【業界動向 / 規格】

ビジネスに直結するIPv6技術は優先的に標準化を進める

「IPv6」と「Network Mobility」に注目~WIDEがIETF横浜会議を総括

■URL
http://www.ietf.org/


WIDEプロジェクト代表の村井純氏

 WIDEプロジェクトは19日、7月14日から19日まで開催された「IETF横浜会議」に関する総括報告を行なった。IETF(the Internet Engineering Task Force)はインターネットの標準化を推進する任意団体で、普段はメーリングリストを中心に議論をしているが、年に3回会議が開催されている。今回のIETF会議は、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜を会場に行なわれた。アジアでの開催は今回が初めてとなり、WIDEプロジェクトは、会議の運営を担当している。

 WIDEプロジェクト代表の村井純氏は、「横浜会議の参加者は2,001人で、日本からの参加は42%、米国からは28%で予想の範囲だった。しかし、韓国からの参加が7%もあったのは予想外だった」と報告した。米国以外で開催するIETF会議は、参加者が減少する傾向にあるが、2,001人を集めた横浜会議は「充実感と力が戻ってきた『パワフルなIETF』」といった声が多く聞かれたとのこと。

 WIDEでは、「IETFの参加者は、インターネット接続がないと窒息する」として、会場では接続サービスを提供した。特に、無線LANのアクセスポイントの設置に力を入れ、「普及が加速的に進んでいることを感じた」という。ネットワークのモニタリングツールによると、参加者の87%が無線LANを利用しており、その数からも普及の度合いが分かる。さらに、会場近くのホテルの協力を得て、フロントや各フロアーにもアクセスポイントを設置したという。また、期間中は、横浜で実施していた「インターネットITS(インターネットを利用した高度道路交通システム)」の実験を復活させて、タクシーとバスから集めた降水の様子を会場で公開した。

 横浜会議の議論では、特に「IPv6」と「Network Mobility」が注目を集めたという。村井氏は「IPv6は、一部の領域で不安を抱えていた技術者が多かったようだが、今回の議論でそれは全てクリアーになっただろう」と成果を報告した。IPv6関連の会議では、日本人からの発言が多く「徐々にサービスや製品が発売される中、このタイミングで日本でIETF会議を開いた意味は大きかった」としている。今後は、「ビジネスに直結している項目は優先的に標準化を進める」とのこと。

 また、Network Mobilityに関しては、インターネットITSなどで必要となる、ネットワークセグメントごと移動する技術の標準化が進められているという。この技術の研究・開発は、インターネットITSの実験や移動通信が基盤となり進められるため、日本が有利に進められるという。これらのことから「IPv6やITSなどには日本でしか研究できない分野がたくさんある。今回の会議では、これらの議論が活発に交わされた」と改めて横浜会議の成功をアピールした。



IETF横浜会議の参加者の国籍。日本と米国が大半を占める。 IETF会議の参加者数の動き。黄色は米国以外での開催。最近の会議は減少傾向にあるが、IETF横浜会議では盛り返している。
   


期間中は、参加者がよく利用するというコーヒー専門店の「スターバックス」にも無線LAN接続を提供。 「ネットワーク管理者はコーヒーを常に注入して、24時間起きていなければならない」(村井氏)とのこと。 期間中、台風が直撃。その間もアンテナを守り続けたという。

 

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(2002/7/19)

[Reported by adachi@impress.co.jp]

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