【レポート】
8月30日、JPNICの「ドメイン名登録検討部会」主催による「DOMAIN OFFLINE MEETING」が開催された。
これは、JPドメイン名のありかたや運用について、JPNICや一般ユーザーが発表や議論を行なう会合で、特に同じくドメイン名登録検討部会が主催するメーリングリスト「Domain-Talk」を中心に約100名程度の参加者があった。
「非商業法人/任意団体ドメイン属性新設案の説明」では、さきごろJPNICより提案のあった、商業法人以外の法人格を有する組織に対しor.jp以外のドメインを割り当てること(本誌8月15日号参照)についての話がなされた。
まず背景として、現在ではor.jpの定義が「権利能力なき社団」となっているため、法律事務所のように法的に法人登録できない組織ではドメインがとれず、逆に実体のない団体でも規約を作ればor.jpドメインがとれるという矛盾が挙げられた。そこで、or.jpの定義を「複数の個人または法人によって構成され、定まった名称を持つ団体」と変えて範囲を広くし、逆に従来or.jpの中で扱われていた非商業法人のために属性(第2レベルドメイン)を新設することが説明された。
当面のスケジュールについては、9月の開始予定を延期し、9月2日に文書のマイナーチェンジを行ない、10月をめどに新設のための作業を行なうとアナウンスされた。また、それにともないドメイン名登録規則の簡略化や、使われていないドメイン名の登録解除制度の簡略化などもアナウンスされた。
「個人ドメイン名についての提案」では、個人対象のドメイン名を提唱。従来、個人のドメインは地域ドメインで登録できたが、住所の移転やプライバシー、そして表記の長さなどの問題があった。個人ドメインとしては「<名前>.<ランダムな英数字>.PE.JP」のようにするという案が提案されたが、わかりにくさや特定の数字にプレミアがついたりする可能性などの問題点も指摘された。また会場からは地域ドメインを略称にしたり実際の住所を反映する必要をなくしたりするという派生意見も出された。いずれもこれといった決定的な案が出ないというのが現状のようだ。
「gTLDの現状と今後」では、従来InterNICが割り振っていたトップレベルドメイン(TLD)に対して新たに「gTLD (Generic Top Level Domain)」が割り振られることについて、JPNICで知っているところが説明された。背景として、InterNICが課金を開始したときに独占問題が起こり、新しいTLDを作るためにISOC(インターネット協会)によりドメイン割り当てを検討する委員会としてIAHCが発足したことが語られた。gTLDについては、現在、世界で7社が登録業務を行なうことが決定、日本ではPSI-Japanが決まっている。
IAHCでは商標とドメインの問題にも関与しており、「ドメイン名を割り当てているだけ」とするInterNICに対し、IAHCでは異議申立てのための世界的なルール作りにあたっている。
また、'98年の3月にInterNICで登録を担当しているNSI社がNSFとの協力協定が終了することから、InterNICがgTLDに合流する方向へ動くかもしれないと説明。ただし、その後の質疑応答においては、InterNICはgTLDに参加しないだろうという意見が何人かから出された。ほかに、gTLDに対するJPNICの立場についても質問が出たが、これについては検討中とのことだった。
「ドメイン名と知的財産権」では日本知的財産協会の久保次三氏が話者となり、ドメイン名と商標の問題について語った。元々ブランド名に関する訴訟は多い上に、日本では分野が違えば同じ名前を商標として登録できることや、国際的な問題、ドメイン名のブローカーといったことが問題を難しくしている。その中で、IAHCの紛争解決のためのルール作りの方向性は期待される。
また、ドメイン名と商標の問題については、会場からも「外車の正規インポーターだが、メーカー名のドメインを別のディーラーに先に押さえられた。オンライン販売などが盛んになってくると問題」といった声や、逆に「ドメイン名は好きにとらせるべき。先にとられたほうが悪い」といった声までさまざまな意見が聞かれた。
Contributed Talksとして行なわれた参加者の中の希望者による講演では、「業種別ドメインの提案」として下野隆生氏が発言。ここでは、業種別ドメインとして、「<組織名>.<業種名>.JP」という形式が提案された。これにより、ドメイン名空間拡大や現実世界のルールの反映がなされるという。例として、「asahi.bank.jp」「asahi.beer.jp」「asahi.housou.jp」「asahi.shinbun.jp」のように分けられることが挙げられた。
最後に行なわれた「Free Discussion」では、「ドメイン名実験のための第2レベルドメインを設け、論議だけでなくて実際に実験してはどうか」「第2レベルドメインで分けて、早いもの勝ちで商標側に譲歩してもらうというドメイン名はできないか」「第2レベルドメインなどいらないのではないか」といった意見が参加者より出された。
('97/9/2)
[Reported by masaka@impress.co.jp]