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【連載】

 アウトバーン通信 ~独国的電網生活 

【編集部から】
 インターネットといえば、かつてはアメリカ独走の感がありましたが、最近ではヨーロッパやアジアなど、世界各国でインターネットが盛んに利用されています。この連載では、ドイツで暮らしているkajoさん・taogaさんのお二人が、現地の最新インターネット生活をレポートします。

第23回 超私的、ハンブルクおよび近郊の楽しみ方 (by kajo)

イラスト・Nobuko Ide

■近頃、ドイツは人気の観光地らしい


 先日、ドイツ在住邦人向けの週刊新聞「ドイツニュースダイジェスト」の記事で、最近の日本からの観光客の傾向として、ヨーロッパのなかでは物価の安いドイツの人気が高まっているという記述があった。へぇ~、実際、パリやローマやロンドンを差し置いて、ドイツの人気が高まっているなんてことがあるのだろうか?? 確かに“ロンドン”に比べれば、格段にドイツの物価は安いのだけれど。
 ただ、私が住むハンブルクは観光地ではないため、そういう記事を読んでも今ひとつピンと来ない。でも、ドイツに関心が高まっているのなら、それは喜ぶべきこと。この際、観光コースから外されてしまいがちなハンブルクにも、「ひと味違うドイツの旅」にこだわる旅行好きの方に足を運んでもらうべく、少しハンブルクの宣伝を試みてみるとしようかしら。

 ……とうそぶいてみたものの、実は私、観光旅行の達人とは程遠い。ハンブルクのことならお任せ! など、決して言えるほどのものではない。4年住んでいるのに、実は博物館や美術館などにはほとんど足を運んだことがないし、ガイドブックに載っているようなレストランにも、訪れようと積極的になったことはあまりない……。あくまで自分の興味で動くだけなので、その守備範囲はとても偏っている。
 ガイドブックでよく紹介されるハンブルクは、アルスター湖、ハンブルク港(とフィッシュマルクト)、聖ミヒャエル教会、オールド・ハンブルク、市庁舎、ハーゲンベック動物園、歓楽街レーパーバーン、そして美術館、博物館の類といったものだろう。以前にもお伝えした通り、「www.街の名前.de」でドイツの街の情報が得られるが、もちろんハンブルクも例外ではない。「http://www.hamburg.de/」の旅行・観光案内にあたるこのページには、ガイドブック以上の詳細な情報が満載で、定番はもとより、ハンブルク近郊の穴場といった、大まかなガイドブックには載っていないスポットも紹介されている。そこで紹介されていたホテルのオンライン予約サイト「NetHotels Hamburg」「Tourismus-Zentrale Hamburg:Hotels online buchen」もあり、ホテル探しも問題なさそうだ。

■ハンブルクと近郊を船で満喫する


アルスター湖の遊覧船
 個人的には、ハンブルクの「水のある風景」の美しさに心和むものがあると、常日頃感じている。それほど泳ぎは得意ではないし、港があるからせっかく新鮮な魚が食べられる環境にある(ドイツでは貴重だ)にもかかわらず魚嫌いな私なのだが、「水」には何故か心惹かれるものがある。ハンブルクには街の中央にで~んとアルスター湖が鎮座(!?)しているし(この湖畔に住んでいる人々は、ヨーロッパでも有数の大金持ちが多いそう)、北海に流れ込む手前、入り江のように大河になったエルベ河畔には、ハンブルク港もある。街を代表する風景に、これら水のある風景が多いのも頷ける。

 観光として簡単に楽しめるのは、アルスター湖の遊覧船や、ハンブルク港めぐりの観光船だ。所要時間は1~2時間。ドイツ語の解説のみで各国語の解説がないところも、ハンブルクは世界的な観光地ではないのだと認識させられる(苦笑)。たとえ笑いのツボが理解できなくとも、美しくて長閑な風景を見ながら船に揺られるのは、かなり優雅な気分である。
 しかし、湖や港を愛する私としては、実はこれでは物足りない。とくに「港」へのこだわりがある。エルベ河沿いの地域を訪れるたびに、あのエルベ河を北海に向かって運航している船にはどうやって乗ればいいの?と、調べればわかるはずなのだがそれをせず、河への思いだけは募っていたこの4年間(大げさか)。そう、私はものぐさで、そのくらいのささやかな思いでは、なかなか実際に調査するまでに至らなかったのだった。

 その思いをかきたてられるきっかけとなったのは、ハンブルグ中心部から見て河向こうにある特設会場で、ミュージカルを観た時だった。Landungsbruecken駅(Sバーン/Uバーン:市内電車/地下鉄)を降り、河に向かって歩いていくと、これまでまったく気付かなかったのだが、そこには観光船とは異なる定期便の船着き場があった。そして向こう岸にあるミュージカル会場へ客を運ぶための船(無料シャトル便)が、私を待っていたのだ。
 「なぁ~んだ、簡単に乗れるんだ! それに、あの船着き場から、HVV(ハンブルク交通連盟:ハンブルク内の市内電車・地下鉄・バスの運行会社)の料金で乗れる定期便も出てるんだね!」と、非常に受け身ではあったが、ようやくあの船の知識を得るに至った私。今度こそ、エルベ河を北海に向けた、小船旅に出かけなければ!!

定期船の路線図。運航本数も多い
 ハンブルク探索に熱心な友人の助けもあり、HVV内で運航されている船のルートを手に入れた。HADAGのサイトには、市内定期便や港周遊のみならず、特別便、近郊の町までの近距離便、チャーター便、そしてこれらの運航時刻表がきっちり網羅されていた。私がこだわった市内定期便のルートはここ。ちなみに、この地図の右手上部(北部)方面がハンブルク中心部。ハンブルクの高級住宅街Blankeneseの街並みも、エルベ河から眺めたら、また違った印象を得られるに違いない。ハンブルク市内交通の定期を持っているから、これらの船は「乗り放題!」になるのだ(注:ハンブルク市内の決められた範囲内で、電車、バス、そして船も自由に乗れる定期券がある)。船に「定期」で乗れるなんて、なんて素敵なの~!と、某海なし県に生まれ育った私は、思わず得した気分。観光でいらっしゃる方も、Landungsbruecken駅、もしくはBaumwall駅(Uバーン)あたりから「Tageskarte(1日券)」のようなハンブルク市内交通乗り放題のチケットを買えば、それで自由に船に乗ることができるはず。電車だけでなく、船で街を移動するコースをぜひ取り入れてみてはいかがだろう?
 また、同じ船のコースでも、ハンブルクから多少離れた、近郊の地域まで足を延ばしたくなるのが人情というもの。今一番気になっているのは、シュターデ(Stade)、そして北海の入口クックスハーフェン(Cuxhaven)。どちらも電車で行けるが、船なら、Landungsbruecken駅からシュターデまで、elbe-city-jetで片道50分の定期便が運航されている(往復30マルク)。途中の眺めも考えたら、絶対に船の方が新鮮な感動があるはず! そして、その先のクックスハーフェンからは、北海に浮かぶヘルゴーランド(島)まで、さらに船で行くことができる! というわけで、まだこの旅は実行に移していないのだが、暖かくなったら、是非とも訪れようと思っているルートだ。他にも気になる町が出てくるかもしれない。先ほどのハンブルクのサイトから、シュターデやクックスハーフェンも含めた近郊の町の情報へのリンクがここに掲載されているので、こだわりの旅計画のお役に立てていただければ。

■車なしで、ハンブルク内の穴場を探訪する


 ハンブルクに住んでいても、何かのきっかけがない限りは、主だった観光地以外をわざわざ訪れることはあまりない。しかし、これまた友人が見付けてきた「Hamburg erfahren」(ハンブルクを体験する)という本には、バスや電車(車なし)での1日市内ツアーのモデルコースがいろいろと紹介されていて、これが意外と面白い。観光バスを利用した定番は当然として、港ツアー、Uバーン・ツアー、ザンクト・パウリ・ツアー(これは夜の観光コースだ)、湿原ツアー、お城ツアー、他にも地域の名をつけたツアーなど、かなりの数のコースが紹介されている。ちなみに、この本は駅のキオスクや本屋の観光本コーナーに置いてあるメジャーなもので、他の町ヴァージョンも出版されていると思う。ドイツ語で書いてあっても、写真、そして地図でコースは分かるので、それなりに活用できるので、お勧めの1冊だ。こちらもまだ、実行には移していないが、とにかく「もっと暖かくなったら!」実行するつもりだ。
 ちなみに、ハンブルク内の路線検索には、「GeoFoX」がお勧め。目的地(駅名か通りの名前)を入れれば、最適の乗り継ぎ方法を検索してくれる。また住所から場所を割り出す際には、ここが便利だ。

■若きビートルズが演奏したことでも知られるクラブは、今……


チケット情報は「Kartenhaus」から
 さて、やはり最後は、これまた一般のガイドブックには載っていないライヴハウス、クラブ情報を。誰よりも詳しく知っているハンブルク情報といえば、私の場合はこうなってしまう(苦笑)。とはいえ、最近はウェブサイトを開設しているところも多いし、コンサート会場の名前さえ分かれば、各自で情報検索することも可能になってきている。昔(?)は、住所だけではさっぱり場所が分からず、後から思えば街中の便利なところだったにも関わらず、タクシーに頼ってたどり着き、なんと不便なところにあるのだと思っていたものだ(ただし、これはドイツに住む前の話)。実際には、ハンブルク内にあるライヴ会場で、電車やバスで行けない場所はないに等しいのだが(ただし終電は気にしましょう)。

 まず、ハンブルクの主なイベント情報は、ここ「Getgo」が使える。主にロック系のコンサートに行く私としては、チケット予約を含めてもっとも使うのは、ハンブルクにあるチケット業者「Kartenhaus」のサイト。ここではチケットのオンライン予約が可能(ただしドイツ国外はEU内のみ)で、店に取りにいけない場合は郵送で受けとれ、書留や保証付きなどの選択ができる。支払い方法もクレジットカード、口座引き落としから選べる。私はもっぱら、ここでオンライン予約をして、1週間以内に店に取りに行く方法で購入している。情報更新は頻繁なので、人気の高いアーティストのコンサートチケットの事前チェックにも有効だ。他に、大手の「チケットワールド」などもある。
 ロック系のアーティストが主に出演するコンサート会場は、まずは最も小さい300人規模のクラブで「Logo」、1,000~2,000人規模のスタンディングの会場で「Fabrik」、「Grosse Freiheit 36」「Docks」「Markthalle」。4,000人規模のオープンエア会場では「Stadtpark」、4,500~7,000人収容の体育館「Sporthalle」といったところだ。大物スターはさらに大規模なオープンエアの広場で演奏することもあるが、ハンブルクには意外とこの規模の有名アーティストに見合った会場に恵まれておらず、ツアーから外されてしまう場合も少なくない。
 これらの会場は、ハンブルクの情報紙「Hamburger Abendblatt」のこのページに住所等のデータが一覧表になっているので、あとは先ほど紹介した住所検索サイト・路線検索サイトの合わせ技を使えば、あなたも電車やバスでライヴ会場にたどり着くことができるはず。それに、余程の大人気スターで売り切れになっていない限りは、当日券を買うことも可能だし、急に行けなくなった人が入口付近で余ったチケットを原価で売ろうとしている場面に出くわすかもしれない。ちなみにチケット代は、クラブ規模のドイツ国内アーティストなら25マルク~45マルク程度、ホールになると50~70マルクあたりが相場だろうか。ドイツ国外、特にヨーロッパ以外のアーティストになると、チケット代も割高になる。ボン・ジョヴィで90マルク(約5,000円)というのは、ドイツ的な感覚からすれば、かなり高額。

一番お気に入りの「Markthalle」は、中央駅から徒歩10分。外観は今ひとつ以下だけど……
 ちなみに「Docks」と「Grosse Freiheit 36」は、夜の街レーパーバーンの真っ直中にある。最初、ここを夜に訪れた時は内心ビクビクものだったのだが、何のことはない、表のレーパーバーンの顔は「観光地」だから、それほど神経質にならなくても大丈夫なのだ。もちろん、街角には順序良くお仕事のお姉さん方が立ち並んでいたり、うっかりすると変な声をかけられることもないわけではないが、まぁ、裏道に入らない限りは大丈夫。コンサートは、前座がスタートするのが20時頃が多いので、メインのアーティストの演奏が終わるのは深夜になる場合がほとんど。終電の時間には気を付けて。

 なお、ビートルズで有名になったクラブ「Star Club」は、現在はレーパーバーンの一角にその看板を残してはいるものの、同名のホテルに成り変わってしまった。その前にはハードロック・カフェもどきの「Rock Cafe」があったが、私がそこを訪れたのは、もはや6年前の昔、とあるミュージシャンとの取材の後だった。彼等は今だったら、ヘヴィメタル・ファンの巣窟「Headbangers Ballroom」あたりにたむろっているかもしれない。ここでは、アーティストがコンサート会場に「ライヴの後、headbangers ballroomに集まれ!」と告知していることもあったりして、なんとも日本とは違うノリに思わず微笑ましくもある(私は行かないけれどね)。マイナーなアーティストはここでライヴを行なうこともあるし、ヘヴィロック・ファンは、もしかしたらここでミュージシャンに会えるかも! という期待を抱いて訪ねてみるのも一興かな。


 以上、とてもじゃないが、優秀な観光ガイドにはなれそうもない私が、なんとか踏ん張って書いてみた「私的ハンブルク案内」。説明不足な点、レストラン・ガイドやショッピング・ガイドなどがない点はどうかご容赦を。水にこだわりがある方、そしてロック・ファンに喜んでいただければ幸いである。

 最後に、このコーナーを読み続けてくださった皆さま、ドイツで四苦八苦孤軍奮闘する私のつたないレポートに耐えてくださったことに感謝します(^^)。今後はもっとシビアなテーマにも目を向けていきたいと思う今日この頃でありますが、これまで通りのエンターテイメント情報も追っていきますので、またどこかでお目にかかれたら…。

※「アウトバーン通信」のKajoさんの回は、今回で終了です。御愛読ありがとうございました。

◎著者自己紹介
  ドイツに住んでもうすぐ4年(ええっ)。未だドイツ語上級レベルへ達する努力を怠ったまま、日々をドイツ流(?)にのんびり過ごしている。最近になってオペラやバレエ鑑賞と、今さらながら「別のドイツらしさ」を再認識している、ドイツ・ロック畑で働いていたフリーライター。でも心はすでに、4月に新作がリリースされるRAMMSTEIN(ラムシュタイン)。炎満載の熱いステージを体験できるのは、まだ先のことだけど…。

(2001/04/20)

[Reported by kajo]

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