【海外動向】

欧州連合、ISPと通信業者に対しアクセスデータの保存を提言

■URL
http://www.statewatch.org/news/2002/aug/05datafd1.htm
http://europa.eu.int/

 欧州連合(EU)が現在、各国法制度に影響を与える指令を改正し、プロバイダーや通信業者に対して12~24カ月間のデータ保持を義務づける方向で調整していることが欧州の市民団体「Statewatch」により明らかになった。改正案はベルギー政府が起草しているという。

 EUでは、1997年に制定された「1997EC指令」が通信上のプライバシー保護を定めるものとして有効である。この指令では、トラフィックデータを保持する目的は、顧客への請求のみであり、請求が終わると消去することが義務づけられている。ただし、例外的に裁判所など当局の許可があればトラフィックデータを調査することができる。1997EC指令は、1995年のデータ保護に関するEC指令を追完するものであり、評価されていた。

 しかし、この状況は2001年9月11日の同時多発テロで一変した。EUもこの直後テロ対策の一環として1997EC指令の暫定的改正を行ない、司法当局は、犯罪全般の操作目的で、電話の通話、携帯電話の通話、電子メール、ファクス、インターネット利用などのトラフィックデータへのアクセスが可能とされている。

 Statewatchによると、改正案では12~24カ月間保存されたデータに関し、このテロ対策の一環としてのトラフィックデータへのアクセス権を拡充する動きがあるという。トラフィックデータへのアクセスに対して、人権を理由に拒否することはできないこと、従来の限定列挙された32種類の犯罪行為だけでなく、すべての種類の犯罪についてトラフィックデータへアクセスする権利を司法当局が持つことなどが提案されている。

 しかし、この提案では、司法当局のアクセスにあたり、監督官庁への照会も規定されておらず、情報の濫用に対する規制もない。複製に関する規制もなく、データ検索についてどこまで許容されるべきかのルールも存在しないとのこと。

 今回のEUの提案は、過度に公的機関が権力を持つことになることから、個人のプライバシー権などがほとんどないがしろにされる可能性を市民団体は指摘している。

(2002/8/23)

[Reported by Gana Hiyoshi]

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