【イベント】

「音楽配信のビジネスモデルを確立したい」と語る

「Internet Conference'97」で坂本龍一氏の招待講演開催

■URL
http://www.jssst.or.jp/jssst/itech/conf97/conf97-program.html
http://www.kab.com/liberte/ (「kab.com」アンケートページ)

 12月17日、日本ソフトウェア科学会他主催によるコンファレンス「Internet Conference'97」で、坂本龍一氏らを招いた招待講演「Music on the Internet」が開催された。Internet Conference'97は、主にサイト管理者向けに最新技術についてのチュートリアルやコンファレンスなどを実施する「Internet Week'97」(12月16日~19日開催)の一環として実施されているもの。


 坂本龍一氏は、「Music on the Internet」のタイトルで技術面と音楽産業の視点から「インターネットと音楽」について語った。まず、音楽は言語に比べ地域性が低い(グローバルである)ことを挙げ、インターネットでの流通に適しているとの認識を示した。また、同氏のコンサートを初めてインターネットで中継した「D&Lツアー」('95年11月)以降、過去に行なってきた実験を当時の資料映像を交えつつ自ら紹介した。ここで坂本氏は、一番印象に残っているものとして、'97年1月23日に開催された「PLAYING THE ORCHESTRA 1997 "f"」横浜アリーナ公演を上げた。この公演は、MIDIによる演奏データのリアルタイム配信のほか、WWWで受け付けたメッセージをレーザープロジェクタで会場の壁に投影する「MaiLED」や「Fキー」を押すと会場のスクリーンにリアルタイムで「f」の字が表れる「RemoteClaps」といった双方向型の実験が行なわれたコンサートであった(本誌'97年1月7日号参照)。特に、RemoteClapsで映し出される「f」の字が多くなると、会場の観客から「どよめき」が起きるという状況に「中継を見ている人と実際に会場にいる人が相乗的に盛り上がっていく様子は予想もしていなかった」という。

 インターネットを使った音楽配信において避けられない問題として著作権問題があるが、当然講演でも触れられた。坂本氏は、自らのホームページ上で「私的利用のための複製は自由という現行著作権法の規定のデジタル環境での妥当性について」といったアンケートを実施しており、寄せられた回答約800通を分析した結果、大半が「(現行著作権法の規定は)デジタル環境でも妥当である」という回答であったという。坂本氏は、デジタル作品を購入した個人は作り手の承諾なしに複製できないといった形で作り手の著作権が保護されるべきだとしており、そのシステム確立には「アーティスト自身も参加していかなくてはいけない」と語った。また、音楽作品の流通形態も従来とは異なり「仲介なしで配信できるのだからJASRAC(日本音楽著作権協会)の位置づけも変わってくるだろう」としている。
 後半は、通産省の岸博幸氏、株式会社ディジティミニミの竹中直純氏も交え、当初の中継実験からの技術の進化に関する話題や著作権問題に関する議論が展開された。著作権問題について岸氏は「立場上、詳細については言えない」としながらも、「通産省を含む各省庁の様々な思惑をまとめ、調整するにはかなりの時間がかかるだろう」としている。


 講演中、坂本氏は、「(インターネット上の音楽配信で)ビジネスモデルを確立したい」と力強く語った。また、「インターネット上で音楽を作っていくプロセスを見せたい」、「ニューヨークからソプラノ、パリからテナーといったように世界からの演奏を合わせてインターネット上でオペラを開催したい」など構想を語っている。12月22日に開催されるコンサート「MPIXIPM」でも、MIDIデータのストリーム配信実験を実施するなど、今後もますます意欲的な活動が続きそうだ。

('97/12/17)

[Reported by okiyama@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部INTERNET Watch担当internet-watch-info@impress.co.jp