【レポート】


ウォッチャー金丸の

「Spring Internet World'97」レポート

■URL
http://events.iworld.com/spring97/iw/

3月14日

 昼間はコンファレンスと展示会場を行ったり来たり、夜は原稿書きと嵐のような2日間が過ぎて、やっと最終日に辿り着いた気がする。今朝はLAのもう一つの名物のスモッグがまるで霧のように発生して、睡眠不足で少し腫れ上がった私の目をカリフォルニアの強い日差しから守ってくれているかのようだった。

■Progrssive Networks社長ロブ・グレーサー氏のモーニングキーノート
 まずこの日関心が高かったのは、Progrssive社のキーノートの動員数がどれくらいになるのかということだった。前日までの4社はすべて、インターネットが爆発的に広まる前から他分野で確固たる実績をあげてきた超有名会社ばかりだったが、それに比べてProgrssive社はRealAudioで一躍世界的に有名になってはいるが、会社創設から2年足らずのいわば駆け出しベンチャーであることは間違いない。そんな会社の社長の講演で、かつ3日目という参加者の疲れがピークにある日であるにも関わらず、会場は8割以上が埋まっていたのだった。アフター・インターネットの時代では、いかにデファクトをつかんだものが強く、かつ次のステップを皆が期待してくれるのかということの一例を見たような気がする。

 講演前のグレーサー氏の経歴紹介で、私は初めて彼がMicrosoftの出身であることを知ったのだが、そのMicrosoftのビル・ゲイツ氏がCBSの高視聴率インタビュー番組に出演しているビデオから講演は始まった。インタビュアーの「PCでTVが見られるようになるって本当ですか?」という質問にゲイツ氏が短く「イエス」と答えたところ、インタビュアーはすかさず「それでは今度は、ラジオが電話のベルをプルルル…と鳴らすようになるのですね。」とつっこむというもの。こういったジョークで会場全体を笑わせた後に、ベオグラードの地下ラジオ放送局「B92」がロシア当局の圧力で電波で放送できなくなったときに、RealAudioで全世界の人々に今のベオグラードの状況を情報発信したという事実を入れて、社会性のある話題で素早く会場をシリアスに転換するあたりは、なかなかのやり手だと思わせた。

 彼は相当の早口でエネルギッシュに話しデモも数多く取り入れるので、場面展開が早くて話題に付いていくのが大変だ。次に彼が提起したのは、これからのインターネットメディアの行く末はなにが握っているのかだった。「Push」技術なのか「Pull」技術なのか、「リニア」(一方向)なのか「インタラクティブ」なのか…。現在、RealAudioのようなストリーミング・オーディオ技術を使ったインターネット放送は、1週間にトータル4万時間インターネットに流されており、1,000以上のRealAudio局(その中には米大手のTV局全てなどが含まれている)がある、といった現実の数字を並べられると、その数字の中にもう答えが出ていると言わんばかりの彼の自信が見えてくる。

 次に、同社のフィリップス・デール技術部長を呼んで、「RealVideo」のデモを始めた。28.8kbpsではまだ少し切れ切れにビデオ再生されるが、56kbpsモデムなどではスムーズにビデオ再生されており、リアルタイム放送でも約5~10秒の遅れでインターネット放送ができるという。RealVideoは80社以上のパートナーシップを持っており、今年の2月10日にリリースされてから4週間ですでに1,150万人がダウンロードしたことなどを公表した。また、あの黒人映画監督のスパイク・リー氏がRealVideoのために作ったタップダンス入門ビデオクリップも、公開されて2週間しか経っていないが、すでに10万人以上が見たと発表し、これまでのビデオサイトの数的伸びがオーディオサイトに比べて遙かに少なかったことも、この技術で変わるだろうとした。

 そして、これらのオーディオ&ビデオサイトを促進するためようなマルチキャスティング技術のチャレンジとして、「IPマルチキャスティング」(情報元であるサーバーから、情報を受け取りすぐにサイト上に出して、下流のサイトに公開するスプリッターを使う)技術と、「RSTP」(Real-Time Streaming Protocol)という新プロトコル技術に注力していくとした。

 最後に、「RealMedia」のデモのために、Macromedia社のCTOであるノーム氏を呼んで、Shockwave Flashを使った動画アニメを再生してみせた。このデモは18kbpsの通信速度で切れ目なくアニメ再生が行なわれるもので、Internet Worldを題材としたコメディタッチの内容とともに、大きな拍手を受けていた。グレーサー氏は'95年が「インターネット・オーディオの年」だったとすれば、'97年は「インターネット・ビデオの年」となるとして講演を締めくくった。

■展示会での注目度大のものたち
 午後からはゆっくり展示会を見られると思っていたら、最終日は16時で終了してしまうとのこと。急いで注目の技術などを見て回った。

・Microsoft IE4.0デモ
 Internet Explorerの次期バージョン4.0のデモの前はいつも黒山の人だかりで、画面写真を撮りに入り込む隙間も無いくらいの注目度であった。Netscape Navigatorとの約80(ほかの製品も含めて約200)項目での性能比較表を配るなど、Microsoftの自信のほどが伝わってくるのだが、デモを見ていてそれも納得してしまった。

 まずダイナミックHTML完全対応ということで、WWWページをまるでデスクトップ上で扱っているように加工が可能になったというのが一番の特徴だろう。たとえば、電子メールにあるホームページ情報をリンクを含めて送りたい場合でも、電子メールソフトを開いてドラッグ&ドロップでそのページを取り込むだけで送信可能になるし、WWWの更新情報を個人的に設定しておけば、情報が新しくなったら内容を自動更新してくれたり、PointCastのようなPush技術も直接IE上で見られるなどの細かいが良い部分も多々ある。しかし、一番驚いたのが、Windows95上でたとえIEが動作していなくてもインターネット情報が見られることや、逆にIE上でデスクトップのアプリケーションが開けたりと、OSとブラウザーの一体化が進んでいることだった。これでは、もはやWindows95ユーザーはIE4.0を手放せなくなるなと直感した。

・今年の流行その1「Push技術」
 Push技術を使った製品を持つ会社(たとえばPointCast社など)のブースはいつも満員。Castanet名を馳せたMarimba社のブースセミナーは、フロアに直接座り込む人もでるほどの盛況だった。

・今年の流行その2「ストリーミング・ビデオ技術」
 Motorola社のブースにも、ひっそりとストリーミング・ビデオ技術を使った展示「TrueStream」があったのだが、ほかの多くの出展社が色々出しているせいなのか、ブースの位置が入り口から遠くてわかりにくいからなのか、ほとんど注目されていなかった。

■総評
 コンファレンスでも「Push技術」および「ストリーミング・ビデオ技術」関連のものが15%近くを占めており、今年のトレンドはこの2つとなりそうだ。これは、今まで通信としての利用がメインだったインターネットが、放送との融合(場合によっては放送に乗っ取られる?)を果たしつつあることの証明でもあり、既存の巨大メディアが動き出しているのもうなづける。しかし、インターネットがTVの代わりになるだけでは、ただ垂れ流しの情報を見ているだけのメディアになりかねないので、もう1つのインターネットの特徴でもあるインタラクティブ性をいかに高めるかが今後の課題となるだろう。

('97/3/14)

[Reported by 金丸雄一]


3月13日のレポート


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ウォッチ編集部INTERNET Watch担当internet-watch-info@impress.co.jp