【業界動向 / 法律】

米下院議員、著作権保有者のP2Pネットワークへの侵入を許可する法案提出

■URL
http://www.house.gov/berman/pr072502.htm
http://www.riaa.com/PR_story.cfm?id=540
http://www.streamcastnetworks.com/6_25_02.html

 米下院議員のHoward L. Berman氏とLamar Smith氏は25日、P2Pネットワークでの著作権侵害行為に対して、著作権保有者自身によるハッキングを合法化する法案を下院に提出したと発表した。

 同法案では、著作権所有者が自らを保護できるよう、P2Pネットワークへ接続し、自助ツールを使って著作権侵害行為を妨害することを許可する。ただし、P2Pネットワークへのウィルス散布やファイルの破壊、ユーザーの個人ファイルのハッキング、合法的なファイル交換に対する無差別の妨害などは許可されない。また、ISPなどの仲介企業の資産を破壊したり、著作権侵害行為に対して必要以上の損害を与えることも禁止される。

 Berman氏は同法案の提出について「作詞作曲家や写真家、映画製作者などの著作権保有者がP2Pネットワークで大規模な著作権侵害の被害を受けている。P2Pネットワークで毎月数十万件の著作権侵害ファイルがダウンロードされ、作者や著作権保有者は何の報酬も得ていない。このような侵害行為には言い訳や弁解が通じるわけもなく、窃盗は窃盗であり、レコード店でCDを万引きするのも、Morpheusで楽曲を違法にダウンロードするのも、窃盗には変わりない」と説明している。


Howard L. Berman氏

 同法案提出について、米レコード協会(RIAA)のHilary Rosen会長兼CEOは同日、歓迎の声明を発表。Rosen氏は「Berman議員が、インターネットにおける著作権侵害行為の深刻な問題に対処するため、革新的手法を取る同法案を提出したことは称賛に値する」とし、同法は、芸術的作品の制作に時間や労力をかけている著作権所有者が、少なくとも自身の作品を大規模な著作権侵害行為から確実に保護できるようにするものだ。我々はBerman議員やCoble議員などと協力していきたい」とコメントしている。

 一方、P2PソフトMorpheusを開発するStreamCast Networksは、同法案提出の計画が明らかとなった6月25日、同法案に反対する声明を発表している。同社のCEOを務めるSteve Griffin氏は「当社は、Berman議員がP2Pネットワークの利点を認識していることを評価するものの、消費者のコンピューターへのハッキングは容赦できない。ファイル遮断やリダイレクト、誘導などを行なうツールは決して自助ツールではなく、多数のユーザーを攻撃する破壊ツールだ。我々は、このような自助ツールを用いる場合、消費者に対してサイバー戦争を布告するよう要求する」と非難している。

(2002/7/26)

[Reported by 江藤浩幸]

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