単1アルカリ乾電池8本で1日程度の運用は可能だという。これはデモ用に制作したものだが、サービス時にはより小型のバッテリーも検討する。こうなるともはや、ホットスポットの基地局自身がモバイル化してしまうわけだ |
ネクストマジックは、飲食店などで手軽に無線LANアクセスサービスを導入できるソリューション「COOLSPOT」の提供を開始した。
ホットスポット構築用のスターターキットは無線システムベンダーなどからいくつか発売されているが、ADSLや光ファイバーなどのバックボーン回線を別途調達しなければならない。したがって、これらを一から導入する場合、その契約や工事で手間とコストがかかるのがホットスポット開設のネックとなっていた。
これに対してCOOLSPOTでは、LAN側だけでなくWAN側も無線ネットワークを採用しているのが特徴。IEEE 802.11b準拠の無線ルーターのほかに、インターネットへのアクセス回線となるPHSの通信カードおよび通信料金、ISP接続料金が含まれている。このパッケージを導入するだけで、「PHSの電波が届くところであれば、いつでもどこでも、工事不要でホットスポットが自由に構築できる」(萩原州代表取締役社長)。
実際、6月に大分市内のホテルで行なったモニター実験では、設置時の工事が不要という点がホテル側に好印象だったという。また、スポットの設置作業自体も、無線ルーターの場所の選定も含めて5分間程度で完了したとしている。
COOLSPOTに含まれるPHSは、DDIポケットのAirH"または日本通信のb-mobileで、いずれも128kbpsサービス(ただし、b-mobileは圧縮プロキシー機能で200kbps相当)となる。LAN区間は最大11Mbpsとはいうものの、インターネット接続は必ずしもブロードバンドとは言えないわけだ。
この点についてネクストマジックでは、「たとえナローバンドでも、常時接続であることのほうが重要」と判断。スポットのオーナーにより手軽に導入できる方式を取り入れることで、結果的に、エンドユーザーが外出先においてより低コストで利用できる方法を選んだとしている。
確かに、現時点でホットスポットを積極的に利用しようというモバイルユーザーであれば、すでにPHSカードを所有している人も多いと思われる。自前のPHSカードで直接ネットに接続しても通信速度が変わらないために、COOLSPOTのメリットはほとんどないだろう。
しかし、最近では無線LAN機能を標準で搭載したノートパソコンも珍しくなくなった。ネクストマジックでは、これまでは携帯電話で頻繁にメールのやりとりをしていた若年層が成長し、ノートパソコンを所有するようになれば、今度はノートパソコンの無線LAN機能を使って外出先でメールをやりとりするようになると予測する。利用形態はメールやBBSといったテキストの書き込みがメインだとしており、このようなユーザー層が対象であれば、128kbpsでも十分に複数のユーザーを収容できると判断した。また、エンドユーザー自身がPHSに加入する必要がないため、外国人ユーザーにも需要があると見ている。
COOLSPOTのレンタル料金は、AirH"パッケージが1日5,000円/1カ月2万5,000円、b-mobileパッケージが1日4,500円/1カ月2万円となっている。このほか、現在はサンプル提供段階だが、長期利用で割安になる売り切りパッケージも検討中だという。やはり、バックボーン回線がPHSということで、有線のADSLなどに比べてどうしてもランニングコストが高くなってしまうようだ。
そこでネクストマジックでは当初、回線工事が不要な点に加え、電池駆動も可能という特徴をアピールすることで、屋内/屋外のイベント会場に貸し出す仮設ホットスポットの市場をまずは狙う。
また、すでに走行中の電車内での実験も行なっており、PHSでもほぼ問題なく接続できることが確認されているという。有線のブロードバンド回線が敷設できない移動体への導入も期待できるだろう。
さらに、飲食店やコンビニエンスストアのフランチャイズチェーンとも交渉を進めているとしており、今年後半から増加すると見ている“ライトユーザー”に向けたスポットの拡大に務める考えだ。
(2002/7/11)
[Reported by nagasawa@impress.co.jp]