■URL
http://www2.asahi.com/2002wcup/
ワールドカップ一次リーグが真っ最中。仕事中に試合経過が気になり、ついネットでチェックしてしまう人も多いのでは。ワールドカップ速報を展開するサイトの1つ、「asahi.com」に、ワールドカップコンテンツの特色と工夫を伺ってみた。
asahi.comトップに設けられたワールドカップ速報エリア
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写真や解説、記事部分などは「朝日新聞」と同じものを利用するが、速報系のコンテンツは「asahi.com」独自に作成・配信している。この速報、実はテレビ中継で試合の模様を見ながら実況を行なっている。作成現場では、テレビを見ながらボールの行方をメモに起こし、専用の入力フォームからHTMLに作成、確認した上で配信するという作業を数名で分担して行なっていた。思ったより淡々と進む作業にやや拍子抜けしたが、「まだ始まったばかりですから、今から熱くなっていても持ちませんしね」と言うのは、朝日新聞社電子電波メディア局・ニュースセクションデスクの畑川剛毅氏。とはいえ初日はもっと騒がしかったそうで、慣れてきた部分もあるという。
速報を開始した当初(3月)は、実況担当者が話したことを他の人が入力する口述筆記形式だった。しかし聞き直しなどでかえって時間をとるため、メモを利用する形に落ち着いたという。メモには対戦チーム名でエリアが区切られ、書いた場所でどちらのチームのプレーかを区別できるほか、専用のストップウォッチを設け、中継中に画面から時間表示が消えても正確な時間で記録できるといった工夫があった。またイエローカード、選手交替などはその都度「スコアボード」でも表示するほか、得点は「asahi.com」のトップページにも表示するため、それぞれ専用のテンプレートを設け、入力しやすいように配慮したという。入力してから反映されるまでは1~2分程度だ。
ある意味で古典的ともいえる“テキストでの中継”を選んだ点には理由があるという。
畑川氏 サッカーは非常に点が入りにくいスポーツで、点が入るのを待っていると、サイトの画面がなかなか変わらないわけです。今試合が進行しているのに、ずっと同じ画面を出しているのはちょっと耐えられない。じゃあ動画をやれるかというと、FIFAのオフィシャルサイトではないため、絶対に不可能です。じゃあ何をやろうか?ってところから、小窓を出してそのなかでテキスト中継していけば、1分や2分で内容が追加できるし、画面も変わっていく印象を出せるだろうと。最初にテキスト速報を行なったのは3月21日の対ウクライナ戦で、それから日本代表の国際試合の時は毎回やるようになり、現在にいたっています。開幕後、1日何試合もやるのはちょっと心配でしたが、特に問題もなく続けられています。
テキスト速報自体は、「asahi.com」以前にも「スポーツナビ」や「日刊スポーツ」などが行なっていて、目新しいものではない、と畑川氏。それをコンテンツとして選んだのは、一般的なニュースサイトである「asahi.com」がやることに意味があるとの考えだという。また、ウクライナ戦から国際試合すべてを速報することで、「試合があるときはここを見ればなにかやっている」と印象付けることも狙った。5月初めまでは試合がある時だけアクセスが集中する状態だったが、日本代表メンバーの発表以降はコンスタントにアクセスが増加し、現在は「思っていた以上の状態」(畑川氏)という。
畑川氏 メモを渡していることで驚かれたかと思いますが、非常にアナログなんです(笑)。ただこうした中継の場合、追加や修正を入れていく必要があるので、むしろ紙のメモを使う形が向いている。たとえば“さっきのプレーの前にこのパスについて入れて”というのも、紙では非常にやりやすい。また例えば、後半35分のプレーを入力していたら、38分でゴールが入ってしまった。その場合、とにかくまずゴールを伝えて、それから35分~ゴールまでのプレーを埋めていく形がとれるようにしていますが、ここでも紙だと差し替えなどがわかりやすいんですね。サッカーの場合、試合中継時と公式記録が、例えばゴールの時間などで異なる場合も多いんで、後から追加・修正することが不可欠なんです。
たとえばゴールシーンの場合、まずチーム名と「ゴール!」という表示が出て、しばらくすると誰によるゴールか、アシストは誰かという記述が加わっていくことも多い。とにかくゴールは一刻も早く伝えるという姿勢が感じられる。また「速報」、「スコアボード」とも、いずれも小ウィンドウで表示されるが、これはオフィスユーザーが多い「asahi.com」の場合、オフィスのPCで堂々と見ているわけでもないだろうと、自然と決まっていたという。
速報以外でユニークなのは、FLASHによるゴールシーン再現だ。その日の試合から注目のゴールシーンを、FLASHによるアニメーションと解説、写真で再現するもので、前半にゴールがあった場合、早い時にはハーフタイム中から掲載されている。俯瞰でゴールシーンを見せるため、ボールや選手の動きがわかりやすく、サッカーの勉強にもなるというユーザーの声も多いとか。FLASHはデザイナーがビデオを何度も見て選手とボールの位置を把握し作成。30分前後でまずアニメーション部分を公開し、解説や写真は揃った時点で追加していく手法をとっている。動画でなくてもゴールシーンを効果的に伝えられる、特徴あるコンテンツといえるだろう。
4日から日本代表の試合も始まり、さらにアクセス増加が予想されるが、「アクセスの集中についてはオリンピックや甲子園など、過去何度も経験しているんで、ノウハウはしっかりあります」(畑川氏)と、余裕の構えだ。ワールドカップについては、最初から『asahi.com』とは別サーバーを立て、そのうえで数千台のミラーサーバーが世界中にあるため、集中しても負荷分散できるシステムがすでに出来上がっているという。「初日のフランス対セネガル戦では、Webでも携帯でも試合終了直後に最もアクセスが集中したことから見ても、皆まず知りたいのは、やはり得点と勝ち負け。そこはとにかく速く伝えていく。速さが命の面はやはりあります。またテレビを見ながらの中継だけでは単調になってしまうので、日本戦はもちろん、なるべく試合に人をやって、ハーフタイムなどで独自の解説を加えることも行なっていきます」と、畑川氏。この1ヶ月をどう見せ続けていくかに注目したい。
asahi.comのワールドカップ特設コーナー
| テキスト速報のウィンドウ
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中継作業中の様子。メンバー名や表記に関するメモがディスプレイ周りに貼り付けられている
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ブラジル・ロナウドのFLASHゴールシーン
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(2002/6/4)
[Reported by aoki-m@impress.co.jp]