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金曜コラム

我々は枯れたシステムも欲している (97/09/12)

 今朝、私はIE 4.0 Preview 2をアンインストールすることとなった。PowerPointをインストールしたら、動かなかったからだ。その後Office 97を完全に削除し、再度インストール。ようやくPowerPointが動くようになった。もちろん、本当の原因がIE 4.0にあるのかも分からないし、そもそもPreview 2なのだから安定性をどうこう言ってはいけないのだが、つい「いい加減に安定しろよ!」と口に出てしまう。

 実際、NetscapeもInternet Explorerも、いつまでたっても「確実に文字コードを自動判別」することはないし、JavaScriptも、リロードするたびに挙動が違ったりと、いまいち安心して「これはWebの(HTML/JavaScriptの)コーディングが悪いのだ」と決めつけることができない。もちろん、こちらは「製品版」あるいは「最終版」といったものでの話だ。


製品とβ版のはざまで

 にも関わらず、最新版のブラウザはどんどん登場する。それも、古いブラウザを利用できないほどの改善点をもってだ。β版は安定性がないことを覚悟して使うべきだと言われるが、実際にはそのβ版でしか見ることのできないページというのも、同時進行的に増えていくわけで、「β版を使わなければいいじゃないか」とは簡単に言えないというのが現実だ。ましてや、Webのデザイナーなど「先端の技術を導入する必要のある」インターネットをビジネスとしている人ほど、そうしたニーズは高い。そして、仕事のためにインストールしたブラウザーは「不安定」なのだ。

 さらに言えば、HTMLの解釈さえ未だに揺れている。Internet ExplorerとNetscape Navigator間の違いはまだ納得できるとして、同じメーカー間でもメジャー番号が違うと全く異なった表示になったりする。弊社では本当に慎重に確認するときは、IE 3.X、IE 4.0、Netscape Navigator 3.X、Netscape Communicatorの4つのブラウザにさらにWindows/Macintoshという8通りの組み合わせできちんと表示されるかチェックしている。この作業はきわめて負担が大きい。


大企業製の方が安定しないWebサーバー

 さらに、サーバーの話になるともっとやっかいだ。ウォッチ関係のWebサーバーは殆どがNT上のIISで動いている。現在は、NT 4.0にIIS 3.0(ASPなどは利用しない)になっているが、だいたい一日に一回以上は止まってしまう。もちろん、弊社の使い方に問題があるかもしれないし、設定に問題があるのかもしれないが、他社に聞いてもそれなりには落ちているみたいだから、まーそんなものなのだろう。

 原因はいろいろ考えられるが、エラーメッセージが「アプリケーションエラー」としか出ないのだから困ってしまう。運用実績からいくと、NT 3.51にIIS 1.0の頃が一番堅牢だったようだ。もちろん、ウォッチのアクセス数もその頃の5倍以上になっているので、全部がNT 4.0&IISの責任ではないだろうが、マイクロソフト関係の人からも、NT 4.0になってから安定性に関して質問を受けることが多いと聞いたことがある。もちろん、弊社のサーバーにはService Pack等のパッチはすべて当ててある(英語版のパッチは除く)。

 さらに、米国ではすでにIIS 4.0のβも配布中。マイクロソフトによると、堅牢性を上げるためにいろいろ仕組みが変わっているというが、仕組みが変わればそれだけ新しい不具合も増えるというのはソフトウェア界の常識である。こちらも使ってみるまでは分からない。

 では、Netscape Serverだと落ちないかというとそうでもない。弊社のグループサーバーは、UltraSparcとNetscape Enterprise Serverだが、これもアキバHotLineの更新時期(日曜の夜から月曜)にかけて、よく落ちていた。こちらの方は、最新版に変えると良くなるという話だが、まだパッチが入手できずにいる。

 結局運用実績ベースからいくと、弊社では窓の杜等で使っている、BSD/OS+Apacheというのが一番安定しているということになっている。世界を代表するインターネットプロダクツを提供している2社の製品がフリーで流通しているソフトより安定していないというのはどういうことだろう(本当は、ソフトの堅牢性は利用者の数すなわちフィードバックの多さに比例するから、当然の結果とも言える)。


先進性と実用性の両面攻撃を望む

 まだまだ、インターネット技術というのは発展途上であるから、新技術を開発するなとは言わない。だが、既にこれらの技術の上で「ビジネス」を行なっている人もいることも忘れないで欲しいと思う。

 100Kmごとにエンストする車とか、3回に1回は混線する電話とか、そういうものを作ったらどうなるか?そう、その会社は即つぶれてしまうだろう。先端技術の導入で、シェア拡大を望むのもいいが、堅牢性が同居しなければ「ビジネス用」には採用できない。いや、現状はやむなく採用しているだけなのだ。

 最先端ではないが堅牢で枯れている技術によるビジネス向けの商品と、先進的で可能性を感じさせる商品の2面攻撃。こういう、地に足のついた展開をする企業はいないものだろうか?

[編集長 山下:ken@impress.co.jp]


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