【インタビュー】

MicrosoftのJava開発担当者が語るJava戦略(続編)

 昨日は米Microsoft社のCharles Fitzgerald氏(Group Program Manager / Internet Client & Colaboration Division)に、Sun Microsystems社とのJavaライセンスに関するMicrosoftの立場を語ってもらった。昨日はRealAudioで掲載したが、改めて本日は本誌記者とのやりとりを一問一答形式で掲載する。


Charles Fitzgerald, Microsoft ■J/DirectではJavaのセキュリティモデルは活かせないと言われているが

 J/Directは、セキュリティという点ではSandboxよりも強力だ。
 また、機能とセキュリティはトレードオフの関係にある。最初、Javaはセキュリティの方向に針を向けていた。今はデベロッパーたちからの要求があり、むしろ機能の方向に針を向けなければいけないようになってきた。

■契約ではJNI、RMIをサポートする義務はないとMicrosoftは主張しているが、たとえ義務がないとしても、ユーザーのためにそれをサポートする気はないのか?

 JNIはカスタマーに技術的なメリットをもたらすのか、あるいは、法的に実装する義務があるのかという両方の観点から言って、答えは「ノー」だ。また、Microsoftはこうしたネイティブコードを呼び出す仕組みをInternet Explorer 3.0にRNIを組み込むことで実現している。これは'96年8月のことだ。JNIがリリースされたのは'97年2月だし、JNIよりもRNIの方がパフォーマンスは上を行っている。
 RMIについて言えば、パフォーマンス、スケーラビリティ、セキュリティにおいて、それほど優れたテクノロジーではないということが分かってきた。Sun自身もRMIを別のプロトコル「IIOP」で置き換えようとしている。将来性のないテクノロジーをサポートするのは馬鹿げている。Microsoftは必要に応じてWWWからRMIをダウンロードできるようにしているが、すべてのコピーに実装するのは意味のないことだ。また、法的にもそれをサポートする義務はない。
 Sunとの合意文書の中に明確に書かれているように、Microsoftは関連するコンポーネントを修正したり、作りかえたりすることができる。この点は非常に重要だ。18ヵ月前にそうした契約を結んだのに、今になってSunの方がそれを好まない状況になったということだ。だから、今回の訴訟についてMicrosoftは非常に自信をもっているし、こちらからも逆に訴訟を起こしている。

■JNIやRMIなどが問題のある機能なら、それをSunが実装しようとしているのはなぜか? また、なぜSunは訴えたのか?

 JNIとRMIに関してはSunが言っていることはまったく根拠のないことだ。NetscapeもJNIやRMIをサポートしていないのに、SunはNetscapeを訴えようとはしていない。
 Sunはこれまでハイエンドの分野でビジネスをしてきた。しかし、PCがだんだんとハイエンドの分野に近づいていくにしたがって、Sunはディフェンシブかつ暴力的にならざるを得なくなった。そして、唯一Sunが持っているテクノロジーがこのJavaというわけだ。
 Sunにとっての問題点は、MicrosoftのJavaVMの方が高速で、互換性も高いということだ。SunはUNIXのシステムを販売することで収益を得ているわけだが、価格性能比から言えば、PCの方がSunのものを使うより50倍もいい。ベンチマークについても、嘘をついていたということが最近分かってきた。ようするに、マーケットで勝てないから訴訟に出たということだ。

■クロスプラットフォームは夢なのか?

 それは、アプリケーションの種類にもよるだろう。クロスプラットフォームによりメリットを享受できるものもあるし、そうでないものもある。インターネットの世界において、そういう環境を実現してくれるのは(ダイナミック)HTMLとスクリプト言語の組み合わせだ。すべてのコンピュータが同じように動いて、同じようにプログラムを走らせることができると考えるのは非現実的だ。それは技術的にも難しいし、それによって犠牲にされる部分、つまりパフォーマンスや機能などの側面についても考える必要がある。

■MicrosoftはJavaをWindows環境に縛り付けるような戦略をとっていると言われているが

 Microsoftとしては、いろいろな選択肢を用意しようとしているだけだ。様々なWindowsアプリケーションをJava上で走らせることができるようにしたいというだけだ。Javaはフォントのサポートも少ないし、これまで開発されたWindowsアプリケーションのすぐれた機能を流用したいというというカスタマーも多い。

■ユーザーにしてみれば、SunのJavaであろうとMicrosoftのJavaであろうと関係ない。それよりもJavaによって実現されるソリューションに期待しているはずだ。MicrosoftはSunにかわってそのソリューションを実現するのか?

 Microsoftとしては、Javaに対する投資をして、成功するということに興味を持っているが、すべての問題点を解決してくれるとは考えていない。どこでも走るというJavaの描いた夢があるわけだが、目標として掲げた普遍性と、一社だけがJavaをコントロールしてきたという事実が、ここにきて対立してきた。
 SunはISOを通してJavaを標準化しようとしているが、彼らの提案しているものはまったくの嘘偽りだ。マーケットにおいて主流となるか、ISOなどでコンセンサスを得るか、Sunはその両方とも成し得ていない。ISOによって標準化することによって競合他社から自らを守っていこうとしているだけだ。Javaが約束してくれるものは確かに大きいが、技術的にはまだまだ発展段階だ。競合他社の意見を受け入れないことによって、SunはJavaの進化をかえって阻害してしまっている。

■今回の訴訟でJavaのロゴや商標が利用できなくなると困るのでは?

 Microsoftの方がJavaの実装については上をいっている。だから、ロゴや商標については気にしていない。カスタマーは賢いし、実際にそれをみてよりよいものだと判断してくれるはずだ。

■今回の訴訟で和解に達する可能性はあるのか? あるとすればその妥協点は?

 今現在、和解という線は見えていない。
 これまでコンピュータ業界において、カスタマー中心ではなく、Microsoftへの対抗を中心に考えてきた企業がいくつもある。例えば、Novell、Borland、Appleなどが挙げられるが、いずれも衰退してしまった。今、その病をSunがわずらっているというわけだ。
 また、訴訟自体については、今後も長く続いていくものと予想している。ただ、18ヵ月から22ヵ月ぐらいは裁判にかかるだろうから、今回の法廷闘争が実際の製品やカスタマーに影響を与えることはないだろう。

('97/11/11)

[Reported by yuno@impress.co.jp]


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