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【ドメイン】

激論、「ED.JP」は必要か?

■URL
http://www.nic.ad.jp/jpnic/domain-talk/
http://www.nic.ad.jp/mailing_list/index.html

川崎基夫氏  「ED.JP」ドメイン名新設に関して意見交換を行なう「ドメイン・オフライン・ミーティング」が、JPNICの主催により30日、都内で開催された。

 ED.JPは、高等学校以下の教育機関を対象とするドメインとなるべく提案された。「ED」は「EDucation」のことだ。この新ドメインを提案したJPNICの川崎基夫氏は「ED.JPは児童・生徒などの教育を受ける人のためのドメイン名。子供たちが幸せにインターネットに参加できるようにするためのものだ」と語る。予定では7月1日にスケジュールをアナウンスし、10月1日より受付を開始することになっていた(本誌6月17日号参照)。

 しかし、ここにきて同ドメイン名の新設自体が困難な状況になっている。


越桐國雄氏 ●学校とインターネットの現状と今後

 大阪教育大学の越桐國雄氏の調査レポート('98年7月現在)によると、全国42,222校のうちホームページを開設している学校は3,615校で全体の8.6%。ドメイン名を見てみると、OR.JPで運営しているところが38%、NE.JPが20%、地域ドメインが20%という順になるという。

 一方、文部省では、2001年までに全ての中学校、高等学校、特殊教育諸学校を、2003年までに全ての小学校をインターネットに接続するプランを立てている。このプランの中心的役割を担うのは、各自治体の教育センター。ここを拠点とし、ネットワークの管理や教員の教育を行なっていく。


古井雅子氏 ●教育者の立場から――主体性と分かりやすさ

 現職の先生で構成される東海スクールネット研究会の古井雅子氏は、ED.JPの必要性を訴える。

 同氏は「基本は各学校であり、地域でのまとまりを強調するために都道府県名をドメイン名の中に追加し、各学校の自主的な活動を損なってはいけない」と語る。利用者のほとんどが児童・生徒であることから、短くて分かりやすいものにする必要がある。また、教育機関を対象とする別料金を設定してほしい、というのが同氏の意見だ。


山口健太郎氏 ●自治体の立場から――金がかかり過ぎる

 横浜市企画局高度情報化推進室の山口健太郎氏は、ED.JPの必要性を疑問に思っている。

 現在、横浜市では、同市のドメイン(city.yokohama.jp)の傘下に各公立学校を置いている。「行政関係の組織については、市のサブドメインとして収容」し、「メールアドレスについては、市を端的に表現するということで@city.yokohama.jp(教員のみ)を使用」するというのが、同市のポリシーだという。

 しかし、こうした組織という枠組みの問題のほかに、もっと現実的な問題もある。各学校が1校ずつED.JPドメインを取得すると、初期登録にかかる申請手数料だけでも相当な額になる。この予算を直接やりくりする自治体の立場からすると、お金がかかるED.JP方式よりも、自治体のドメインの下にぶら下げる方が現実的、という話になる。


山根健氏 ●ドメイン名の衝突頻度は?

 もし全ての学校にドメイン名を割り当てたら、衝突の頻度はどれくらいになるか。慶應義塾大学の山根健氏らによる試算によれば、学校名と小・中・高といった種別によって割り当てた場合、東小学校、南小学校など、39.7%という割合でドメイン名が衝突することになる。これに対し、都道府県名や市町村名を追加することで、衝突頻度を0.231%にまで引き下げることが可能になるという。

 山根氏は「こうした単純なルールによって高い割合で衝突を回避できる」としている。衝突するドメイン名は予測可能なので、当事者間の協議によりこれを回避することも可能なのではないか、というのが同氏の考察だ。

 この試算により明らかになったのは、衝突を避けるために都道府県名や市町村名を何らかの形でドメイン名の中に含める必要があるということ。結局、自治体の名前が入るのなら、横浜市のようなやり方と大差はない。

 もちろん先着順に割り当てるという方法もあるが、この場合、先に予算がついた学校が有利になるという公平性の問題が生じることになる。


●問題のアンケート

 JPNICでは、昨年12月に教育ドメイン名に関するアンケートを実施している。この結果から、JPNICは「学校対象のドメインを新設して欲しいという要望がある」と判断した。回答者の約7割がドメイン新設を支持したからだ。

 しかし、回答者の数はわずか50名。「この問題に関する議論に積極的に参加しようという人の意見は貴重」というのがJPNICの考えだ。JPNICの川崎氏自身も「本当にこのコミュニティが新ドメインを欲しがっているのか分からない」としている。

 その後、JPNICでは今年3月、ED.JPを新設するか、地域ドメインを活用する形で「ED.<都道府県>.JP」のようにするかといった具体的な内容に関するアンケートを実施している。しかし、こちらも回答者数221名と、コンセンサスと言うには程遠い結果だった。

 結局、ED.JPの議論は、「欲しがっている」ことを前提に当事者抜きに行なわれてきたため、今になって座礁しかけている。JPNICでは再度、広くアンケートを実施して、ED.JPの今後を占う予定だ。

 JPNICが運営するメーリングリスト「DOMAIN-TALK」では、現在も激しい議論が展開されている。インターネットユーザーの1人として、この議論に参加してみてはいかがだろうか。

('98/7/30)

[Reported by yuno@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部INTERNET Watch担当internet-watch-info@impress.co.jp