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【業界動向】

インターネット上の音楽使用料に関する暫定合意に意見

「売れなかったらオサラバか」すぎやまこういち氏、反NMRCのコメント発表

■URL
http://www.jasrac.or.jp/jhp/network/multi.htm

 作曲家のすぎやまこういち氏は、11月26日に発表された社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)ネットワーク音楽著作権連絡協議会(NMRC)による、「インターネット上での音楽利用に関する著作物使用料について暫定的な合意」に対し、「満足できない」という内容のコメントを発表した。これは「作家サイド」からの発言として注目を集めそうだ。

 コメントは、「暫定合意に際しての、マルチメディア委員会委員長談話」としてJASRACのホームページ上で公開されている。マルチメディア委員会は、デジタル化に伴う状況の変化に対し、著作権法制の在り方、著作権管理と分配方法などについて、JASRACのとるべき方策を検討するとの目的で、'96年8月に設立されたJASRAC理事会の諮問機関。すぎやま氏が委員長を務めており、他には、作詞家の伊藤アキラ氏、作曲家の小西禮次郎氏などが名を連ねている。

 委員長談話は、JASRAC、NMRCの両関係者に合意形成までの労をねぎらう形で始まる。しかし、次には「率直に申し上げて、暫定合意の内容につきましては、決して満足のゆくものではありません」と続き、「NMRCと交渉を重ねるたびに料率が安くなるのは何故だ」「われわれの作品をディスカウント・ショップに並べるのか」「安過ぎる場合は使用許諾を出さない選択肢を作家に与えよ」「配信事業者は交渉を長引かせる戦術をとってきたのではないか」と暫定合意直前に委員会で出された意見を羅列している。

 一番の問題点とされているのは、JASRAC、NMRCの両者の交渉でも最大の焦点となった「月額基本使用料」の問題だ。「売れたものだけに料金を支払う→売れない作品に対しては料金を払わなくてもよい」とするNMRCの主張に対し、すぎやま氏は「売れなかったのだからしょうがない、で済む問題なのでしょうか」としている。

 両者の意見の食い違いは「利用」の捉え方にある。NMRCの主張では、ユーザーからリクエストがあり、配信(販売)して初めて「利用」されたという考え方。一方、作家側では、サーバーに作品を蓄積すること、つまり、「売り物にした」時点ですでに著作物は利用されていると主張している。すぎやま氏は「作家特有の俗な言い方をお許しいただければ、『さんざん売り物にしておいて、売れなかったらオサラバか。それはないでしょう』となりましょうか」としている。また、「基本使用料がかかると、事業者は売れない曲を登録しなくなるのではないか」という意見については、「楽曲の選別は常に存在し、それは作家の覚悟するところ。(基本使用料がなくなれば)作家の希望する楽曲が常に用意されるという確証はなにもない」としている。

 談話は、最後に「合意内容は決して満足のゆくものではないことを再度申し上げ、今後継続される協議に期待したい」「作家/出版社の気持ちを十二分におくみとりいただきたいと考え、委員長談話としてここにお伝え申し上げます」と結ばれている。

 JASRACでは、この談話内容を今後の協議に「最大限反映させていく」としている。この「作家サイドからの声」は、本来的に作家の代理としての立場を取るJASRACにとって、NMRCとの交渉のみならず一般世論にもアピールするポイントになりそうだ。なお、JASRAC、NMRCの両者は、年明けにも協議を再開する。

('98/12/18)

[Reported by okiyama@impress.co.jp]


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