【イチオシ】


第43回レポーター: Tatekawa氏

コンピューターが描くアインシュタインの世界「Spacetime Wrinkles」

■URL
http://www.ncsa.uiuc.edu/Cyberia/NumRel/NumRelHome.html

 物理学者アインシュタインの名は、誰でも一度は耳にしたことがあるはず。今から100年ほど前に相対性理論を発表したことで有名だ。まず特殊相対性理論を発表し、時間の進み方の遅れなど、従来の常識では考えられない現象を説明。その11年後に発表された一般相対性理論では、ブラックホールの話も出てくる。

 この一般相対性理論が記述する世界を、高性能の計算機を駆使して描こうとしているのが「Spacetime Wrinkles」というページだ。現在の自然科学の疑問の解明には、コンピュータが深く関わっているよい一例でもある。概要は最初のページに置かれたQuickTimeムービーに手短に収められているが、画像が小さく解説が英語で流れるので、各ページをじっくりみたほうが全体像をつかみやすいだろう。

 まず、ニュートンにより始まった物理学の流れを紹介し、特許局に勤める26歳の役人(これがアインシュタインなのだが)のシンプルで画期的なアイディアを解説してくれる。重力の理論ともいわれる一般相対性理論だが、このページではブラックホール同士が衝突するときに発生する重力波を計算しようという計画を紹介されている。重力波が観測されれば、たとえ光で見ることのできないブラックホールでも、衝突が起きたという事は知ることができる。そのため、ブラックホールが存在することを示すことができるというのだ。

 どうも小難しい話になってしまったが、とにかくこの重力波の計算。数学的には強い制限を与えた場合しか解かれていない。そこでスーパーコンピュータを用いた数値計算により、制限の弱い場合の解を求めようとしている。トップのページにあるQuickTimeムービーで、SGIのコンピューター群が現われるのは、まさに膨大な数値計算を行なおうとしていることを示している。アインシュタインが生きている頃には存在しなかったコンピュータが、現在の自然科学においては、難問を解決する手段として有用だということを示している。結局のところこの分野の場合、コンピュータは強力であればあるほどよい。

 実は、ここで計算された波の形を実際の観測と比較して、どのような現象が起きているのかを調べようという計画がある。21世紀に観測装置が動き始める予定だが、太陽系の直径が原子数個分だけ変化するといった極めて小さな変化を観測しなければならないため、重力波以外の影響を取り除くようにと準備が進められている最中だ。

 コンピュータ抜きには考えられない現代の自然科学の世界。折りしも火星探査機Mars Pathfinderが火星に着陸した今、21世紀の観測手段と言われている重力波観測により、これまで知られていなかった天文現象に迫ることができると思うとワクワクしてくる。

('97/7/8)

[Reported by tatekawa@planet.club.or.jp]


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