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http://www.roamad.com/downloads/roamad_27aug_2002.pdf
ニュージーランドのベンチャー企業RoamADは27日、IEEEの802.11b規格と互換性を持ちながらわずかな数のアクセスポイントで都市全体をカバーできるような無線LANネットワークを実地テスト中であることを発表した。現在すでにニュージーランドのオークランド市のダウンタウン3平方キロをカバーし、実際に動作する無線LANネットワークを構築しており、今後オークランド市全域の100平方キロメートルをカバーする予定である。
通常802.11bを使ったネットワークでは、電波を利用できる範囲が100メートル四方であるか、見通しの範囲内であるという条件がつく。都市を「面」でカバーするためには膨大な数のアクセスポイントが必要となり、投資の額やメンテナンス等に多額の費用がかかるという問題点があった。RoamADではこの問題を解決するために、802.11b規格がIEEEに採用された1997年から研究を始め、通信アルゴリズムやネットワークの構造などに関する研究を進めた結果、数100平方キロをカバーでき、100パーセント802.11bと互換性を保ったネットワークを構築する方法を見いだした。
このネットワークの通信速度は最大で330Kbps。802.11bの11Mbpsには若干見劣りするが、ネットワークがカバーする区域内でのシームレスなハンドオフやローミングを実現しており、通常の移動の範囲内であれば都市の中で「ユビキタスブロードバンド」を体験できるものと考えられる。
RoamADでは、このネットワークを第3世代携帯電話サービスを補完し、統合するものと位置付けている。RoamADの試算によれば、世界各地の都市を第3世代携帯電話ネットワークで結ぶコストの約5%の投資額で、RoamADの802.11bネットワークを構築できるという。しかも第3世代携帯電話と異なり、RoamADのネットワークは既存の802.11bデバイスで動作するため、利用者の側に新たな投資が必要としないという大きなメリットもある。現在多くの第3世代携帯電話事業者が802.11bとの相互利用サービスを検討している段階にあるため、RoamADの発表がどのような影響を及ぼすのか注目されるところだ。
RoamADのネットワークは現在実験段階にあり、また通信速度が330Kbpsであるということなど弱点も存在する。しかし2.4GHz帯の802.11bネットワークを「面」でサポートすることができることを実証した点は大いに評価できるだろう。
(2002/8/27)
[Reported by 青木 大我 (taiga@scientist.com)]