ADSLやCATVインターネットなど、ブロードバンド・常時接続回線の利用者が急増している。これらの回線では、ダイアルアップ時代のナローバンド・従量料金環境とは全く違った使い方をしている人も多いはず。確実にブロードバンド回線が普及している現在では、インターネットの利用形態や時間帯はどう変化したのだろうか。
そこで今回は、インターネットデータセンター(iDC)とインターネットエクスチェンジ(IX)を提供するメディアエクスチェンジ株式会社(MEX)の取締役 石田慶樹氏と技術部長 高田寛氏にお話を伺った。MEXは、東京池袋のサンシャイン60ビル内にiDCを構えるほか、大阪、福岡、名古屋、広島、仙台、札幌に拠点を持つ。設立は1997年5月で、株主には東京通信ネットワーク、東京電力などが含まれている。
(左)技術部長の高田寛氏、(右)取締役の石田慶樹氏 |
6月5日から11日のトラフィックの動向。土曜日と日曜日の昼間のトラフィックが高いことが見えてくる。 |
石田慶樹氏(以下石田):トラフィックはものすごく増えましたね。1年前と比べると3.5倍くらいのトラフィックが弊社から出ていくようになりました。
IW:曜日や時間帯による変化はありますか。
石田:もちろんありますね。この傾向はおもしろいですよ。まず、1年前と比較する23時頃からからトラフィックが急激に上がる「テレホーダイタイム」という概念が無くなりました。これは大きな事です。常時接続により、いつでもつなげる環境が多くなったので、常にトラフィックが出続けているような状態です。
高田寛氏(以下高田):ここ最近の傾向としては、1日の中で20時から21時辺りがピークになっていることが挙げられます。その代わり、1年前と比べるとトラフィックの山がフラットになっていますね。あと、土曜日と日曜日が顕著で、午後になるとトラフィックが増えてきて、夜中に向けて徐々に多くなっていますね。結局、常時接続でどんなに接続をしても料金が変わらないから、休日で家にいたら、ずっとつなげっぱなしにしているのでしょうね。
石田:あと、平日の傾向として、トラフィックが20時から21時頃に上がったかと思うと、22時から23時くらいに一端落ちて、0時を過ぎるとまた上がるということがありますね。考えてみると、電車に乗っている時間はインターネットに接続しませんよね。21時頃まで仕事をして、電車があるうちに帰って、自宅に着いたと思ったらすぐにインターネットに接続する。自分の生活と照らし合わせると、ぴったりなんですよね。
IW:トラフィックがフラットになるとどのような影響があるのでしょうか。
高田:ネットワークはピークに合わせて設計しますので、トラフィックがフラットになるとこの点では助かりますね。しかし、ルーターなどのネットワーク機器のメンテナンスやバージョンアップの時は、従来は決まって午前4時頃がトラフィックが底をつく時間帯だったのでやりやすかったのですが、これだけトラフィックがフラットだとどのタイミングでやればいいのかと悩みます。従来は、4時から5時辺りにトラフィックが底をついていましたが、現在は、7時から8時辺りに移りましたね。ですので、このような作業は7から8時辺りを狙って進めることがあります。
石田:7時から8時台は通勤・通学の時間帯で、みなさん移動中なんですよね。だから、パソコンに向かってクリックしている人は少ない、ということなんでしょうか。
高田:あと、4時から5時頃のトラフィックが下がらない原因としては、夜中までチャットなりメールなりを利用して、そのあとは自動的に巡回していることが考えられます。
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石田:これもおもしろいですよ。水道の使用量がハーフタイムになると上がったのと同じような感じです。例えば6月9日の日本対ロシア戦ですが、まず、試合が始まると落ちましたね。そして、ハーフタイムになると瞬間的に上がって、後半が始まるとまた落ちました。試合終了後の上がり方はものすごかったですね。
高田:でも、想像していたより落ちなかったですね。みなさん、チャットとかWebとかでも確認をしながらテレビで観戦していたようです。
石田:テレビを見ながら、メールを見ながら、掲示板を見ながら、といった感じでしょうか。細かいところを見ると、日本が点を入れたらトラフィックが下がるのかと思ったら、上がりましたね。点が入ると、チャットでしゃべったり始めたり、各報道機関のWebページを一斉にロードしたのが原因だと思います。その上、そのあとの落ち込みは小さかったですね。
高田:4年前は、ダイアルアップが中心だったので、点が入ると一斉につなげてWebを巡回して切断してということをやってたのでしょうか。ハーフタイムのあとなどは、もっと大幅に落ち込みましたね。今までに、インターネットのトラフィックに変化が見られるようなスポーツイベントは何度がありましたが、今回のワールドカップから特にこのような傾向が強くなりましたね。
石田:思い返せば日本対ロシア戦の視聴率が66%でしたよね。66%もの人がテレビを見ていたら、トラフィックも下がるかと思いましたが、今回は全くそんなことはありませんでした。常時接続は、テレビを見ながらチャットをするといったスタイルを生み出したみたいです。
(2002/6/26)
[Reported by adachi@impress.co.jp]