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【連載】

 アウトバーン通信 ~独国的電網生活 

【編集部から】
 インターネットといえば、かつてはアメリカ独走の感がありましたが、最近ではヨーロッパやアジアなど、世界各国でインターネットが盛んに利用されています。この連載では、ドイツで暮らしているkajoさん・taogaさんのお二人が、現地の最新インターネット生活をレポートします。

第11回 オンラインで音楽CD購入!の、摩訶不思議な顛末 (by kajo)

イラスト・Nobuko Ide

■bol.deからの不可解なメール


 皆さんはこの連載の第7回で、私がオンラインでCDを注文した話を覚えていらっしゃるだろうか。そしてそのコラムの最後に、「注文から10日過ぎてもCDは届かない」という、不吉なコメントを残しておいたことを。

 私が「bol.de」で音楽CD3枚を注文したのが、昨年12月3日のこと。Webサイトにはおよそ3~4日で商品が届くと書かれていた。
 だが、注文してから約1週間後の9日に、BOLから2通のメールが届いた。1通は注文したCD2枚のタイトルと料金、そして送り先の確認のための定型メールで、そこにも約3日で届きますという記述があった。オンラインで注文した時には、3枚いずれも「すぐにお届け」と表示されていたのに、なぜこれだけ時間がかかったのか? そして、注文した3枚のうち、1枚がこの発送確認メールに見あたらない点も疑問だ。しかし、このことについての説明はない。
 もう1通は、注文した品物の状況を知らせるメールだった。注文した3枚のCDタイトルの横には「発送済」「未発送」との記述があるだけ(発送された日付などの情報は一切なし)で、文面には「未発送のCDをどうするのか」の説明は一切なく、ただ「作業中」とだけコメントされていた。

 これは実際、どういうことなのか? 品物がすでに発送されて、1枚はBOLに在庫がない、ということで合っているのだろうか……? 私がニュアンスを読みとれないのかと不安になり、後日、ドイツ人の友人にBOLから届いたメールを確認してもらった。だが、彼女が読んでも、やはり「いつ発送して、いまどういう状況にあるのかが明言されていない」という答えだった。肝心の情報量が少ないので、曖昧なことしか分からない。非常に不親切で事務的なメールであることに間違いはなかった。
 そこで、メールでカスタマーサービスに問い合わせを入れてみた。即座に返答がきたが、それはどうやら向こうのサーバーが自動的に返信する「定型メール」だった。要約すれば「クリスマス期間中につき大変混み合っておりまして、もうしばらくお待ち下さい」という内容。だから私は辛抱強く待っていた。その後にもう1度メールを書いたけれど、判で押したように同じ返事しか戻ってこなかった。

■商品が消えてしまった!?


今回の主役!? BOLのサイト
 そして、何も届かないまま年が明けた。さすがの私も、イヤな予感が的中したのだろうかと、胸が悪くなった。それでも気を取り直して再度、今度はもう少し語調を強めに、詳細な調査を求めるメールを出した。すると、今度は自動返答ではなく、サポート係らしい人間から、少しまともな返事が返ってきた。

 「あなたの注文された音楽CDの「A」と「B」は、12月9日にドイチェ・ポストから発送済みです。2枚分の代金は、クレジットカード会社に請求済みです。品物が未だ届いていないということは、配達の際に何か紛失等のトラブルがあったのではないかと思われますので、こちらでも調査してみます。もう少しお待ちください。それから、もう1枚のCD「C」につきましては、残念ながらBOLからお届けすることはできません。こういったケースはBOLでは多々あるケースではないことをご理解ください」

 これってつまり、私が注文した荷物は発送の途中でなくなって、でも代金は引き落としされるってこと!? そのうえ、もう1枚のCDは見つからないって!? もちろんメールに使われている言葉は丁寧だし、形式的な詫びの言葉が周囲には散りばめられてはいたが、これではあまりに誠意がない対応じゃあないだろうか。
 あんまりだと思い、もう1度BOLに「本当に調査してくれるのか」と、突っ込んだメールを書いたが、全く同じ文面のメールが送り返されてきただけだった(怒)。これはつまり、調べようがないということなのか? なぜなら、BOLからの荷物が、ドイチェ・ポスト(Deutsche Post・日本の郵便局のようなもの)から「普通郵便」で送られたことは明白だからだ。「80マルク以上お買いあげの方は送料無料」は大変結構だが、それは結局、普通郵便で安くあげることを意味していた。まぁ、もちろん80マルク以下で送料が有料だったとしても、普通郵便であることに変わりはないだろうけれど(苦笑)。とにかく、普通郵便が途中で紛失しても、ドイチェ・ポストは調査してくれない。これまでも数回、届くはずの郵便物が消えてしまった経験がある私は、何度かドイチェ・ポストと掛け合っている。しかし、普通郵便ではどうしようもないのだ。

 ドイツでは、普段の生活で、日本のような「宅配業者」の存在をあまり意識することがない。日本などからの国際便がドイツの代行業者を通して配達される時や、大きなモノを買って配達を頼んだ場合に、そういった業者の存在に気付く程度だ。日本での宅配業者の存在感の大きさ(?)、利用頻度の高さから考えると、状況は全く異なっている。普段、ドイツ国内でダンボール1箱以内の荷物を送ろうと思ったら、やっぱりドイチェ・ポストを利用するのが一般的なのだと思う。ドイチェ・ポストではチョコレートの贈答にぴったりの小箱から、日本のダンボールのサイズまでの専用の紙箱も売られているし、配達もドイツ国内なら「翌日、もしくは翌々日」に届くのが普通。だから、BOLがドイチェ・ポストを利用するのも自然なのかもしれないが、サービス向上と銘打って普通郵便で送り、発送した商品の行方がわからないというのでは、むしろサービス改悪といえるんじゃないだろうか。

 というわけで、私は怒るのも疲れてしまい、今回は「どこぞの誰か」にCDを2枚、クリスマスプレゼントしてあげたのだと思って、一旦はすっかり諦めてしまった。そいつはきっと、マリリン・マンソン(発送されたハズのCDの1枚はこれでした)を聴いて楽しくクリスマスを祝ってくれたことだろう(ふんっ)! 結局、近所のCD屋で「2枚目」となるマリリンのアルバムを購入したけれど、BOLより10マルクも安かったぞ(!)

■本当に2枚のCDは発送されたのか?


消費者保護団体「Trusted Shops」の、BOLの登録証。これがあってもねえ……
 しかし、今回記事を書くにあたり、このままではあまりに負け犬の遠吠え状態かもしれないと思い、編集の方にも励まされて、もうちょっと追求を続けることにした。
 BOLのサイトをよくよく眺めていくうちに、トップページの左フレームに、堂々と「BOLは『TRUSTED SHOPS』のメンバーです。お客様の注文に対し、私たちは無料のサービスとして、返金保証を提供いたします」とあるのに気付く。なんだこれ、いったいどんな時に保証してくれるわけ? と思い、クリックしてみた。すると、さまざまなトラブルに対する補償額についての記述が、ずらずらと並んでいるではないか。でも、この「TRUSTED SHOPS」に私から直接文句を言って、保証してもらえるようなものだとは思えない。狐に摘まれたような気持ちになった私は、そこにあった「商品未着の場合の補償について」書かれた項目をコピーしたものを添えて、お馴染みBOLのカスタマー・サービスに、またメールを書いたのだった。以下はその往復書簡の一部である(前置き、決まり文句等は省略した)。

【私】
 「そちらはその後、『A』『B』2枚のCDの追跡調査をしてくださったのでしょうか。こちらには未だ商品は届いておりません。でも、クレジットカード会社への料金の請求は済まれているとのこと。ぜひとも状況を説明してください。そしてこの問題を早く解決してください。それと、以下の情報を見付けました(ここにTRUSTED SHOPSの商品未着時の補償項目を貼り付けた)。これによって、私は自分のお金を取り戻すことが出来るのでしょうか?」

【カスタマー・サービスT嬢からの返答】
 「返金は、1月11日(註:年明けに出した2通目のメールがこの時期だった)に手続きがなされています。もし他にご質問等がございましたら~(以下は定型メールによって省略)。」

【私】
 「1つ確認したいことがあります。その返金というのは、CD3枚分でしょうか、それとも2枚分でしょうか(注:日本のクレジットカード会社からの請求明細はまだ届いていないため、自分では引き落とされる額がまだ分からない)。」

【カスタマー・サービスM氏からの返答】
 「あなたの注文された商品は、2000年12月9日に発送済みです。もし今日まで届いていない場合は、私どものWebサイトであなたのご注文を新たにされてはいかがでしょう。その間、私どもは発送済みの商品について、追跡調査をいたします。それと、私どもはこの件を経理課にも委ねています。既に58.9マルク(注:CD2枚分)は返済されています。どうか、もうしばらくお待ちください」

【私】
 「おっしゃっていることが理解できない点があるので、また質問させていただきます。“そちらのWebサイトで新たにする”作業とは、いったい何のことでしょう? 返金していただくために、まだ私がしなければならないことがあるのでしょうか。それと、私はクレジットカード決済をお願いしていたわけですが、返金は具体的にどうされたのでしょうか」

【カスタマー・サービスD氏からの返答】
 「どうぞ、お望みの品を私どものWebサイトで新たにご注文されてください。どうやら、技術的な問題が発生したのだと思われます」

 私のドイツ語は、決して褒められたものではない。その上に、回答者がコロコロと変わるやりとりで、相手の形式的な文面を正しく理解することは、結構面倒なことだった。同じ担当者に再度問い合わせたくても、あくまでアドレスは「service@bol.de」に統一されているので不可能なのだ。
 しかし、こうして落ち着いて考えてみると、果たして「本当にCD2枚は発送されていたのだろうか」という疑問も出てくる。あっさり返金した(らしい)というのも、かえってうさんくさい(?)。そのうえ最後になって「“技術的な問題”が発生したらしいから、もう1度オンラインで注文してください」ときた。いったい、今回の件は何だったのだろうか。果たして、犯人はドイチェ・ポストではなく、BOLだったのか?? 今のところクレジットカードの請求も来ていないし、「発送済み」の商品のその後も報告されていないので、真相は謎のままなのだが……。

■次にオンラインショッピングをする時は……


結局お店で購入した、マリリン・マンソンのCDがこれ
 今回の件で私が学んだこと。
 今後オンラインでモノを買う時は、「郵便配達人が絶対“局止め”(自分で郵便局に取りに行く)にする、大きなモノ」しか注文しない。CDや本は、配達人によっては郵便受けに入りきらないと平気で外に出したまま置いていってしまうからだ(もちろん配達人自身が泥棒だったらどうしようもないけれど)。BOLやAmazonから送られてくる荷物の梱包がどうなっているのか知らないが、「BOL」などと表に書いてあったなら、それが購入されたものであることは明白で、かえって危険であるとも思う(編集部注:Amazonではロゴマークはパッケージに大きく印刷されている。ドイツのBOLは未確認だが、日本のBOLの場合もロゴマーク入りなので、ドイツ版でもロゴが入っている確立は高い)。または「4時間発送」なら専門業者がちゃんと届けてくれるだろうから、よほど何か大急ぎで入り用な時はこの方法でお願いするとか。
 本当は、本の注文も今度は「Amazon.de」からしてみようかな、と思っていたけれど、本は通常は送料無料、つまり普通郵便で送られる。これでまた途中で消えてしまったらあまりに悲しいので、本の場合もこれまで通り、本屋に出向いて注文することにした。せっかく便利なシステムだと喜んでいたのに、もう余計なストレスはまっぴらだ。

 それから、以前の記事に「レアなCDも注文できる」のも利点と書いたけれど、これは今回の件であっさりと却下! 私が注文したCDの1つは、日本ではメジャーだが、ドイツでは割とマイナーなレーベルから出ている。その某CD、レコード屋に置いてないわけでもないのに、今になって「配達不可能」となり、何の説明もないままに放棄されてしまった。昨年のメールでは「作業中」となっていたのに、いったいどういうことだろう。これも「技術的問題」による仕業だったのだろうか。

 というわけで、今回は結果として、音楽CDや本のオンラインショッピングについては非常にネガティヴな内容となってしまった。周りの友人たちは、オンラインで本を注文し、普通郵便にて無事それを受け取り、「便利な手段」として使っている人も少なくないのだが……。しかし、ドイツの郵便配達事情の悪さは、何も私が住んでいる地域(ちなみに特別荒れている地域ではない)だけに限った問題ではない。郵便配送のトラブル、配達人のモラルの低下などの問題は、時にTVルポルタージュのテーマにもなる問題でもあるのだ。それさえなければ、私ももっとこれから積極的に活用していきたい手段であったのだが……。残念だ。

◎著者自己紹介
  ドイツに住んでもうすぐ4年(ええっ)。未だドイツ語上級レベルへ達する努力を怠ったまま、日々をドイツ流(?)にのんびり過ごしている。最近になってオペラやバレエ鑑賞と、今更ながら「別のドイツらしさ」を再認識している、ドイツ・ロック畑で働いていたフリーライター。でも心はすでに、4月に新作がリリースされるRAMMSTEIN(ラムシュタイン)。炎満載の熱いステージを体験できるのは、まだ先のことだけど…。

(2001/01/26)

[Reported by kajo]

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