INTERNET Watch Title ClickClick Here

【イベントレポート】

近未来を肌で感じる「SFCオープンリサーチフォーラム'98」

■URL
http://www.kris.sfc.keio.ac.jp/ORF98/

 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)で20日、21日と開催された「SFCオープンリサーチフォーラム'98」。

村井純氏  事前の情報では、村井純教授の「インターネット自動車」の評判が高く、同氏が直接説明をする時間には異様な人だかりができていた。予定より少し遅れて現われた同氏は、群がるカメラマンのために、車の横に立つだけでなく、運転席に乗り込んでポーズを決めていた。

 衛星や携帯電話、インターネットを組み合わせ、1cm×1.5cmの位置情報の精度を実現するというこのインターネット自動車。実験車はかなり大袈裟な装置が取り付けられているが、A4サイズの厚めのラップトップパソコン程度の端末を搭載するだけで同じことを実現できるところまで来ているという。

 「インターネットを使って世界的なインフラがいかに簡単に作れるかを実証するのが目的」と語る同氏だが、その精度の高さから、最近では日本自動車工業会などからも引き合いがあるという。


 そんなインターネット自動車のほかにも、興味深い展示がいくつかあった。

インターネットFAX  1つ目はインターネットFAX。電子メールからFAXへ出力するというのは、そう難しい話ではない。ゲートウェイサーバーを立てることで比較的簡単に作ることができるだろう。しかし、FAXから電子メールの場合はどうだろう。松下電送システムなどが製品化しているインターネットFAX機を購入するのも1つの手だ。

ヘッダー用紙  しかし、すでにほとんどのオフィスにはFAX機があり、新たにインターネット用のものを買い足す、あるいは買い換えるという需要があるかどうかは、なかなか微妙なところだ。また、その手の機材は家庭に置くには場所をとって仕方がない。なんとかして、今あるFAX機を有効活用できないか。そこで考え出されたのが、OCRを使って手書きのメールアドレスを読む、という手法だ。

 普通のFAX機からインターネットFAX機にFAXを送る。1枚目の紙はマークシート型の専用フォーマットになっており、定められた記述方法で相手のメールアドレスを書き込む。インターネットFAX機はそれを受け取り、OCRゲートウェイに渡す。そこでメールアドレスの判別が行なわれ、FAXの内容はTIFF形式に変換され、メールに添付されて相手に送信される。

 ただし、まだまだ実験段階で問題もある。現状では、正常に送信できたか確認できないのだ。それでも、この問題が解決できれば、プロバイダーのサービスの1つとしてかなり有力だ。


MOBiDYプロジェクト  2つ目は「MOBiDYプロジェクト」と呼ばれるもの。Mobile Digital Telephony with Internet Projectの略で、携帯電話を使ったコミュニケーションについてSFC内で様々な実験を行なっている。

 その1つに「K-mail」というものがある。これは漢字と意味のある英数字の組み合わせだけを拾い、仮名文字を省略するという携帯電話へのメール転送サービスだ。文字量を半分程度におさえ、字数制限の問題を回避しようというもの。漢字は1文字でも多くの情報を含んでいるので、だいたいの内容はつかめる。

 基本的には、ゲートウェイサーバーにそのためのコンポーネントを追加しているだけなので、そのほかにも色々なサービスの可能性がある。実際、フィルタリングや、単語を送信することで意味が分かる辞書サービスなども利用できている。

CCD  アイデアは尽きないが、ネットワーク管理者向けの便利なサービスも考えられている。Pingを飛ばし、サーバーがちゃんと動いているか確認できるというもの。現在ではポケットベルを使って同様のサービスが提供されているが、携帯電話の場合、「落ちた」という情報を受け取るだけでなく、その場で「再起動」というコマンドを送ることができるのだ。

 また、ソニーのノートパソコンVAIO PCG-C1を使った面白いデモもやっていた。同機搭載のCCD「モーション・アイ」に、「サイバーコード」と呼ばれるモザイクのような記号がプリントされた紙をかざす。コードの内容は、電話をかけたり、メッセージを送信したりするというもので、デモでは名刺の裏にそうしたコードをプリントして、携帯電話にメッセージを送るなどしていた。将来的には、こうしたCCDと認識プログラムを携帯電話に搭載し、情報のやり取りを可能にするのだそうだ。


E-paper  3つ目は「E-paper」。武藤研究室と富士ゼロックスによるもので、電源を切っても半永久的に情報が消えないという液晶技術。電源を入れれば書き換えることも可能で、とにかく薄い。

 展示されていたのは、PalmPilotのようなPDAをA4サイズにした感じのプラスチック枠付きの端末。着脱式になっており、ドッキングステーションに差し込むことでデータを更新できるようになっている。デモではディスプレイ端子からパソコンの画面をそのままキャプチャーして利用していた。

 商品化する際には、メモリーが組み込まれ、ページをめくる機能が搭載されることになるものと思われる。また、ページ機能はないが、プラスチック枠を取り払い、ペラペラの液晶部分に簡単なICをくっ付けただけの量産・廉価バージョンの開発も検討されているという。

 キオスクで新聞を買う代わりに、自動販売機にE-paperを繋げて最新の情報にアップデートし、電車の中でそれを読む。そんな時代も、そう遠くないのかもしれない。

('98/11/20)

[Reported by yuno@impress.co.jp]


INTERNET Watchホームページ

ウォッチ編集部INTERNET Watch担当internet-watch-info@impress.co.jp