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【イベントレポート】

インターネットビジネスの現状と展望、「Internet Week 98」3日目レポート

■URL
http://www.nic.ad.jp/iw98/

 国立京都国際会館で開催されている「Internet Week 98」。3日目の17日は、同会場で開催された「IP Meeting'98」、セッション「インターネットのビジネスの現状と展望」の模様などをお伝えしたい。

IP Meeting'98

 「IP Meeting」は、日本インターネット技術計画委員会(JEPG/IP)の主催によるもので、インターネットの運営、管理に携わる関係者を対象とした会議だ。数点のテーマに基づいて発表が行なわれたが、ここでは、主なものを紹介したい。

 JPNICによる「JPNICからの報告」では、「whois」データベースの現状と問題点、今後の方針などについて説明された。whoisは、インターネットの接続に関する各種情報を収集したデータベース。本来ネットワーク管理者を対象としたものだが、インターネット上に広く公開されているため、DMの送付先リストとして利用されるなど問題になっていた。

 JPNICでは、今後、次世代データベース構築のため、「データ構造を含めた、データベースそのものの構造的な問題の整理」「どのデータを誰に対して、どのような方法で開示するかの整理」「誰がどのデータの保持者であるかを特定する方法論の整理と保持者の権利と義務に関する整理」などを検討していくとしている。

 次に文部省初等中等教育局の太田恵雄氏により「学校インターネットの現状と将来」が発表された。ここでは、学校教育に関わるカリキュラムの改訂などについて語られた。それによると、現状で、例えば小学校で「クラブ活動などでコンピュータに触れる」程度だったものが「総合的な学習の時間の中で情報教育を実施」「各教科等でのコンピュータ等の利活用を学習指導要綱に明記」と具体的になっている。また、「2001年までにすべての中学校、高等学校、特殊教育諸学校を、2003年までにすべての小学校をインターネットに接続する」ことが改めて発表された。具体的には、公立学校のインターネット利用にかかる通信費、インターネット利用料(1校あたり年額20万3千円)を地方交付税により措置するとのことだ。

 その他、「IP Meeting」会場では、「JPCERT/CC」による活動内容の紹介、届け出された不正アクセスの件数などが紹介された。


インターネットのビジネスの現状と展望

 午後に行なわれたセッション「インターネットのビジネスの現状と展望」は、オープンシステム推進機構(UBA)、日本インターネット協会(IAJ)の主催によるもの。テクニカル系のセッションがほとんどを占めるInternet Weekの中で珍しくインターネットのビジネス面にフォーカスを当てたセッションだ。

 まず、講師に大橋禅太郎氏を迎えた講演が行なわれた。大橋氏は、大学卒業後、外資系銀行勤務、個人商店、無職、半導体ブローカーなどを経験するという異色の職歴を持っている。講演では、インターネットでビジネスを行なう上での注目点を紹介した。大橋氏によると、インターネット上でのビジネスには、「Attention(注目を引く)」「Negativity Priced Information(お金を払ってでも見てもらう)」と言ったいくつかのポイントがあるという。

 大橋氏は、フィージーとハワイの中間にある人口10,000人の小国「ツバル共和国」に目を付けた。ここのカントリードメインは「.tv」で、注目を引くことができるドメイン名を取得できると考えたからだ。実際にツバル共和国の郵政大臣との交渉により、'98年6月には現地での入札に参加したが、6社が参加した内、カナダの企業が50億円で落札したため残念ながら実際には取得できなかったとのこと。

MileNet画面

 また、大橋氏は自ら興した会社「MileNet」でコミュニケーションツールを開発し公開している。MileNetと呼ばれるツールは、「バナー広告付きインスタントメッセージングソフト」とも言えるものだが、Delta航空などと提携し、利用するとマイルがたまるのが特徴だ。11月にリリースして1週間で約1,000ユーザーを獲得したという。ツール公開後には、ポータルサイトからの問い合わせもあったという。大橋氏は「ポータルサイトは、クライアント常駐型ソフトに注目している。それは、顧客に最大のAttentionを与えることができるからだ」としている。なお、このMileNetは、'99年の第1四半期から第2四半期の間に日本にも登場する予定で、現在、数社の航空会社とマイルの提携について交渉中とのこと。




 次に、「インターネットのビジネスの現状と展望」をテーマにしたパネルディスカッションが行なわれた。前記の大橋氏をモデレーターに、インターネット協会会長高橋徹氏、株式会社電通の三浦文夫氏、ソニーコミュニケーションネットワーク(So-net)株式会社の西村馨氏、株式会社アステックの坂下秀氏らが参加した。

2人
左から、坂下氏、西村氏

 まず最初に登場したアステック坂下氏は、自らのネットワーク歴を披露、現職での仕事内容を紹介した。なお、アステック社は、東京インターネット社の株主であり、今年の米PSINet社による株買収のおかげで莫大な利益を得たという。

 次に登場したSo-netの西村氏は、「インターネットはマーケティングメディア」として「サテライトホームページ」を紹介した。これは、企業が自社のホームページのほかにマーケティング専用のページを開設するというもの。ここでは、ユーザーとのコミュニケーションを図ることができ、次の商品企画にも活かせるとしている。また、女性向けコンテンツの提供などターゲットを絞ることができるとのこと。西村氏によると、最近は女性ユーザーが増えており、目的意識がはっきりしているという点で男性ユーザーとは違う性質が見えるという。

3人
左から、大橋氏、三浦氏、高橋氏

 電通の三浦氏は、「インターネットと放送の融合」をテーマに話を進めた。2010年にテレビがすべてデジタル化されると、マーケティングツールとしてのインターネットはより広がりを見せるだろうと語った。将来的には、従来別々に進められてきた企業の広告活動と販売促進活動が融合し、かなり大きな市場になるだろうとしている。

 最後に登場した高橋氏は、「大規模ISPを3年半やってきました」と話しを始めた。ISP事業について「回線料50%以上の支払いでは儲からない」として、今まで「キャリア様へ無私の愛でご奉仕」「無私から無視へ」「キャリア様を無視する精神へ変化する」として、「誰でもIPキャリアを目指せばいい」とIPキャリア構想について語った。そのためには「電気通信事業法をまず、無視する」のが必要と語り客席をわかせた。また、ドブ板に光ファイバーでもなんでも回線を通して、地域で太い回線を自前で持つようになれば大きく変わるとした。メディアとしてのインターネットという面では、「Point to Pointのコミュニケーションを多重化できるのが特性で、従来のマスメディアといきなり比べてもダメ」とした。高橋氏はまとめで「来年は、けしかけるだけでなく自分で事を起こして行きたい」とした。


Richard Stallman氏 ほかに、会場で密かに注目を集めていたのが「GNU」のブース。ここは、GNUを推進する団体「Free Software Foundation(FSF)」によるもので、GNUのソースコードを収録したCD-ROMやオリジナルデザインのTシャツを販売している。そこでは、FSFの中心人物で、エディタソフト「Emacs」の開発者でもあるRichard Stallman氏が、領収書にサインをしており人だかりができていた。他のスタッフは、「リチャードさんが領収書にサインをしてくれまーす」と客に呼びかけていた。もちろんCD-ROMにもサインをしていた。




 なお、来年の「Internet Week」の開催日時、会場も発表された。「Internet Week 99」は、'99年12月14日から17日の4日間、横浜の「パシフィコ横浜」で開催される。

('98/12/17)

[Reported by okiyama@impress.co.jp]


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