【衛星通信】
NTTアドバンステクノロジ(株)のブース(2A27)では、NTT衛星通信ネットワークを用いたマルチメディア衛星通信システムのデモンストレーションを行なっていた。
これはまだ実験段階の技術であり、これも参考出品にすぎないのだが、私の目にはかなり期待できそうなソリューションに映った。
衛星を用いたデータ通信というと、まずベッコアメ・インターネットがサービスを開始する予定である通信衛星接続サービスを思い浮かべる。だが、こちらはあくまでもインターネットを利用するための一つの回線であるのに対し、NTTアドバンステクノロジ(株)のデモンストレーションは主にイントラネットにフォーカスしたものであった。
デモンストレーションの中で強調されていたのは、マルチキャスト配信である。これは、複数のクライアントマシンに対して一台のサーバマシンが情報の送信を行なう際に用いられる技術で、これを利用することで効率良く情報を配信することができる。テレビやラジオ、またはInternetWatchのように複数のユーザーに対して同じ情報を送信するメディアは、すべて同時配信であるといえる。
もちろん、実演されていたこのシステムの機能は同時配信だけではない。ディジタル多チャンネル放送技術により、個々のクライアントにそれぞれ異なった情報を配信することも可能だ。帯域は最大でおよそ30Mbpsというから、動画や音声にも十分な幅を持っていることになる。
利用例の一つとして示されていたのは、例えば映像の放映だ。サーバに蓄積された動画や音声をクライアントからのリクエストで取り出し、通信衛星を用いた多チャンネル技術を利用してそのクライアントに送信する。ユーザーは観たい時に観たい映像を観ることができるわけだ。これぞまさしくビデオ・オンデマンドである。
また、受信するクライアントが多ければ多いほど経済性が良くなっていく点も見逃せない。情報を受信するクライアントが一台であれ二台であれ、送信する情報量は変わらないため、結果的にクライアントが多いほど一台あたりの利用費が廉価になっていくのである。
さらに耐災害性だ。有線通信は経路のどこかでケーブルが断線してしまえば通信は行なえないし、災害に強いと言われているインターネットですらそれは変わらない。だが衛星通信は情報を送信する設備と衛星さえ無事ならば日本全国どこでも、衛星から見える位置であれば情報を受信することができる。衛星は地上災害の影響を受けないのだ。
たしかに、現状ではコストパフォーマンスが悪いというのが最大の問題点だろう。だが私はこの技術に未来を見た気がした。一昔前は衛星放送などコストがかかりすぎて不経済だと誰もが思っていたことだろう。しかし現在では衛星放送はすっかりと社会に定着してしまった。通信衛星を利用したネットワークが受け入れられないという理由はどこにもないのである。
('97/6/5)
[Reported by t-masuda@city.fujisawa.kanagawa.jp]