なイメージを拭い去るために各サービスとも苦慮している。エキサイトは「コミュニケーションサービス」と称しているし、後発サービスの「Yahoo!パーソナルズ」でも「コミュニケーション支援サービス」と称している。今回の短期集中連載では、これらのサービスを個人同士を引き合わせるサービスということで、パーソナルマッチングサービスと呼びたい。

●セキュリティ強化策としての有料化


 もちろん、ただサービス名称を変えればいいというものではない。各社とも利用者に安心して、いい出会いを提供できるように、安全面の強化には心を砕いている。エキサイトの場合、名称変更以外にもうひとつ大きな変更を行なった。今年2月に導入した一部サービスの有料化だ。

 多くのパーソナルマッチングサービスでは、登録者の自己PRを検索して、「これだ!」と思う人物にメッセージを送るところからスタートする。「エキサイトフレンズ」の場合、「ミニメール」と呼ばれる専用Webメールサービスを利用することになる。この利用料として、月額300円の「ミニメコース」への加入が必要になったのだ。

 課金決済には、クレジットカード決済、イーバンクからの口座引き落とし、もしくはBIGLOBEや@niftyといった提携プロバイダの課金システムといった、利用者の身元確認が可能なシステムが採用されている。

 「有料化導入にあたって、ユーザーにアンケートを実施したところ『反対』の声が多く、ユーザー離れが起きるのではないかという懸念はありました」とメディアデベロップメントシニアプロデューサーの小幡進氏は語る。だが、有料化後に大きな影響はでなかったどころか、むしろ提携プロバイダーの会員が有料会員の半数を占めるほどに増加したという。

 この理由として、コンテンツに対して小額の月額使用料を払う習慣が、iモードをはじめとした携帯電話のネットワーク情報サービスで一般化してきたのが大きい。「インターネット上でのサービスは無料」というのがこれまでの常識だったが、携帯電話をメインに使う世代にとっては、コンテンツは有料で利用するものという考えに意外と抵抗がないようだ。「エキサイトフレンズ」が、もともとJ-PHONEの公式コンテンツとしてスタートし、現在も携帯電話からの利用者が約40万人いるという背景もあるかもしれない。また、スムーズな課金システムを持つプロバイダーとの提携は、コンテンツ課金という難題に対して、一つの成功例になったといえるだろう。

 パーソナルマッチングサービスの特徴として、女性ユーザーの場合、自己PRを掲載して、メールが届くのを待つだけでも“出会い”が始まるケースが多い。一方、男性ユーザーの場合、それではほとんどメールは来ない。現在までにWebからの利用者として約4万5,000人が有料会員登録をしているが、その9割が男性だという。

 安全面を考えるなら、すべての会員に有料で利用してもらえば万全だが、そこはビジネスとしてのバランスがある。もともと売り手市場の女性ユーザーは、登録するだけでどんどんメールが届き、好みの相手を選べる。お金を払ってまでこういったサービスを利用しなくても、いくらでも無料で利用できるサービスは存在する。

 小幡氏は、「メッセージを送る側にハードルを設ければ、ある程度の抑止力が働くと考えた」という。出会いサービスを悪用するユーザーというのは、登録者に片っ端からメールを送るという“アクティブ”なユーザーが多い。また、女性が利用しやすいよう安全面で気配りのきいたサービスは、結果的に人が多く集まり、サービスとして隆盛する。抑止をしつつ、人も多く集まるサービスにすることによりビジネスとして成り立つというわけだ。

●システムとしての安全性向上と今後の展開


小幡進氏

 有料課金によるユーザーの身元確認以外にも、「エキサイトフレンズ」ではさまざまな安全性向上策をとっている。例えば、ユーザーが登録した自己PRは24時間経たないとWeb上に反映されない。これは、800語程度のNGワードを機械的にフィルタリングするだけでなく、スタッフが目視で自己PRをチェックしているからだ。

 基本的に、“エッチ”を連想させるような文章はNGになる。自己PRの書き方によっては、判断に苦しむケースがあるが、パトロールスタッフによって判断基準がぶれないように、過去の実績から作り上げたデータベースやFAQが存在しているという。それでも判断に苦しむ場合は、担当マネージャーが決裁する。だが、こうしてはじかれるような投稿は全体の0.9%程度だそうだ。

 また、個人情報が特定できる書き込みも削除される。「エキサイトフレンズ」の自己PR部分は会員登録していなくても閲覧することが可能だ。実際に、ユニークユーザー数では、1日に35万人という数字がでているという。その中には、「ここにくれば、男性との交際を希望している女性が多い」と考え、よからぬ使い方を考える輩もいるだろう。しかし、スタッフによる厳しい事前チェックが存在していることで、エキサイトとしては問題が起こる可能性を最小限にとどめているのだ。

 この他にも、不正ユーザーからのメールを受信拒否する機能や、システム管理者に通告する機能なども準備されている。「ミニメール」でのやり取りに何らかの不正があると通告された場合には、該当部分のログだけを切り出せるシステムを用意している。「しかし、個人の感情のもつれから相手を通告してくる場合もあるので、慎重に対応しています」と小幡氏はいう。

 「安心して利用できるというのが、うちのサービスの最大のウリですね。きちんと安全対策を行なってきたおかげで、他のサービスとは違うというのが浸透してきたと思います」と同氏は笑顔で語る。なお、エキサイトとしては、実際にオフラインで会うことは推奨していないという。「会わなくてもお友達というのは成立すると思います」と小幡氏。もちろん利用に際しての最終的な責任は個人にあるが、システムがしっかりとユーザーの安全を確保した中でのパーソナルマッチングは、予想以上にいい「出会い」をもたらすサービスなのではないだろうか。

 今後の展開としては、人と人との相性をチェックできるような仕掛けを考えているという。現在、「相性占い」を展開しているが、どのような仕掛けが飛び出すのだろうか?

(2002/5/29)

[Reported by いちばゆみ]

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