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【連載】

 アウトバーン通信 ~独国的電網生活 

【編集部から】
 インターネットといえば、かつてはアメリカ独走の感がありましたが、最近ではヨーロッパやアジアなど、世界各国でインターネットが盛んに利用されています。この連載では、ドイツで暮らしているkajoさん・taogaさんのお二人が、現地の最新インターネット生活をレポートします。乞うご期待!

第5回 ドイツで映画を観るときに(by kajo)

■ドイツの娯楽は意外と質素?


イラスト・Nobuko Ide
 ドイツは早くも、クリスマスのお祭り的な雰囲気が漂い始めている。通りにこの時期おなじみのライトアップの準備が始まっているからだ。今年の冬は寒くなるのが遅い……ようだが、天気が悪い日が多く、ただでさえ“昼間”の時間が短くなってきているのに、曇りや雨の日は一日中薄暗かったりする。この時期は“気が滅入る”人も多く、そんな気分を明るくしてくれるのが、電飾で明るく華やいだ通りの雰囲気なのだ。

 さて、ドイツに来て以来、日本との違いに驚くことは多々あるわけだが、そのなかのひとつに「映画館で映画を見る」という娯楽が、ここではまだ大いに有効、という事実があった。もちろんレンタルビデオ屋は存在しているるのだが。一般的な娯楽として思いつくものを挙げてみると、例えばドイツのゲーセンは、いまだに「悪い子の集まり」みたいなイメージが定着しているままで、知り合いは誰もそんなところに行こうなんて言ってくれない。ボーリング場は多少はあるらしい。カラオケ屋は、一部の日系の飲み屋であるとかないとか……。もちろん音楽・美術鑑賞などが、日本のそれより広く親しまれていると思われる点は付け加えておかなければ。それと、この寒い時期でも散歩やウィンドー・ショッピングをする人達も少なくない。あとは何? そうそう、シャイな北ドイツ人にとって、ディスコは若者から中年まで、今なお最大かつ有効な「出会い」の場であると聞く。それ以外は飲み屋や友達の家で楽しくワイワイやっていたりするんだろう。

■独国映画観賞事情


お気に入りの映画館、CINEMAXX。シネコンプレックス(複数の映画館が入っている)ため、建物も大きい
 で、今回の話題は映画館。週末はまさに社交&娯楽の場として賑わう映画館の存在を知り、改めて映画館で映画を観ることへの考えを改めた私。しかも気楽に行けるほど、こちらの料金は安いのだ。週末夜の通常料金はたいてい16マルク程度(約800円)、平日夕方5時前料金は、わずか10マルク程度(500円)。後ほど紹介する「CINEMAXX」では、木曜日の夕方5時前ならたったの6マルク(300円)! もちろん、封切られたばかりの映画も対象だ。これには空いている時間帯の映画館を回転させる役割もあるだろうが、経済的弱者にも優しい料金設定なのではないかと、勝手に解釈してとても感謝していたりする(苦笑)。

 ハンブルクで映画情報を入手するには、地方紙「Hamburger Morgenpost」などで決められた曜日に掲載される映画情報を頼りにする人が多いと聞く。1週間分の上映予定に関する必要な情報は、すべて掲載されている。無料で手に入る文化・情報誌からも情報は得られるが、上映時間などが映画館ごとに細かく記されていない場合も多く、別個に調べる必要もあるようだ。
 私の場合は、もっぱらネットから情報入手することが多い。前述の「Hamburger Morgenpost」のサイト、「Hamburger Morgenpost Online」では、1週間分のハンブルク中の映画情報をチェックすることが可能だ。左フレームの「hamburg」→「kino」(映画)をクリックすると、検索ページが現われる。そこで映画館、映画の名前やタイプ、曜日指定などを選択すると、必要な情報を入手できるようになっている。上映時間も正確に記載されているし、映画館ごとの上映作品がかなり異なる場合もあるので、これはなかなか便利な機能。

 ちなみにドイツの映画館では、基本的にほとんどの映画が“ドイツ語吹き替え”になっている。オリジナル言語で上映されるのは、ドイツ語字幕付きを売りにする特定の映画館、もしくは通常の映画館で決まった時間帯のみというのが実状だ。もちろんそういった情報も、しっかり上記のサイトに掲載されている。悲しいかな、テレビで放映される映画も、9割近くがドイツ語吹き替え。これには今も辟易しており、「だからドイツ人は意外と英語が上手じゃないんだよっ!」と、憎まれ口をたたきたくなることもあるのだけれど。

■映画館は全指定席、立ち見なし!


 ところで私が気に入っている映画館は、ドイツ中に存在する(?)「CINEMAXX」。ここは設備も新しくて優雅な雰囲気もあるし(ハンブルクの場合だけ?)、映画本編上映前には、オリジナルの「レーザーショウ」のようなオマケもついてくる(でもこれ、早く本編を観たい時には邪魔なだけなんだけど)。何より私は「CINEMAXX」の「Happy Hour」がお気に入りなのだ。先に書いたとおり、木曜日の夕方5時前だとわずか6マルクで映画が観られる。これなら“ハズレ”の映画でも(&ドイツ語吹き替えでも)文句はないし、追加料金2マルクを払えば、中央の良い位置にある「ボックス席」(Loge)で観ることができる。

CINEMAXXは中もピカピカ
 ドイツの映画館は原則として全指定席なので、事前に席を予約しておく場合が多いのだが、「CINEMAXX」のサイトでは、この座席予約も可能だ。トップページから該当する都市を選択し、「予約」(reservierung)をクリックすれば、週ごとの上映スケジュールが登場する。どの映画がどれくらいのキャパシティーの会場で上映されるのかも、座席表を見ればわかるから、こだわる人にはそれも嬉しい。そして希望の映画・時間帯をクリックし、あとは「ボックス席」か「通常席」(Parkett・前方もしくは後方の席)を選び、枚数と名前を入力すれば「予約番号」がもらえる。それを当日チケット売場で伝えれば、席はちゃんと確保されていて、しかも優先的に良い席になっているような錯覚(?)を覚えつつ、映画を楽しめるのだ。
 封切られて間もない人気映画を週末観たい時にも、早めに予約さえ入れれば席を確保できる便利なシステムだし、電話の場合にありがち(私だけ?)な聞き違いや煩わしさもない。というわけで、ここも私が愛用しているサイトのひとつとなっている。

 最後に余談を。ドイツではこのような状況故に「声優」需要が大きいハズだが、実は人材不足なのだと聞いたことがある。そして、なるほどそれは実感できるのだ。例えば「X-ファイル」のスカリー捜査官の声は、ドイツでは低音ヴォイスが魅力的な女性が担当している(ドイツでは「知的な女性」の声のトーンは低くあるべきだと思われているようだ)。あまりにインパクトが強いその「声」は、残念ながら幾つかのコマーシャル、もしくはスカリー以外の配役を担当することも多く、どれを聞いても「X-ファイル」ファンの私には「スカリー」に聞こえてしまう。もちろん、これは“彼女”だけの場合ではない。どうにかならないでしょうかね。

◎著者自己紹介
  '97年より北ドイツに移住、現地にてドイツ語習得を目指すハズが、未だ中級レベルでやりすごす怠け者のフリーライター。ドイツ・ロックとの付き合いは長いが、近頃はドイツ芸能事情にも詳しくなりつつあり「もっとお堅いテーマもしっかり押さえようね!」と自らにハッパをかける日々が続く……(?)。

(2000/12/01)

[Reported by kajo]

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