ワールドカップ開幕直前！もう一つの開催地・韓国で集めたオン＆オフ情報

　ワールドカップ開催がいよいよ今週末に迫り、連日各地の盛り上がりが伝えられています。一方、共同開催国である韓国の様子は、それほど伝わってきていないような……？
　ということで、本誌連載「アクロスtheインターネット」の執筆陣の一人で、大のサッカーファンでもある韓国在住の松本さんによるレポートをお届けします。ワールドカップ観戦旅行を予定している方は必見の情報も盛りだくさんです！

ソウル市庁舎前に飾られた参加国旗と大サッカーボール

　韓国代表は、現在絶好調です。
　スコットランドに4－1で圧勝。イングランドに1－1で引き分け、そして世界王者フランスに3－2に迫る惜敗。
　今年初めは全く調子の上がらなかった韓国ですが、Kリーグ（韓国のプロサッカーリーグ）を早めに中断して合宿に入った成果が出てきたのか、とにかく調子いいです。イングランドやフランスの調子が上がってないにしても、全体として押し込む場面もありました。素人の私が見ても、春先頃の韓国とは全然違う感じがします。点の取れない日本代表とは対照的ですね……。
　そして、「強い代表の登場」にマスコミも大騒ぎです。フランス戦のあとなど、ニュース時間でも延々サッカーの特集を組んで、国民を煽りまくっています。イングランド戦くらいから、マスコミの論調も、16強は大丈夫！というふうになってきています。この分では本番まで、フィーバーが続くのではないでしょうか。

　私の勤務している大学は、慶熙大学水原キャンパス。大学からバスで20分くらい行くと、水原ワールドカップ競技場があります。ここでは、アメリカ－ポルトガル戦（6月5日）、セネガル－ウルグアイ(6月11日)、コスタリカ－ブラジル（6月13日）、16強戦（6月16日）が開催されます。私にとっては、完全な「地元開催」です。しかも、水原競技場は、完全なサッカー専用スタジアム。一度ここで試合を見たことがありますが、本当に間近で選手が見られます。
　一方、街中もワールドカップ一色……とまでは行かずとも、あちこちでポスターや看板が目立ちます。目に触れるところでワールドカップは近づいて来ていると言えます。
　ちなみに、この原稿を書いている時点で、水原市の駅前ロータリーは大工事中。今までごちゃごちゃで、正直かなり「汚かった」駅前ですが、多少改善される模様です。しかし、今頃工事って……。水原での最初の競技が6月5日。何とかそれまでに間に合わせるつもりでしょう（駅ビルも工事中ですが、流石にこれは無理ですね……）。

　さて、水原市ももちろん全面バックアップ体勢ですが、実は、これがちょっとくせ者。世界中からお客さんが来るとあって、案内をするためにも、外国語のできる人材は貴重です。しかし、流石にそんな人材を一度に手配するのは至難の業。そこで白羽の矢が立ったのが、学生ボランティアです。私の所属は外国語学部ですので、語学の堪能な人材がいっぱい。昨年あたりからボランティアの要請があり、学生たちもそれに応えて、日頃培った外国語の実力を試そうと、やる気満々です。
　それはそれで非常にいいことなんですが、問題は、大学の授業。
　韓国の大学は、全てが日本より一ヶ月先に進みます。新学期は3月1日からで、夏休みは6月中旬から。この原稿書いてる時点でいうと、あと二週間で期末試験期間に入ります（韓国の大学はセメスターなので、通年ではなく、半年単位で区切ります）。ということは、試験期間にモロにぶつかるわけですね。
　水原市から「欠席事由を証明する書類を提出するので、配慮をお願いしたい」と要請が来ていて、学校側もこれには最大限に協力するという立場なんで、試験があろうが、ボランティアが優先されます。学生からしたら、大手を振って休めるよい機会。私のクラスでも既に授業に出られなくなっている学生がいて、試験をどうするか、弱っています。
　授業によっては、「5月で終了！」なんていうのもあるそうで、ボランティアをやらない学生も、密かにそれを期待している模様。こっちとしても、授業をとっとと終えて夏休みにしたい、という気持ちがないわけではないのですが、そこはそれ、「諸般の事情」でなかなかそうもできません（笑）。

　私の勤務校は、韓国内でもサッカーの強い学校として知られています。昨年の大会でも優勝してまして、校内に大きな垂れ幕がさげられていました。
　大学には専用のグラウンドがあり、綺麗に芝生が敷き詰められています。このグラウンド、大会時の練習用に提供されるということで、現在は使用禁止。毎日整備の係の人が水をまいたりしています。
　ここでキャンプをするわけではないので、恐らく試合直前の調整などに使われるんだと思いますが、どの国が来るのか、今から楽しみです。

水原駅前。開催日にはもっとスッキリしている予定…	大会ボランティアとして参加する学生たちの交流会		慶熙大学のグラウンド。きちんと整備されてます

　ワールドカップを契機に、携帯各社もサービスの充実に努めています。
　SK Telecomは、大会期間中、英語、中国語、日本語の利用できるカラー端末を、仁川と金海国際空港で貸与。画面を通して、観光情報やニュースなどを提供してくれます。貸し出しは一日300円程度で、ネット使用の場合は1日1ドルで計算。電話をかける場合は、10秒10円。
http://www.sktelecom.com/cgi-bin/2002/jsNewsBoard/jsNewsBoardSimple.cgi?id=421&db=0&mode=0&frame=1（韓国語）

　一方、大会の公式スポンサーであるKTFも、さまざまなサービスを提供する模様。また5/1～6/3までに加入した人を対象としたキャンペーンでは、韓国チームが1ゴール差で買ったら8億ウォン（8000万円：￥10＝W1。以下同）、2ゴール差で買ったら16億ウォン、16強進出なら更に16億ウォンプレゼント。
http://www.ktf.co.kr/pr/news/news_view.jsp?num=208&cur_page=3&tot_count=202&tot_page=41&cnt=192（韓国語）
　また、ピザハットと提携して、韓国チームが16強に進出したら、ピザハットで先着順16名にピザ無料提供なんてこともやっています。
http://www.ktf.co.kr/pr/news/news_view.jsp?num=211&cur_page=2&tot_count=202&tot_page=41&cnt=195（韓国語）

　似たようなことは、LG Telecomもやっており、韓国が初勝利をあげた瞬間、無線インターネット「イージーアイ」加入者全員に、3ヶ月分の月定額追加サービスや各種プレゼントを用意。
http://www.lg019.co.kr/new019/019news/read.jsp?no=2867（韓国語）

　ちなみに、携帯電話のみならず、韓国企業各社は軒並み「16強進出キャンペーン」を張っていて、韓国が1勝するたびに景品や現金をプレゼントするという商法を行なっています。何せ、過去4回の出場で、未だ勝ちなしの韓国代表。過去の成績からだけでは、苦戦は免れないところです。
　ところが、韓国代表がここにきて、スコットランドに圧勝、イングランドに引き分け、フランスとも接戦を繰り広げるという上り調子になってきました。ホームで試合を行なえるという利点もあり、景品を奮発した企業は「損害」を被る可能性が出てきました。
　既にそうした事態に備えた「保険」に入っていた企業もあったようですが、今度は、保険会社が別の保険に入り直すといった、嬉しい悲鳴が聞こえてきているとの報道も見かけます。

　日本にアルゼンチンvsイングランド戦が行った代わりに、韓国に来たのはアメリカ代表。やはりこわいのはテロです。韓国警察も本格的に警備を始めたようで、移動の際にはサイドカーで護衛、各国代表が宿泊するホテルにも100名単位の警備を配置するなど、強力な警備体制で望むそうです。おまけに、アメリカチームには、機関銃などで特殊装備した警察特攻隊がつくんだとか。
　特に凄いのが、競技場の警備。何と、地対空ミサイルが2基ずつ配置されることに。しえ～。流石に戦争状態（休戦中）の国だけはありますね。

【街が綺麗になる！】

　今回の大会で、私がちょっと嬉しかったことがあります。それは、町が綺麗になったこと。特に、トイレ事情が相当によくなったのが、ほんとに有り難いです。
　正直、韓国の飲食店は、トイレが「うげ～」という所が結構あります。もちろん、それなりの店に行けば綺麗なところもありますが、庶民的なところって、トイレも△●☆だったりするわけです。ところが、大会に合わせて、ビルを改装したり、トイレをよくしたりと、随分「マシ」になりました。
　駅のトイレも、大きく変わりました。以前は、かなり強烈な匂いと戦いながら用を足していたんですが、それもかなり改善されました。地下鉄なんかは、あちこちで改修工事がず～っと行なわれていまして、綺麗な姿でお目見えしたトイレには、美化運動のポスターが張りまくってあります。

　あと、障害者の方のための施設も増えてきました。韓国の場合、街のつくりが、ほとんど障害者を想定していない感じだったんですが（これは日本より遙かにひどい）、最近、駅などでは、車いすの利用なども想定した設備を整えるところが出てきました。エレベーターも新しく設置されたりしています。「どうやって駅まで行くんだ？」という根本的な問題はあるにしろ、小さな一歩が踏み出されたのは、喜ばしいことだと思います。
　水原の駅前も整備されてきたようですし、「こんな効果があるなら、毎年やってほしい！」と密かに思っています。

教保生命ビルのディスプレイ	高層ビル全面を使ったKTFの広告	新設された公衆トイレ、の1つ	東大門の斗山タワー、壁面はジダンがにらみを効かせる（左）。付近にはこんなディスプレイも（右）

　日本では、チケット購入がかなり難しいようですが、韓国での試合は未だチケットが大量に余っている状態。韓国の分は、定住外国人も購入できるとあって、私もいっぱい買い込みました（笑）。
　韓国ではチケットの販売方法が3種類あります。一つはネット。これは日本と同じですが、あとは住宅銀行か郵便局での購入になります。電話販売というのはありませんでした。
　日本の友人からも随分頼まれまして、その度に、家の近の銀行に足を運びました。窓口のお姉さんにもすっかり顔を覚えられてしまい、たまたま外で顔を合わせた時にも、挨拶される程に(^_^;)。

【観光客は本当に増えるの？】

　韓国がワールドカップで期待していたのが、中国人観光客。物価の問題を理由に、抽選前から韓国での競技を希望していた中国ですが、近年、韓国内で、中国人の不法滞在・就労が社会問題となってきており（これは日本と同じ現象）、韓国側も不法滞在者の増加を懸念していました。そのため、渡航の条件を厳しくしたようですが、これが逆に観光客の足を遠のけた模様です。
　韓国内では、現在かなり大々的な中国ブームが起きていて、その流れもあって「中国チームが来る！中国人観光客も来る！」と一時は騒いでたんですが、どうも、捕らぬ狸になりそうな気配です。
　一方、日本と同様に、欧州からの予約も大量にキャンセルが入ったようで、チケットの余りと加えて（当日券が出そうな気配も……）、観戦の穴場になりそうです。

　韓国の携帯電話の最大手、SK Telecomが提供するサッカー案内所。歴代ワールドカップで使用された公式球やユニフォームの展示、またインフォメーションデスクでは、外国の観光客の為の案内もあり。端末が置いてあるので、情報検索も可能。その他、訪問者へのプレゼントやイベント（5/18～6/15）が多数用意されています。
http://www.feverzone.co.kr/（韓国語）

　韓国の鉄道は国有会社なんですが、これもワールドカップに合わせたサービスを実施します。大会期間中、京釜線・湖南線。全羅線で外国人専用車両を設置し、また特別列車運行で、平時の64％増の座席を確保。仁川空港でもチケットを買えるそうです。
http://www.korail.go.kr/cgi-bin/frame_news?index=2&num=012551&sort=01&menuchk=2&minor=01（韓国語）
http://2002.korail.go.kr/japan/news/view.jsp?U_ID=6（日本語）

　韓国内の主要都市駅では両替のサービスも提供します。
http://2002.korail.go.kr/japan/news/view.jsp?U_ID=7（日本語）

　また大会期間中、入場券を持っている人は、地下鉄の駐車場を割引利用できるといった細かい(?)サービスも。
http://seoulst.go.kr/web_board/read.cgi?board=korail_news&y_number=514&nnew=2

　ソウル市では、ソウルの試合のチケット購入者に地下鉄無料券（1回のみ）配布するそうです。ソウルで試合を見る人は、きっちりgetしてください。
http://japanese.metro.seoul.kr/logic/announce/user.cfm?mode=view&snum=3001&search=&page=4&num=1224U（日本語）

　大会開催中はバスの増便はもちろん、車両番号制も導入されます。これは、ナンバーの末尾によって、通行に規制をかけるもの。大きなイベントがあるときや、海外の要人が来たときなど、警備上の関係から実施されるときがあります。レンタカーを借りようと考えている方、韓国在住の方とクルマで出かける方は要注意。
http://japanese.metro.seoul.kr/logic/announce/user.cfm?mode=view&snum=3001&search=&page=1&num=1323（日本語）

　交通機関以外では、なぜか韓国の「農協」が、ワールドカップ期間中、両替のサービスに乗り出すそうです。手数料が47%引き、1,000ドルを超えると53%割引になるとのことで、チェックする価値はありそうです。
http://www.nonghyup.com/（韓国語）

　また特級ホテルの免税店も、ワールドカップ期間に合わせて、特別セールを行う予定（URLはロッテホテル）。
http://dfs.lotte.com/

買いまくった!?チケットの一部	TTL Fever Zone江南店の様子	地下道のグッズ販売兼旅行者案内所。利用客の多い地下鉄の駅にある	ソウル駅前の案内所兼グッズ販売所

　最近の登り調子で国民の期待を背負いまくりの韓国代表。しかし、その裏には、厳しい現実があります。
　それが、兵役。
　韓国人の男子は、基本的に2年2ヶ月の軍務につく義務があります。スポーツ選手とてそれは例外ではありません。現在の韓国代表は若い選手が多いんですが、アン・ジョンファン、ソル・ギヒョン、イ・チョンス、チェ・テウク、パク・チソン、キム・ナミル、イ・ヨンピョ、チャ・ドゥリなど、レギュラークラスの人間が、ことごとく兵役を済ませていないのです。
　むろん、軍にも「尚武」というチームがあって、そこでプレーすることも可能なんですが、スポーツ選手が2年以上のブランクをおくというのは、常識的に見ても、相当につらいこと。

　ただ、これには、若干の救済措置があります。
　韓国では、オリンピックのメダルか、アジア大会金メダルを獲得した選手に限って、兵役を免除しているのです。現在、アメリカメジャーリーグで活躍しているパク・チャノも、前回のアジア大会で金メダルを獲得し、晴れて兵役免除の特権を手にしました（ちなみにその時の決勝では、アマチュアで構成された日本チームに対して、プロ軍団の韓国が圧勝しました。日本側にとっては名誉をかけただけの試合だったが、韓国の選手にとっては、一生を思いっきり左右する重要な試合だったのです）。
　ところが、ワールドカップには本来、こういった規定がありません。そのため、代表チームが16強に進出したら、兵役免除という声が一部からあがっています。ただ軍はまだOKを出していないし、これからどうなるかは未定。
　ただ、秋には釜山でアジア大会があります。これで金メダルを獲れば、文句なしに兵役免除。日本はU-22で臨むというし、韓国は兵役を済ませてない選手が必死で来る可能性が高いです。できれば勝たせてやりたいですね。

(2002/5/30)

[Reported by 松本真輔]