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【特集】

楽々ホームバンキング

 このところ話題のパソコンと電話回線を使ったホームバンキング。今月25日にはソフトウェア大手のマイクロソフトが、資産管理ソフト「Money」の日本語版をWindows 98と同時発売。実はこのMoneyには、株やローンなどのような資産管理機能のほか、「ANSER-SPC」を使ったホームバンキング機能が搭載されている。今回の特集では、この余り耳慣れないANSER-SPCを中心に各金融機関のホームバンキングへの対応状況を紹介・比較するとともに、その動向を探ってみたい。

  1. 生い立ち
  2. もう一つのホームバンキングサービス
  3. 開発コストとサービスの自由度
  4. ホームバンキング3種比較
  5. 都市銀行の動向
  6. 運がよければ独自型、今すぐ使いたいならANSER-SPC
  7. ANSER-SPC対応金融機関
  8. ANSER-SPC対応ソフト

●生い立ち

 NTTデータ通信株式会社は'81年、金融機関と顧客との間に生じる定型の連絡業務をコンピュータを使って簡素化する目的で「ANSER(Automatic answer Network System for Electrical Request)」サービスを開始した。当初は銀行向けに「銀行ANSER」としてスタートした(その後、'84年に証券ANSER、'90年に生保ANSERがそれぞれ立ち上がっている)。

 銀行では、法人向けにANSERを使った「ファームバンキング」サービスを提供。現在では国内企業の多くが、給与振込やその他の決済業務にこれを利用している。そして'96年に入り、銀行ANSERをベースとした2つの個人向けサービス、「ANSER-SPC」と「ANSER-WEB」が発表された。いずれもパソコンを用いて、残高照会、入出金明細照会、振込・振替が可能だ。ANSER-SPCは電話回線経由で対応ソフトを用いて、ANSER-WEBはインターネット経由でブラウザーを用いてそれぞれ利用する。

 また、大手都市銀行は、こうしたNTTデータによるシステムに頼るだけでなく、独自にインターネットバンキングのシステムを開発している。例えば、住友銀行は'97年から独自型サービスをスタートしている。

'96. 10 ANSER-WEB、実験開始
'97. 1 ANSER-SPC、実験開始
    住友銀行、独自インターネットバンキング開始(本支店宛、事前登録のみ)
  6 ANSER-SPC、正式サービス開始
'98. 1 住友銀行、24時間サービス体制に
  6 住友銀行、「WEBダイレクト」サービス開始(他行宛、都度指定が可能に)
'99. 3 ANSER-WEB、正式サービス開始予定

●もう一つのホームバンキングサービス

 実は、これらとは別の方法で、従来からパソコンを使ったホームバンキングサービスが提供されていた。このサービスは、任天堂のファミコンやセガのメガドライブを使って利用できることもあり、一時期かなり注目されていた。しかし、このサービスを利用するには、NTTの「DDX-TP(第2種パケット交換サービス)」に加入する必要があるなどしたため、広く普及するには至っていない。

 なお、このDDX-TPは、'86年から提供されており、新規契約料は800円。通信速度に応じて3分20円~30円で利用できる。現在では、テレビ番組でよく見かける「テレゴング」などにも利用されている。


●開発コストとサービスの自由度

 独自にシステムを開発するとなると、当然莫大な開発コストがかかることになる。大手都市銀行はともかく、地方の小さな銀行や信用金庫にとっては大きな負担だ。こうした規模の小さな金融機関にとっては、NTTデータが比較的安価に提供してくれるANSERシステムが魅力的だ。

 しかし、サービスの自由度という点では、出来合いのものよりは独自に開発したものの方が魅力的だ。例えば、ANSER-SPCの場合、現状では24時間サービスが提供できない(10月頃可能になる見込み)。一方、独自型であれば、そうしたサービス内容というのは、開発したシステムが備えた機能の範囲で自由に設定できる。


●ホームバンキング3種比較

 パソコンで使えるホームバンキングの規格は、ANSER-SPC、ANSER-WEB、独自型の3つのタイプに分類することができる。具体的に、どんな違いがあるのだろうか。

■金融機関との契約
 当然、いずれのサービスも各金融機関との契約が必要となるが、大抵の場合、申し込んでから1~2週間程度で利用できるようになる。金融機関によっては即日利用できるようになるところもある。店頭に置いてある申込用紙に記入し、その場で申し込むか、申込用紙を取り寄せ、必要事項を記入して郵送することになる。

■利用回線
 ANSER-SPCは、一般の電話回線から金融機関側が用意したアクセスポイントにダイヤルアップする形。ANSER-WEBはインターネット経由なので、各自プロバイダーとの契約が必要となる。独自型の多くはインターネット経由だが、さくら銀行などダイヤルアップ形式のサービスもある。

■ソフトウェア
 ANSER-SPCの場合、NTTデータが定めたANSER-APIを備えたソフトが必要となる。先頃発売されたマイクロソフトの「Money」などがこれに対応しているほか、金融機関側が専用ソフトを無料で用意してくれる場合もある。ANSER-WEBの場合、SSLに対応したNetscape NavigatorやInternet Explorerのようなブラウザーソフトを利用する。独自型の多くはANSER-WEB同様にブラウザーソフトのみで利用できるが、富士銀行などは専用ソフトを用いている。

■対応している金融機関の数
 ANSER-SPCは、システムが確立されているので、ほとんどの金融機関が正式にサービスを提供している。ANSER-WEBは、現在実験中ということもあり、対応はまちまち。独自型については、住友銀行や三和銀行のように、すでに正式スタートしているところもあるが、ほとんどが実験段階。今年度中には、都市銀行の多くが独自型サービスをスタートする見込みだ。

■24時間サービス
 ANSER-SPCとANSER-WEBのサービス時間帯は、現状では長いところで8:45~21:00(残高照会)。一方、住友銀行などが行なっている独自型サービスの多くは、24時間利用可能をウリにしている。

■利用料金
 いずれのサービスも各社バラ付きがあるが、初期登録料もしくは月額か年額の基本料金が必要な場合が多い。しかし、金融ビックバンによる競争激化がささやかれる中、これらの利用料金を無料にしているところもある。振込手数料は、キャッシュカードでATMを使った場合と横並びだが、若干割安に設定しているところもある。

■他のソフトとの連携
 家計簿ソフトや表計算ソフトなど、他のソフトとの連携という意味では、ANSER-SPCが非常に優れている。詳しくは後述の「ANSER-SPC対応ソフト」のパートを参照してほしい。

  ANSER-SPC ANSER-WEB 独自型
銀行との契約
プロバイダーとの契約 ×
ソフトウェア × ○/×
対応金融機関の数
24時間利用 ×
利用料金
家計簿ソフト等との連携 × ×

●都市銀行の動向(50音順)

あさひ銀行
 ANSER-SPCには8月3日より対応。7月27日から来年3月末日まで、1万名を対象にした独自のインターネットバンキングの無料試用キャンペーンを実施する。

さくら銀行
 ANSER-SPCについては、11月から対応する予定になっていたが、Moneyが発売されたこともあり、開始時期を7月下旬に大幅に前倒しする可能性もある。10月中旬から、専用のアクセスポイントへダイヤルアップし、ブラウザーで利用可能なイントラネット型のサービスを開始する。こちらの方が振込手数料が割安。将来的には、こちらをメインに考えている。

三和銀行
 近日中にANSER-SPCに対応する予定。また、今年2月から独自のサービス「三和インターネットバンキング」を開始しており、300円/月で利用できる。ANSER-WEBについては、独自方式でやっていけるので、特に導入の予定はない。

住友銀行
 ANSER-SPCへの対応は現在検討中。'97年1月から独自型のサービスをスタートしている。現在、24時間利用可能となっており、こちらをメインにやっていく。

第一勧業銀行
 ANSER-SPC対応サービスは、Microsoft Moneyの導入は決定しており、技術的にもできる状態だが、未だ検討段階。

大和銀行
 今のところANSER-SPCのみ。将来的にはインターネットを利用したサービスの提供も考えている。年内に、ANSER-WEBを利用した残高照会サービス、SECE対応の振込サービスを別途立ち上げる予定もある。

東海銀行
 ANSER-SPCには「クリック」サービスで対応している。インターネット経由で利用可能な「インターアンサーサービス」も提供中。今のところ、こちらは照会サービスのみ。

東京三菱銀行
 7月27日からANSER-SPCに対応し、顧客に対しMicrosoft Moneyの東京三菱銀行対応版を提供していく。現在、ICカードを使ったインターネットバンキングサービスを社内で実験中。こちらは本年度中に正式サービスに移行できる見込み。

富士銀行
 ANSER-SPCには「クイックパソコン」サービスで対応済み。現在、独自方式の「富士サイバーバンク」の実験を行なっている。照会はANSER-WEBのシステムを、振込は独自のシステムを利用している。10月には正式にスタートする予定。


●運がよければ独自型、今すぐ使いたいならANSER-SPC

 さて、ここまでそれぞれのサービス内容の特徴をみてきたが、どの規格にも一長一短があり、どのサービスを選択するのか非常に戸惑うところ。

 もし、あたなが口座を持っている金融機関が独自型でのサービスを行なっているのなら、それを利用しない手はない。利用料金も安めに設定されていることが多く、改めてソフトウェアを購入する必要もない。また、24時間利用できるというメリットもある。

 しかし、普段利用している金融機関が必ずしも独自サービスを提供しているとは限らない。そんな時は、ANSER-SPCが非常に有力だ。もちろん全ての金融機関で利用できるというわけではないが、対応している金融機関の数がぐんと増えるので、利用できる確率がかなり高い。確実性やセキュリティ面で、インターネットにはまだ不安を感じるという人はANSER-SPCを利用するといいだろう。もちろん、独自サービスを提供している金融機関に口座を作るという手もある。

 もう一つのANSER-WEBだが、こちらは現在実験中で、来年3月に正式スタートする予定。その際には多くの金融機関で利用できるようになる見込みなので、それまで待つというのもいいだろう。


●ANSER-SPC対応金融機関(ウォッチ編集部調査、'98.7.27現在)

  登録料 基本料 自行宛振込・平日 SPC ネット
【都市銀行】
あさひ 0円 210円/月 9:00~16:00 8月
さくら 0円 0円 8:45~19:00 11月 10月
三和 0円 315円/月 8:45~16:00 近日
住友
第一勧業
大和 1,050円 210円/月 9:00~18:00 年内
東海 0円 1,050円/年 8:45~21:00
東京三菱 1,050円 210円/月 8:45~21:00 年度中
富士 0円 210円/月 9:00~21:00 10月
【地方銀行】
愛知 0円 (*1)210円/月 9:00~15:00
伊予 0円 105円/月 9:00~18:00
岩手 0円 210円/月 8:45~15:00
紀陽 0円 105円/月 8:45~21:00 8月
高知 0円 1,050円/月 9:00~19:00
山陰合同 0円 315円/月 9:00~18:00
親和 0円 1,050円/月 8:45~21:00
中国 0円 315円/月 8:45~15:00 8月
トマト 0円 5,000円/月 9:00~15:00
広島総合 0円 3,000円/月 9:00~15:00
みちのく 0円 1,000円/月
山口 3,150円 1,050円/年 8:45~17:00
横浜 0円 210円/月 8:45~18:00
【信用金庫】
飯田 1,050円 210円/月 8:45~21:00
伊那 0円 1,050円/月 8:45~15:00
磐田 0円 1,050円/月 9:00~15:00
宇都宮 0円 1,050円/月 9:00~15:00
遠州 0円 1,050円/月 8:45~16:00
岡崎 0円 1,050円/年 9:00~16:00
小川 0円 1,050円/月 8:45~19:00
北上 1,050円 210円/月 9:00~15:00
京都 0円 1,050円/月 9:00~18:00
京都中央 0円 1,050円/月 8:45~16:00
京都北都 0円 1,050円/月 8:45~16:00
埼玉縣 0円 0円 (*2)8:45~19:00
塩竈 (*3)3,000円~ 1,050円/月 8:45~21:00 10月
静清 0円 1,050円/月 9:00~16:00
湘南 0円 1,050円/月 9:00~19:00
世田谷 0円 1,575円/月 8:45~21:00
同栄 0円 1,050円/月 8:45~16:00
二本松 0円 1,200円/年 8:45~21:00
八光 0円 630円/月 8:45~18:00
日高 0円 1,050円/月 9:00~19:00
姫路 0円 0円 (*2)8:45~19:00
碧海 0円 1,050円/年 8:45~19:00
三島 0円 525円/月 9:00~16:00
焼津 0円 0円 8:45~21:00
米沢 (*4)0円 (*4)0円 8:00~21:00

*1 12月末まで無料キャンペーンを実施
*2 照会サービスのみ
*3 ソフト代
*4 実験中につき無料


●ANSER-SPC対応ソフト

 個人向けのANSER-SPC対応のソフトとしては、以下の3製品が有名だ。このほか企業向けのソフトもあるが、今回の特集では省略させていただく。いずれのソフトもWindows用。

■Microsoft Money(マイクロソフト株式会社)
http://www.microsoft.com/japan/products/money/
 ローンや株式などの資産管理、ライフプランニングがある。ホームバンキング機能を使ってダウンロードした取引明細データをそのまま流用できる。このほか、インターネット経由で、日経BP社からの金融情報を入手可能。東京三菱銀行対応版では、同行からの金融情報を受信することもできる。今年7月25日に発売されたばかり。
販売:店頭および銀行経由
価格:11,800円

マイホームバンク ■マイホームバンク(株式会社コムアップ)
http://www.comapp.co.jp/bank/
 家計簿機能との連携が可能。特に資産管理やライフプランニングが必要でなければ、これで十分。今年5月15日から発売されている。
販売:店頭および銀行経由
価格:8,000円(店頭)、6,000円(銀行経由)

■バンキング家計簿マム for SPCバンキングマム for SPC(テクニカルソフト)
http://www.softnet.co.jp/ (ANSER-SPC対応版の情報は掲載されていない)
 店頭で購入することはできず、各金融機関向けにカスタマイズされている。家計簿機能付きのバージョンとなしのバージョンがある。今年4月より販売されている。現在、東海銀行、スルガ銀行、中京銀行、岡崎信用金庫が採用している。銀行と契約する際に確認してほしい。
販売:銀行経由のみ
価格:10,000円前後

('98/7/27)

[Reported by yuno@impress.co.jp / koyano-y@impress.co.jp]


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