【特集】

ニフティはプロバイダーとしてどこまで使える?


 最近開始されたホームページサービスや、WWWからのアクセスを提供する「ニフティサーブ インターウェイ」、通信ソフト「ニフティマネージャー」のインターネット接続対応など、ニフティは今年に入ってから本格的にインターネットサービスに乗り出してきている。今回の特集では、これまでの経緯や新サービスを紹介し、取材内容や編集部で実際に使ってみた感想などを交えて、インターネット・プロバイダーとしての側面を見せはじめたニフティをレポートする。

インターネットをどこまで使えるか?

 ニフティは昨年まで、インターネットを経由した電子メールの送受信、telnet、NetNews、ftp、archie、ダイヤルアップPPP接続サービスといった、基本的なインターネット関連サービスを提供してきた。一見するとインターネットを利用するにはこれでも十分と思われるが、実際問題として、次の点が不十分だった。

■接続料金が高い
■ダイヤルアップPPP接続サービスの速度が遅い(開始当初は14.4kbps)
■NetNewsで購読できるグループはfjとtnnしかない

 そのため、インターネットを使うことはできても、快適に使うことはできず、インターネットを楽しむためにはどうしても別にプロバイダーと契約しなければならなかった。また、インターネットからニフティを利用する方法はtelnetしかなかった。

 しかし今年、ニフティをプロバイダーとしても十分利用できるように数々のサービスが開始された。具体的には以下のようなサービスが利用可能になっている。

■ISDNや56kbps(K56flex方式)といった高速回線に対応
■接続料金の大幅値下げ
■ユーザーホームページサービス
■メール自動回送サービス
■メール着信拒否サービス

 インターネットからニフティを利用する方法も、telnetの他に、「ニフティサーブインターウェイ」によるWWWからのアクセスや、専用通信ソフト「NIFTY MANAGER」によるインターネットを経由したアクセスができるようになった。

 編集部の結論を先に書いてしまうと、「他のプロバイダーから乗り換えるというほどではないが、従来のニフティユーザーがインターネットを利用するにはおすすめ」というところまできている。
 今後予定されているものとしては、POP3/SMTP対応(来年予定)、ネームフリーアドレス対応(来年3月予定)、インターネット接続とオートパイロットに対応したMacintosh版NIFTY MANAGER(来年2月予定)、ネームフリーアドレスに対応したNIFTY MANAGER 4.6(来年3月予定)などがあり、今後もさらに拡充されるだろう。

新しい料金体系

 ニフティをプロバイダーとして見たとき、前述のとおり、接続料金が高いのは大きなネックになっていた。そこで、12月1日より、一定時間まで固定料金の新料金体系が導入された。
 新料金体系は以下のようになる。


基本料金(管理費含む) 超過料金
標準コース 2,000円/月(15時間まで) 10円/分
特別コース 5,000円/月(50時間まで) 10円/分
従量コース 200円/月 8円/分(※1)、20円/分(※2)
(※1)ROAD2およびインターネット経由の場合
(※2)ROAD3/4/5/7、HyperROAD/HyperROAD64の場合

 標準および特別コースの場合は、どの通信速度の場合でも一定金額で、ホームページを作るために必要な「インターネットオプション」の設定費用もかからない。また、いずれのコースの場合でも入会金といったものはない。
 標準コースの場合、従来の「高速対応料金」と比較(回線は、ROAD3/4/5/7またはHyperROAD/HyperROAD64を利用すると仮定)すると、1日平均10分(5時間/月)利用した場合で約44%、1日平均20分(10時間/月)利用した場合で約75%も安くなった。
 後述のホームページサービスを利用すると仮定した場合、同じ条件(デフォルトでホームページ容量が5MB)のプロバイダーの料金体系は、次のようになる。

★BIGLOBE 入会金:無料
 「ばりばり15コース」:2,000円/月(15時間まで)、超過料金 1円/6秒(10円/分)
 「ばりばり50コース」:5,000円/月(50時間まで)、超過料金 1円/6秒(10円/分)
★InfoWeb 入会金:3,000円(5,000円分の使用権つき)
 「15Hコース」:2,000円/月(15時間まで)、超過料金 10円/分
 「50Hコース」:5,000円/月(50時間まで)、超過料金 10円/分

 これを見ると、ニフティの新料金体系は既存のプロバイダーに匹敵している。実際はCGIやその他の付加サービスが異なるため、正確な比較とはいえないが、価格帯が近接していることは事実であり、プロバイダーとしてニフティを選択する人も出てくると思われる。
 ここまで思い切った価格設定に踏み切った理由として、「新規ユーザーの獲得」と「プロバイダーとしてのニフティも見てほしいため」ということをニフティは挙げている。
 時間課金から月額固定料金(使い放題)へのシフトも検討中ということで、実際に導入された場合、254万人の会員('97年11月末時点)を抱えるニフティの存在は、他のプロバイダーにとって大きな脅威となるに違いない。

●メンバーズホームページサービス

 今回、最も脚光を浴びているサービスが「メンバーズホームページサービス」だ。これはその名の通り、ホームページ用ディスクスペース(5MB)をNIFTY SERVEのユーザーに提供するサービスで、インターネット・プロバイダーにとっては既に常識ともいえるサービスだ。専用のフォーラムも開設されており(コマンド“GO FMHP”)、すでに活発な議論が行なわれている。
 ニフティの場合、ディスクスペースを提供するだけでなく、ホームページ用テンプレートや素材集が、WWW上とメンバーズホームページフォーラムのデータライブラリに用意されているため、これらを利用してホームぺージを簡単に作ることができる。また、従来のフォーラム等と異なり、ホームページの商用利用が可能となっているが、CGIなどは使えないため、あくまでも企業の広告的な利用といったものに限られる。

■利用するには?
 このサービスを利用するためには、料金コースが「従量コース」の場合、「インターネットオプション(コマンド“GO INETOPT”)」の設定が必要となる。インターネットオプションを設定すると、1,000円/月の追加料金がかかる。また、このオプションを設定することによって、インターネットからの電子メールの自動回送サービスも使えるようになる。なお、料金コースが「標準コース」および「特別コース」の場合は、この設定をする必要はない。
 次に、ホームページコンテンツを登録するために必要なFTPアカウントおよびホームページのアドレスを取得する。この作業は、メンバーズホームページ(http://member.nifty.ne.jp/)で行なう。そのため、HyperROAD経由やプロバイダー経由でインターネットに接続できる環境になければならない(HyperROAD経由でのインターネット接続方法については、コマンド“GO INTERNET”を入力、情報を参照のこと)。これについてニフティでは「WWWにアクセスできる人が対象のため」としているが、使い勝手を考えるとパソコン通信上からもできるようにしてほしいところだ。
 また、IDやパスワードなどの個人情報を入力するので、セキュリティ確保のため、SSL対応ブラウザ(Internet Explorer 3.02以上、Netscape Navigator 3.0以上)が必須となる。
 メンバーズホームページにアクセスし、FTPアカウント用のパスワードとホームページのアドレスをフォームに入力、申請する。ホームページのアドレスは半角英数字で20字までの任意の文字列が指定できるので、前もって幾つか候補を考えておくといいだろう。もし、既にそのアドレスが登録されている場合は、登録済みであるという旨の警告が出るので、別の候補を再入力する必要がある。なお、自分のホームページアドレスのURLは「http://member.nifty.ne.jp/*****/」という形になる(*****は指定したアドレス)。

■コンテンツを公開する
 ホームページを公開するには、コンテンツをあらかじめ準備しておき、先程取得したFTPアカウントを使ってニフティのFTPサーバに接続し、「homepage」というディレクトリの下にファイルをアップロードする。これでホームページが完成、公開となる。公開を一時的に中止するということも可能(ファイルはそのまま)なので、メンテナンスの時だけ一時的に公開を中止する、といったこともできる。

■サービス提供の状況
 さて、このサービスは、ホームページアドレスが先着順のためか、12月8日の受け付け開始と同時にアクセスが殺到、サーバーが処理しきれずにやむなく受け付けを一時中断するというハプニングがあったが、現在は安定している。
 CGIサービスは、当初ニフティ側で用意されたアクセスカウンタのみが提供される予定だったが、現在のところまだ提供されていない。これはニフティによると、セキュリティ上の問題が見つかったため提供を中止したという。開始時期は未定だが、カウンタの提供は必ず行なうとのこと。なお、CGIをユーザーに開放する予定は今のところはない。
 その他にアナウンスされていた、ホームページの検索サービスもまだ公開されていないが、年明けには開始を予定しているとのことだ。公開・非公開の設定ができるほか、フリーワードやジャンル、IDなどの条件を入力することにより検索できるようにする予定という。

■ニフティに聞く
 こうしたホームページサービスをなぜ始めたかを、編集部ではニフティに尋ねた。ホームページサービス事体は、大分前から「やらなければいけない」という話が出ていたが、「誹謗中傷・ワイセツ画像・公序良俗に反するコンテンツなどホームページ関連の犯罪が起こった場合の対処などを苦慮して、なかなか導入に踏み切れなかった」ということ。万が一そういった問題が発生した場合は、「しかるべき処置はとるが、ホームページに関しては会員の自己責任を原則とし、監視・検閲といった行為は行わない」ということだ。パソコン通信では、フォーラムの「シスオペ」など、管理されているイメージが強いが、ホームページの場合は一転してプロバイダーの立場を通すということになる。

 なお、取材した時点でのホームページ登録者数は数千人ということで、ニフティでは年内には1万人前後が登録すると予想している。

●ネームフリーアドレス

 3月から開始が予定されている大きなサービスが、「ネームフリーアドレス」サービスだ。従来、ニフティからインターネット経由で出すメールアドレスは、ログイン用のIDを使用した「ABC12345@niftyserve.or.jp」という形式だった。ネームフリーアドレスサービスは、従来の形式のメールアドレスのほかに、自分で申請したメールアドレスも使えるようにするものだ。予定では、「(任意の文字列).(姓か名)@nifty.ne.jp」という形式になるという。例えば筆者の場合、impress.kono@nifty.ne.jpといったメールアドレスが、申請すれば使えるようになる。
 従来のメールアドレスとネームフリーアドレスは、別々の電子メールアドレスだが、実体は1つのため、場合に応じて使い分けることができる。また、ニフティ内でもIDの代わりにフリーアドレスの名前でメールを出せるようにする予定だ。
 受け付けは来年の2月を予定している。

 この形式にする理由をニフティに尋ねたところ、「いいかげんな名前でやるのはよくない」ということを挙げている。また、当初はピリオド以降を名字のみにする予定だったが、名字を知られたくないという人もいるため、姓または名を選択できるようにしたということだ。
 また、登録時にはホームページサービスの申し込み以上に混雑するのではないか?と尋ねたところ、電話の末尾番号で、受け付ける人を限定するのと同様に、受け付ける人のIDを会員年数などの条件で限定することによって、負荷を分散する予定ということだ。

 ところで、ホームページサービスとネームフリーアドレスで、なぜドメインが「nifty.ne.jp」になっているのか疑問に思う方もいるだろう。実はニフティでは、来年4月くらいまでに現行の「niftyserve.or.jp」から「nifty.ne.jp」にドメインをすべて移行する予定になっており、ホームページサービスでは、前倒しで新ドメインを導入した形になる。
 IDを使った電子メールアドレスも、「ABC12345@nifty.ne.jp」となるが、「niftyserve.or.jp」でも大丈夫なようにするということなので、あまり心配する必要はないだろう。

●これからのニフティ

 プロバイダー的なサービスを展開しているのはニフティだけでなく、ASAHIネットやPC-VAN(現在はBIGLOBEとしてmeshと統合)などが大手パソコン通信会社の中で先行している。これらの会社と比べれば、ニフティは出遅れた方であるが、今のところ順調な様子だ。しかし、ASCII-netと日経MIXが今年限りでサービスを終了するなど、パソコン通信とプロバイダーの二足の草鞋を履くことの難しさを裏付ける事も起こっている。この現象を、ニフティはどのように見ているのか。
 「他社がプロバイダーにシフトしていく中で、パソコン通信というフィールドが消えてしまった感じがしている」というのが率直な感想のようだ。この厳しいご時勢の中で、ニフティの武器となるのは「10年間コミュニティを作ってきた実績と過去の資産」であるとし、また、「プロバイダーからニフティへ移行するユーザー」もターゲットにしており、昔からのユーザーと新しいユーザーのどちらも維持したいという考えだ。
 また、プロバイダーがコンテンツに力を入れるなど、パソコン通信とプロバイダーの境が、徐々に不明瞭になっている点については、「ユーザーがニフティのどの面を使うかによって見方が変わる」とし、「プロバイダーとして見る場合は、料金の値下げは有効に見える」としている。
 ホームぺージサービスによって個人の外への発信の場を作り、インターネットへのメール回送もサポートした。POP3/SMTPの導入によって、ログインすることなくメールが読める環境ができてしまうと、ニフティ離れを起こす危険性があるのではないか、との問いには、「リスクはあるが、サービスを増やすことによって会員に魅力のあるサービスを提供したい。どれかに価値を感じてもらえれば…」

 プロバイダーサービスに参入するということは、パソコン通信会社が生き残っていくための大きな賭けであり、国内最大の会員数を誇り、パソコン通信の雄として君臨してきたニフティの今後の動向にぜひ注目したい。

('97/12/22)

[Reported by kono@impress.co.jp / Watchers]


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