【イベントレポート】


Dynamic HTMLへの傾倒を強めるMicrosoft
Javaよりも対応するプラットフォームが多いと主張

■URL
http://www.microsoft.com/corpinfo/press/1997/Sept97/DNApr.htm (DNAに関するプレスリリース)
http://www.microsoft.com/corpinfo/press/1997/Sept97/COMplspr.htm (COM+に関するプレスリリース)

San Diego Convention Center

 Microsoft社は、米国San Diegoで開かれている開発者向けのカンファレンスProfessional Developers Conference(PDC)において、Windows NT 5.0を含む次世代Windowsのロードマップとそれらを統合するアーキテクチャWindows DNA(Distributed interNet Application)やCOM(Componet Object Model)を拡張したCOM+の概要を発表した。また、開発の遅れから本当に配布されるのか?との声もあったWindows NT 5.0のβ版についても、金曜日には配布することをアナウンスした。

 Windows DNAとは、少々乱暴に言えば、クライアントにInternet Explorer(4.0以降)、サーバーにWindows NT(4.0+Option Packか5.0)、そしてクライアントとサーバーの両方で利用可能なコンポーネントとしてCOM(COM+)を利用するシステム。開発者は、COMモデルで開発しておけば、クライアント側でもサーバー側でも利用できるため、全体としての負担が軽くなり、利用者側はIEが動く環境であれば一部のCOMコンポーネント(ActiveXコンポーネント)を除けば、Windows/UNIX/Macintoshなどのどの環境でも利用できるとしている。


Applications and Platform Group Vice President, Paul Maritz

 注目すべきは、MicrosoftがWebクライアントのテクノロジーとしてActiveXよりもDynamic HTML(DHTML)を提案したこと。ActiveXはターゲットがWindowsの時に有効であるとしている(ただし、同時にCOMモデルがSoftware AGやHewlett-Packard等の手により他のプラットフォームへの移植が近々完了することも発表している)。

 DHTMLとは、HTMLとCSS(スタイルシート)に、スクリプト(JavaScript/JScriptやVBScriptなど)を組み合わせることで、Web上での動的な表現を可能にする技術で、同様の技術をNetscape Communication社も提案している。

 Microsoft社は、デモンストレーションの中でActiveXやJavaを一切使わないシステムで十分な機能が実現できることをアピールしていた。また、先日発表した「Scriptlet」というスクリプト(JScriptやVBScriptなど)をコンポーネント化して再利用可能にする技術を紹介し、スクリプトだけでも十分に複雑な開発が可能であることを強調した。

 同時にJavaについても「言語として」のサポートを続けることを明言しながらも、Javasoftが進めているJFCの方向性に対して、OSの上にさらに中途半端なOSを載せるような行為であり、オーバーヘッドが高い上に、どのプラットフォームでも実行可能とする公約さえ守られていないと主張した。さらに、もっと現実的な方法があるとして、DHTMLと比較し、いかにDHTMLがプラットフォームに依存しないかを示した。


 これらのMicrosoftの主張は、どのプラットフォームでも実行できるとしてきたJavaの公約が守られていないと言う点などうなずけるところもあるのだが、実際にはMicrosoftのDHTMLが利用できる範囲は、Internet Explorer 4.0以降が移植されたプラットフォームだけであり、JavaのVMの移植が進まないのと同じように、より限られたプラットフォームへは移植されないことが予想される。もちろん、MicrosoftはW3CにDHTMLを規格として提案しており、Microsoft以外が実装しても良いわけだが、実際にこれだけ複雑なものを移植するにはかなりの人手と技術力が必要になると予想される。

 また、DHTMLではクライアントでの複雑な処理は、すべてスクリプトを実行することで実現するため、複雑になればなるほどコードの量は多くなり、かなりのオーバーヘッドが発生すると予想される。こうなれば、中間コードに落ちているJavaの方がオーバーヘッドが少なくなると予想されるため、「Javaはオーバーヘッドが大きい」とするMicrosoftの主張も怪しくなる。

 ただし、Webベースのアプリケーションの多くはJavaほど複雑な処理を必要とするものは少なく、ActiveXをオプションにしてDHTMLに傾倒するMicrosoftの戦略は現実的な解決法としては、的を射ているといえる。

('97/9/24)

[Reported by ken@impress.co.jp]


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