【携帯端末】
京セラ株式会社のブース(2H31)では、モデムを内蔵したPHS「DataScope DS-110」を展示している。これはDDIポケットのサービスに対応したPHSで、PCカード型のモデムを内蔵し、ノートパソコンのPCカードスロットに装着すればそのまま無線通信モデムとして使えるという商品だ。以前より宣伝が盛んに行われているので御存知の方も多いことと思う。私も以前から興味があったのだが、ようやく実物を触る幸運に恵まれた。
モデム機能付きPHSとしてDS-110を見た場合、現在要求されている機能はほぼ満たしているといえる。この4月からサービスが開始されたPIAFSや、DDIポケット独自のデータ通信規格であるα-DATAに対応しており、32kbpsでの高速な通信が可能だ。
特筆すべき機能は、モデムを内蔵しているということだけではない。このDS-110は単体でパソコン通信にアクセスする機能を持ち、あらかじめ設定されたスクリプトを利用することで電子メールの送受信が可能なのである。
日本で開発された商品であるからには、当然のごとく日本語を扱うことができる。受信メールの漢字を表示するのはもちろんのこと、自分で漢字を使ったメールを書くことも可能だ。本体のサイズのほぼ半分を占める大きめの液晶ディスプレイは、きめ細かく鮮明な表示で、画数の多い漢字でも視認性は抜群だ。何かのボタンを押した際のレスポンスがいいことも見逃せない。
また、PIMを内蔵しており、単体でも住所録やスケジューラとして利用可能な他、ロータス・オーガナイザと連携してデータをやり取りすることが出来、自分のパソコンの中にあるデータと同期させることができる。専用のユーティリティはユーザー・フレンドリィで使い易く、初心者でもとまどうことは少ないだろう。
だが欠点もある。まず一つは、日本語の入力が可能ではあるものの、恐ろしく手間がかかってしまうことだ。普通の携帯電話やPHSに電話帳を入力する時と同じく0から9までのキーを叩いて読みを入力したあと漢字変換するのだが、これがかなり時間がかかる。ポケットベルにメッセージを入れる時のように二桁の数字で仮名を指定して入力していく方法もあるが、こちらも慣れていない身には辛い。
また、通信速度が内蔵の機能を使った場合は2400bpsに固定されてしまうという欠点もある。搭載メモリも少なく、通信時のログはおよそ300行程度しか蓄えておけない。
さらに、ログインスクリプトがニフティサーブ、BIGLOBE、Peopleしかサポートされていない。パンフレットには他の商用ネットワークにも接続できるようなことが書いてあるが、聞いてみたところユーザーが独自にスクリプトを組んで追加することができないため、上記三つのネットワーク以外には接続できないそうだ。
加えて、付属のソフトウェアは今のところWindowsのみの対応である。Macintosh版は現在開発中とのことだが、いつごろ配布を開始するのかはわからないという。
とはいえ、わずか175グラムの重量で電子メールを送受信できるという機能は、ヘビーなモバイルユーザーにとってはかなり魅力的なものである。何より、重いノートパソコンを持ち歩いて、通信を行うたびにPHSをパソコンに接続するという面倒くさい『儀式』が不要になるのは嬉しい。
Windowsのノートパソコンを持っていてこれからモバイル環境をととのえようというユーザーにとっては、十分に検討の対称となる商品である。
('97/6/5)
[Reported by t-masuda@city.fujisawa.kanagawa.jp]