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【連載】

電子メールマガジンの作り方




第11回:「メールマガジン」に広告をとるには


 この連載も11回を迎えました。発行方法に始まり、内容の作り方、読者の募集方法、方向性の決め方などさまざまな話をしてきましたが、こうしてあなたのメールマガジンがすばらしいものになってくれば、そこにはビジネスチャンスが発生します。

 お金は購読者から徴収する方法も考えられますが、ビジネス的にはハードルが高いと思います。というのは、決済方法の問題やお金を払って購読してくれる人を大量に確保するのが、個人ではなかなか難しいと思われるからです。そこで今回は、広告を取ることでビジネスモデルを作ることを考えてみたいと思います。

●広告を出す人・企業が何を考えているのか?

 メールマガジンの作者のみなさんは、自分のメールマガジンには自信を持っていると思います。特に読者も増え、購読者とのコミュニケーションが高い状態を作れればなおさらです。広告ビジネスに関して、一番重要なことは「広告を出す人・企業があなたのメルマガに出稿することに価値を見出せるか否か」ということです。

 企業でメールマガジンへの出稿を考える人は、大企業であれば、企画ないし宣伝部門の人であり、中小企業では社長本人が考えることもあります。彼らが出稿する上で一番重視していることは「自分の扱っている商品の販売にどれだけつながるのか」ということです。
 ネット広告では販売まで行なってしまうことも可能ですし、とりあえず認知を広げるという観点からの出稿だとしても、どれだけの人数がクリックしてきたかなどの値は取得できます。企業がアクセスしたい層に、どの程度の単価でアクセスできたのかが測定できるところが既存の紙メディアと違うところなのです。
 そして、それを実現するために、例えば「なるべく発行部数の多いメルマガに出そう」とか「女性読者の割合の多いメルマガに出稿しよう」とか「関西の読者の多いメルマガに出したい」とか様々な媒体選定要素が出てくるわけです。

 つまり、単に購読者数が多ければ広告ビジネスが成功するといった単純な図式ではなく、ターゲットとして企業が想定している層へのアクセス単価のより安いものになれるのであれば、そのニーズについては、十分にビジネスが成り立つはずです。

●広告主とあなたの接点をどのようにして持つか?

 ところで、理論上、ビジネスが成立するような媒体を作れたとしても、最大の問題が残ります。それは、出稿主とあなたのメールマガジンをどうやって結びつけるか?です。
 もちろん、最良の方法は、あなた自身がクライアントをみつけて、販売活動を行なうことです。しかし、販売活動は営業・与信管理・掲載基準審査・請求と多岐にわたります。営業一つとってみても、リストアップ・アポイント確定・提案とそれはたいへんな活動です。
 とはいえ、一部のメールマガジンは、この部分をWebを通じたダイレクトマーケティングにより実現しています。必ずしも不可能ではないと思います。

 また、広告代理店の中にも少数ですが、ベンチャー系を中心に、インターネットに詳しい代理店が出現し始めています。こういった広告代理店の中には電子メール広告専門の広告代理店もあります。そして、彼らに営業を任せているメールマガジンは多数存在します。こういった広告代理店を利用した場合に得られる額の規定は大きく二つに分かれます。

1)広告枠を販売してもらい、一定の手数料(30%~50%)を差し引いた額をもらう
2)広告枠はすべて提供し、クリックのあった場合だけ@15~30円をもらう


 購読者が少ない間は、なかなか前者の形での広告販売は難しいと思いますので、選択肢は後者のクリック分だけ広告費をもらうという形態だけになると思います。ただ、どうせ1クリックが15~20円程度なのであれば、購読者が増えるまで待つのも手です。広告付きのメールマガジン発行システムに加入してしまうと、部数が増えてから、広告なしの形態への移行が面倒になるので注意が必要です。

<独立系電子メールマガジンへの出稿を取り扱う広告代理店>

■株式会社メールニュース
http://www.mailnews.com/
'96年設立の、日本初の電子メール広告専門の広告代理店。

■247メディア・ジャパン株式会社
http://www.247japan.com/
独立系代理店e-agencyと、24/7 Media Asia(香港)の合弁企業。

■株式会社サイバーエージェント
http://www.clickincome.net/
連載第2回で「どれが人気!? 電子メールマガジンの発行サービス比較」の一例として紹介した、「クリックインカム」は広告付きのメールマガジン発行システムです。発行者がメールマガジンを発行すると、自動的にテキストで広告が入ります。その広告がクリックされるたびに、1クリックにつき20円が発行者に入ります。

●広告の相場はどんなものなのか?

 現在、比較的広告がよく入っている個人・ベンチャー系のメールマガジンは、だいたいいくら位の広告費でテキスト広告を販売しているのでしょうか。

 読者数140万部にせまる「ウイークリーまぐまぐ」へのテキスト広告(トップ)出稿は 1読者あたり1円の目安で販売されていますが、大体他誌も、1読者1円の値付けのようです。
 中堅以上の企業の発行するメールマガジンや有料メールマガジンは、購読時の申し込みも面倒な分だけ確実に読んでくれる読者も多いと考えられ、そういったものについては、1読者あたり 3~5円程度でも売れているようです。

 また、クリック保証型(規定クリック数に達するまで同料金で露出を続ける)のメール広告の相場はバナー広告のクリック単価(80円前後)よりも高めの、120円前後に設定されています。これは、色彩やアニメーションなどの効果を使えないテキスト広告では、文字をしっかり読んで興味を持った人だけがクリックをするため、バナー広告よりも効果が高くなると推測されるからのようです。

 どれくらいの値付けで販売しているかについては、各メールマガジンがホームページ上に「広告出稿について」というコーナーを設けているところが多くあります。それらのページも見てみるとよいでしょう。

●電子メール広告の第一人者・メールニュース社才式社長に聞く

 では最後に、日本における独立系電子メールマガジンの広告代理店として、メール
マガジンを支えてきている、メールニュース社の才式社長にお話を聞いてみました。

キッテコム:才式さんがメールニュースを始められて2年。メール広告は完全に出稿手段として認知されてきたと思うのですが、最近の手ごたえはいかがですか?


才式:
はい。おかげさまで、とても嬉しい悲鳴を上げています。最近は、メー
ル広告の相談はメールニュースにというような形で弊社にお問い合わせ頂くケースが増えてきています。有り難いですね。単月の売り上げも去年の倍くらいになっています。


キッテコム:インターネットに詳しい人と営業ができる人という二つの属性は、数学のベン図で書くと両方を満たす人が限りなく0に近い属性だと思うのですが、才式さんは数少ない両方を満たす人だと思います。ネット広告の営業力をつけるにはどうしたらいいとお考えですか?

才式:メールニュース社に入社しましょう(笑)。現在スタッフ大募集中! それは半分冗談です。まぁ、ちょっとインターネットの会社の社長の言葉としては変かもしれませんが、ネットの技術だけで勝負は付かないと思っています。人相手にサービスを提供するのに、相手がどんな問題を抱えているか、どんなことをして差し上げたら喜ぶかを知らないで、営業はできないですよね。各論でいえば、きちんとした媒体掲載ガイドをつくること、読者のアンケートをまめにとって紙面に反映させること、読者をどんどん増やすこと、でしょうか。少なくともこのページ( http://www.mailnews.com/ad/mailadguide.pdf :PDFファイルです。また、表示に時間がかかります)くらいのガイドは作りたいですね 。


キッテコム:扱い媒体はどのように選定されているのですか? また、あるメールマガジンの発行者が自分の媒体も扱って欲しいと思った時に、お願いするにはどのようにしたらいいのでしょうか? さらに、その場合に扱っていただける条件みたいなものはありますか?


才式:2つ基準があります。1つは発行部数2万部以上(これは要相談)。2つ
目は発行をきちんとしていること。風邪をひきましたから休みましたでは弊社では扱えません。発行部数を増やす支援もしますから、いろいろと< sachi@mailnews.com >宛ご相談下さい。


キッテコム:最近、クリック保証型のメール広告が増えてきていますが、広告枠を売る形態を進めてこられたメールニュース社として、ああいったものを展開される予定は無いのですか?

才式:2つの側面があります。1つは、もしメールニュース社がもしメール広告のクリック保証をやったら、誰が露出型広告をきちんと媒体特性等を見極めて本当に木目細かく提案するのか? ということと、2つ目は、本来広告業務というのは、クライアントさまの商品・サービスのターゲットにあったものをご提案していくというのが王道であるという考え方をしているということです。メールニュース社としてクリック保証を否定しているわけではありませんし、全くやらないというわけではありません。でもメールニュース社としては今年は、露出保証型で広告販売をやるのを主力としています。


キッテコム:最後にこれからメールマガジンを出そうと思っている方に、将来広告ビジネスを成立させられるためになにかアドバイスなどございましたらお願いいたします。

才式:メールマガジン広告ビジネスに参入するのはとても簡単です。しかし、自社の媒体をクライアントに認知させ毎回毎回出稿いただくという作業はとても大変なことです。具体名は出しませんが、超大手企業の媒体ですら現実では厳しいのです。クリック保証型の広告をヘッダーに入れているのは、露出型で売れていない可能性が大です。逆に個人でやっている「Chance-It!」さんは、大手企業も羨むくらいの広告入稿状況です。面白い世界と言えると思います。2万部以上発行しているメールマガジンさんであれば、いろいろと展開面も含めてご相談にのりますのでぜひご一報下さい。一緒にがんばりましょう!


キッテコム:本日はどうもありがとうございました。

 この連載も次回でついに最終回です。みなさんからの質問(メールマガジンに関することであれば、なんでもOKです!)や、メールマガジンを始めた方の体験談なども御紹介したいと思っていますので、ぜひたくさんのメールをお待ちしております。


[Reported by webmaster@kitte.com]

(99年8月5日)

【お詫びと訂正】
連載第2回「どれが人気!? 電子メールマガジンの発行サービス比較」の中で、「クリックインカム」についての説明に誤りがありました。「ユニークユーザー数は現在、まぐまぐよりも多くなっています」とありましたが、ユニークユーザー数は現在まぐまぐの方が多いことが判明いたしました。訂正してお詫びいたします。



バックナンバー

第1回:あなたも、電子メールマガジンのオーナーになろう!('99/0527)

第2回:どれが人気!? 電子メールマガジンの発行サービス比較('99/0603)

第3回:人気のある「メールマガジン」を作る秘訣('99/0610)

第4回:長く発行を続けるための作業テクニック(その1)('99/0617)

第5回:長く発行を続けるための作業テクニック(その2)('99/0624)

第6回:「メールマガジン」のインターフェイスを考えよう(その1)('99/0701)

第7回:「メールマガジン」のインターフェイスを考えよう(その2)('99/0708)

第8回:「メールマガジン」のプロモーション(その1)('99/0715)

第9回:「メールマガジン」のプロモーション(その2)('99/0722)

第10回:「メールマガジン」のプロモーション(その3)('99/0729)

第12回(最終回):自分のメディアを持つということ('99/0812)


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