【イチオシ】


第36回レポーター: 長谷川敦士氏

アート+サイエンスの可能性を探る
NTT InterCommunication Center(ICC)

■URL
http://www.ntticc.or.jp/

 NTT InterCommunication Center(ICC)は、4月19日に新宿にオープンしたコミュニケーションを様々な角度から扱うミュージアムだ。今回紹介するICCのホームページは、そのミュージアムの展示場の一つとしての役割を担う重要なページで、「アートとサイエンスの融合」をキーワードに、インターネット上の様々な試みを実践する手段として活用されている。ちなみに、「アート+サイエンス」というICCのキーワードは、現在の極度に専門化した科学の諸分野への批判であるとともに、現代社会がそういった領域横断的な技術を必要としていることを示した言葉だ。

 ICCという名前を聞いたことのない人でも、WWW上で様々な人の日記をリンクした「メガ日記」や、自分で描いた模様によって音楽が奏でられる「DOTCOM」、WWW上ののぞき穴「peephole」、インターネットでも中継された坂本龍一と岩井俊雄とのコラボレーション(坂本龍一の演奏にあわせてピアノから光がでる装置)などは、きっとどこかで耳にしたことがあるはず。実はこれらの試みは、ICCの活動と何らかの形で繋がっていたものなのだ。

 こうした事実に象徴されるように、ICCは比較的早い時期からWWWの可能性を様々な形で探ってきた。中でも注目したいのは、ICCの機関誌「InterCommunication」で、なんと92年から発行されている。また、インターネット上の活動としては、上述のメガ日記やpeepholeなどを含んだ作品を展示した「ネットワークの中のミュージアム」というイベントを95年の段階で行なっている。

 これらの取り組みは、メールシステムの開発や暗号化技術の開発などいった技術的な分野の発展に比べると、一見実用とは言えない技術に思えるかもしれない。しかし、インターネットという技術の使い方がまだまだ模索段階にあるということを忘れてはならないし、「ネットワークを通じて人と繋がっている」という新しい社会環境をどのように利用していくかということについて、今一度深く考えてみる必要があるように思えてならない。

 普段何気なく利用しているチャットなどの技術が、何年か後には電話に変わる新しいコミュニケーションのスタンダードになっているかもしれない。そういう変革の時代に生きていると思うと、なんだかやけに興奮してくる。ICCはそんなことを感じさせてくれる、新しいタイプのミュージアムだ。

('97/5/13)

[Reported by hase@mxb.meshnet.or.jp]


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