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http://www.pgp.com/display.php?pageID=51#anch20
米Network Associates(NAI)が売却の意思を表明していた暗号ソフト「PGP」の製品ラインについて19日、6月に設立されたPGP Corporationがベンチャーキャピタルの支援によりNAIからPGP製品ラインを買収することを発表した。同社は新製品「PGP 8.0」を発表すると同時にテクニカルアドバイザリーボードを結成し、PGPの考案者であるPhil Zimmermann氏などを招いた。
今回PGP Corporationは、ベンチャーキャピタルDoll Capital ManagementとVenrock Associatesの2社から合わせて1,400万ドルのベンチャー資金を受け、NAIからPDA用のPGPとデスクトップPC向けのPGPの製品ラインを買収した。NAIに対して支払われた金額や契約の詳細は明らかにされていない。この中にはWindowsとMac向けのデスクトップソリューションである「PGP Mail」「PGP File」「PGP Disk」「PGP Admin」「PGP Corporate Desktop for Macintosh」「PGP Keyserver for Windows and Solaris」「PGP Wireless for PalmOS and WinCE/PocketPC」、それにPGP暗号ソフトウェア開発キット(SDK)が含まれている。
この資産買収を受けてPGP Corporationは2002年11月にWindowsとMac用の「PGP 8.0」をリリースする予定を発表した。「PGP 8.0 for Windows」には「PGP Mail」と「PGP Disk」が含まれ、Windows XPをフルサポートするほか、Lotus Notesクライアントのサポート、UNICODEによる国際化サポートを強化するとしている。また「PGP 8.0 for Macintosh」ではMac OS Xをフルサポートし、WindowsやMac OS 9で作成されたPGP Diskとの互換性を確保する。
なおPGP Corporationでは、NAIのPGPをこれまで利用してきた顧客を引き継ぐことも明らかにしており、PGP Corporationのページからカスタマーサポートの引き継ぎ手続きに関する情報を得ることができる。
さらに今回設置されたテクニカルアドバイザリーボードには最初のPGPを開発し、PGPを商用化するために最初のPGP関連企業「PGP Inc.」を設立した創業者でもあるPhil Zimmermann氏や、著名な暗号研究者でCounterpane Internet Security社の共同創業者/CTOであるBruce Schneier氏などが含まれている。Schneier氏は最近PGPアルゴリズムを採用しているシステムにセキュリティーホールを発見したことでも知られる。テクニカルアドバイザリーボードはPGP Corporationの開発チーム、経営陣に対して製品アーキテクチャー、テクノロジー、顧客の要望などについてアドバイスを行なうことになっており、最終的には10人程で構成される予定だ。
テクニカルアドバイザリーボードに加わるPhil Zimmermann氏(左)とBruce Schneier氏 |
NAIはPGPの売却先をこれまで1年以上にもわたって探し続けていたが、思うような条件で売却できる相手が見つからなかったため、売却そのものを見直す発言などが報道されており、商業的に暗号ソフトビジネスが成り立たないのではないかと悲観論が絶えなかった。今回PGPビジネスに専念する企業がPGPを買収したことにより、既に暗号のデファクトスタンダードとなっているPGPがインターネット利用者の生活に根づくための基盤が築かれたといえよう。
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(2002/8/20)
[Reported by 青木 大我 (taiga@scientist.com) ]